なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

サイケ奉行『サイケ奉行 参 源泉掛け流し』

サイケ奉行IMG_5682


奇才・津山篤(g、kbd、vo、ソングライティング、?,£,$,\ &Others)、
本作リリース元のオーナーでもある関西サイケ・シーンの“裏番長”須原敬三(b、コーラス& Smiles Davis)
そして砂十島ナニ(ds、per、コーラス、&Satojimaya Daigoro Nanikichi)による、
“時代劇プログレ・サイケ<ハード>ロック・バンド”の2年ぶりのサード。


オープニングからズッコケさせてくれるが、
すぐに本格派の演奏に突入するのも心憎いと思いきや、
ウォーカルが入るとまた一瞬ズッコケ・・・いややはり本格派で、
数ヵ所に入るショート寸劇もなかなかどうして本格派である。
時代劇のサントラ、
いやアルバム全体が“サイケプログレハードロック時代劇”に仕上げられている。

サイケデリック・ロックとプログレッシヴ・ロックとブリティッシュ・ハード・ロックがトグロを巻くサウンドで、
1曲平均11分弱という長尺ナンバーを5トラックぶっ放つ。
ガレージ・サイケデリック・ロックンロールがプログレ・エキスで静かなコズミック・チューンへと変容し、
様式美ヘヴィ・メタル・ファン号泣必至のギター・ソロも炸裂。
そのうえオブスキュアなヘヴィ・ロックにカンタベリー・テイストが溶け合い、
トラッドの叙情性も源泉の如く湧き流れてくる。

ただし「隠密小屋番」「長谷川平蔵」「源泉掛け流し」「水戸黄門」「荒野の名奉行」という曲名が示す、
こってりした時代劇のダシがムンムンに効いている。
和の侘び寂びと情緒が音の染みになっている一方、
どっかで聞いたことのあるフレーズが聞こえてくるのもサイケ魂の継承ってやつで心憎いってもんである。
というか時代劇のテーマ曲って大げさに盛り上げたり景気良かったり哀愁がしつこかったりするから、
実はプログレやサイケの曲とニアミスしている。
たとえば本作の「水戸黄門」という曲は同名テレビ・ドラマの主題歌のカヴァーではないが、
その曲の中に“あのお馴染みのリズム”が組み込まれてもいるのだ。

直訳+αな曲名の英語タイトルも秀逸で、
ちなみに前記の「水戸黄門」は「Water Door, Yellow Gate or Asshole」。
こういった素晴らしき悪ノリセンスは音楽そのものでも躍動しており、
時代劇とマカロニウエスタンが融合した無茶な革新的ナンバーも飛び出すのであった。

内ジャケットに載った歌詞は時代劇仕立てにもなっているが、
よく見ると歌のモチーフ自体は個人的なものだったりもする。
たとえば「隠密小屋番」という曲は
山暮らしの時間が長い生活を何年もの間続けてきた津山の心ない登山者に対する激昂ソングとも想像できる。
アルバム・タイトル曲はジャケットどおりの情景で、
時代劇の露天風呂シーンみたいな“なごみの一幕”も微笑ましい限りだ。

場がライヴ・ハウスだったか飲みの席だったか忘れたが、
津山が山本精一や長谷川忠(もちろん現CORRUPTEDのあの人)との
想い出波止場でのベーシストとしての活動がメインだった90年代前半に話をしていた時のことを思い出す。
「機材トラブルでライヴ中にベースの音が出なくなったらどうします?」という質問に、
「(ベースの音を)口で言うたらええやん口で!」と津山が返答してきてさすがと思った。
今回も歌詞カードに載ってない“言葉”を吐く“怪人ヴォーカリゼイション”も随所で顔を出しているが、
それでいて歌心がさりげなくバッチリという点も特筆したい。

時代劇のというだけでなく漫画『アストロ球団』にも通じる、
大げさな馬鹿馬鹿しさと義理人情爆裂な痛快さと掟破りのダイナミズムが全開。
全部冗談のようで全部本気である。
今回も笑っちゃうほどグレイト!


★サイケ奉行『サイケ奉行 参 源泉掛け流し』(GYUUNE CASSETTE CD95-65)CD
三つ折り紙ジャケット仕様の約53分5曲入り。
今月ALCHEMY RecordsからCDを出す小埜涼子(sax、flute、コーラス)と、
白木さやか(コーラス)も参加。
津山と砂十島が在籍するACID MOTHERS TEMPLEの“首謀者”河端一の一筆付。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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