なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SLAYER『Repentless』

SLAYER Repentless


スラッシュ・メタルのというだけでなくエクストリーム・メタルの帝王である、
カリフォルニア出身のバンドによる『World Painted Blood』(2009年)以来のアルバムになる11作目。


語るべきネタの多い作品だ。
まずはメンバー。
トム・アラヤ(vo、b)とケリー・キングの(g)不動の二人に加え、
『Divine Intervention』(94年)~『God Hates Us All』(2001年)の時期のメンバーだった
ポール・ボスタフ(ds)が復帰し、
2013年に他界したジェフ・ハンネマンに替わってEXODUSのゲイリー・ホルト(g)も
メンバーのクレジットに列記されている。

タイトなSLAYERサウンドを打ち立てるのに自ら手を貸した86年のサード『Reign In Blood』以来、
プロデューサー/監督者としても契約レーベルの主としても付き合いが続いていた、
奇才リック・ルービンから遂に離れた。
これは注目すべきことで今回クレジットのどこにもリック・ルービンの名前がないのだ。
リリース元は日本以外だとNUCLEAR BLAST Recordsのようで、
大本をたどると日本のハードコア・パンクも昔は扱っていたこのレーベルからSLAYERが出るとは、
感慨深い。
さらにプロデュース/エンジニア/ミキサーが、
メタルを塗り替えたPANTERAの名作群のレコーディングの片腕だったテリー・デイトというのも興味深い。
スラッシュ・メタル以降の色々なタイプのモダンなメタル・サウンドを一貫して追求してきたテリーが、
スラッシュ・メタルの祖の一つであるSLAYERを手がけるというのは“一周”した感もある。


SLAYERは全編飛ばしっぱなしの音楽史に残る名盤『Reign In Blood』の楽曲スタイルで語られがちだし、
あれが初期METALLICA以上にスラッシュ・メタルのお手本/究極として語られるわけだが、
あれはSLAYERの例外で今回も緩急織り交ぜた楽曲で構成されている。
故ジェフ・ハンネマン作の1曲以外はケリー・キングが全曲書いたようで、
EXODUSのメイン・ソングライターの一人だけにゲイリー・ホルトは曲作りに参加してない模様だ。

テリー・デイト特有の弾力感のある音作りでベースとバス・ドラムが目立ち、
歯痛ならぬ“耳痛”になってしまうほど鼓膜を打ち続ける。
というわけでヘヴィな音像なのだが、
ミッチリと音で埋め尽くさずに透き間多めで音の暴風の風通しが良く、
粘っこい重低音で一気に絞殺せずに空気を吸わせながらゆっくりと圧殺するような音空間であり、
冷静な顔のまま鈍器で次々と撲殺していくみたいなサウンドである。

4~5作目『South Of Heaven』~『Seasons In The Abyss』の雰囲気を思い出す
中近東の匂いも漂う旋律のオープニング・ナンバーに続き、
スラッシーな高速チューンを随所でカマすが、
ミディアム~スロー・テンポの恐ろしさをあらためて知るアルバムだ。
SLAYERが影響を与えたデス・メタルからフィードバックされたリフも織り込み、
曲によってはドゥーム・メタルも応用。
どの曲もフック十分のソングライティングにもかかわらずヤバい空気が立ち込め、
頭で作ったヤツとは別次元の肉体的な殺意が無慈悲なまでに放射されている。

アルバム・タイトルの“repentless”は一種の造語と言えるが、
強引に日本語にしたら“後悔無し”ってことになるのだろうか。
不穏な歌心が溢れるヴォーカルが解き放つ歌詞は『Reign In Blood』を思わせる挑発的な内容で、
これまたたのもしい。
題材は米国のことだけに限らず、
あちこちの戦争や内戦をイメージする曲が多い。
むろんSLAYERは“手垢にまみれて腐敗した戦争反対”なんて歌わない。
体制も反体制もヘッタクレもない世界中の現実を見据えて“その次”を非情なまでに歌う。


イエス・キリストにも見える人物が中央に描かれたジャケットが表紙の、
16ページのオリジナル・ブックレットに映るメンバー写真もユニークだ。
まるでどこかの教祖のように浮世離れしたヴィジュアルのトム・アラヤ。
ZZ TOPのビリー・ギボンズに迫る髭になってきたケリー・キング。
長髪と髭で毛だらけながら穏やかなUSスラッシャー顔のゲイリー・ホルト。
とぼけた風貌で気のいい兄ちゃんキャラの優男ポール・ボスタフ。
冷静なという意味も含めて全員がクールだったオリジナルSLAYERとは一味違う、
微妙なコントラストとバランスが現在のSLAYERの面白さである。

何時間も流しっぱなしにしたら中毒になるほどカラダと神経に馴染んでいく威風堂々のアルバムだ。


★スレイヤー『リペントレス』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-16759)CD
日本盤のみ、
昨年のヴァッケンのフェスでのライヴ・テイク「War Ensemble」「Black Magic」
(各々シングルの「Repentless」と「When The Stillness Comes」のサブ・トラック)
を加えた約51分14曲入りで、
染谷和美による丁寧かつ的確な歌詞和訳(本編の曲のみ)も載った16ページの別ブックレットも封入。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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