なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DVD『All Tomorrow’s Parties』

sticker_convert_20100104173751.jpg

BELLE AND SEBASTIANが開催した99年の英国のイベントに端を発し、
以降日によって1アーティストがキュレーターとなり出演者を選ぶオルタナティヴ・ロック系フェス、
“オール・トゥモローズ・パーティーズ”の10周年記念ドキュメンタリーDVD。
これまた色々と示唆に富むじんわりと刺激的な作品である。


オルタナティヴ・ロックとパンク/ハードコア/メタルのアーティストは残念ながらなかなか交わらない。
CRIPPLED BLACK PHOENIXのような例もあるが、
時として排他的で差別も絶えない。
メジャー・メディアでもどちらか片方しか扱わないものが世界的にほとんどだし、
各々のアーティストも双方のファンもお互いの音楽に聴く耳を持たなかったりする。

音楽メディアに携わる人間にはそういう言い訳は許されないが、
これだけ音楽があふれていると状況を把握し切れないというのもアーティストやリスナーにはあるだろう。
もはやオール・トゥモローズ・パーティーズは、
幅広くアンダーグラウンドのロックをチェックしている人ならばお馴染みと思っていたが、
そうでもないようだ。
先日BRUTAL TRUTHにインタヴューしたときリーダーのダン・リルカーは、
フェスの存在自体を知らないと言っていた。
昔からSONIC YOUTHやBOREDOMSなども大好きな人だから意外でもあったが、
逆に言えばオルタナティヴ畑のバンドが有名なメタル・フェスを知らないようなものだから不思議はない。

そんな状況下とはいえオール・トゥモローズ・パーティーズでは、
MOGWAIにISISが誘われて出演したことがあり、
CONVERGESLEEPも呼ばれたりする。
ムラ社会にこもって守りに入ることなく、
シーンを撹乱する攻めの精神性が密かに強く息づくフェスであることを示す一例だ。

DVD『All Tomorrow’s Parties』も、
スタイルとしてのオルタナではなくアティテュードとしてのオルタナティヴの空気感に包まれており、
ずばりグレイト!な内容。
記録的な意味も含めて音楽映像史に残る作品と言い切れる。

ATP_still_Lightning_Bolt.jpg

登場するアーティストは以下のとおり。
すべて本編ではパフォーマンスの断片しか映し出されないが、
LIGHTNING BOLT(↑の画像)、DIRTY THREE、GOSSSIP、PORTISHEAD、LES SAVY FAV、
GRINDERMAN(ヴォーカルはニック・ケイヴ↓の画像)、SHELLAC(スティーヴ・アルビニのバンド)、
Iggy and The STOOGES(実際は『Raw Power』ではない方のSTOOGES)、ダニエル・ジョンストンは、
特典映像で1曲(+α)を完奏する名演も見られる。
またBELLE AND SEBASTIAN、SONIC YOUTH、BATTLES、ANIMAL COLLECTIVE、BOREDOMS、MOGWAI、SLINT、YEAH YEAH YEAHS、MARS VOLTA、AKRON/FAMILYらもライヴの一部が見られ、
トリはパティ・スミス(一番↓の画像)が飾る。
BUZZCOCKSやJOY DIVISIONと共に70年代後半のマンチェスター・シーンでも活動していた、
“詩人/朗読家”のジョン・クーパー・クラークのパフォーマンスが見られたのもビックリそして嬉しい。

そういった面々のライヴを盛り込みアーティストと一般の人の話も挿入しつつ、
ある意味で静かなる筆致の“叙景作品”に仕上がっている。

ATP_still_Nick_Cave.jpg

理路整然とした構成ではないが、
雑然としたまとめ方だからこそフリー・フォームなフェスの空気感がじわじわじわじわ伝わってくる。
ロック・スター・アティテュードやマッチョ・アティテュードやハードコア・アティテュードとは対極の、
この系統のアーティストたち特有のゆるい雰囲気も圧倒されるほど充満。
マスタリングも良いのか鮮烈な音に仕上がっており、
現場の匂いが漂ってくる映像力も素晴らしい。
通常のステージでの演奏では通常のライティングもあるのだが、
都会の喧騒から離れた野外のシーンも多く、
牧歌的と言えるほどの淡いトーンがこのフェスの本質をあぶりだしている。
アーティストの視点とお客さんの視点を絡め、
まったりしつつ引き締めるところはタイトな編集も特筆すべきだ。

英国の田舎町の宿舎付の施設を使用して大企業のスポンサーに頼らぬシステムは、
パンク/ハードコアのDIYの方法論の流れもある。
資本主義的な既成の音楽システムに抗うというコンセプトも隠されているが、
さりげなくそういう政治性も織り込みつつ、
アーティストのトークもほとんどがエスプリの効いた雑談。
あくまでもざっくばらん、
あくまでも楽しくである。

なにしろヴァラエティに富み色とりどりで面白い。
自分でも参加したくなること必至なのだ。

ATP_still_Patti_Smith.jpg

●『オール・トゥモローズ・パーティーズ』(ビート BRCDVD-5)DVD
むろん日本語字幕ありの、本編82分、得点映像52分。
オーディオ・コメンタリー(こちらは日本語の字幕等は無し)と、
DVDを使用してアクセスできるオンライン・ボーナス映像付。
フェスの歴史を綴り写真満載のオールカラー44ページのブックレットは和訳無しだが、
2004年以来毎年このフェスに足を運ぶ坂本麻里子執筆の等身大のライナーも内容にフィットしている。


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/152-a3dd5172

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (294)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん