なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

つしまみれ『人間放棄』

つしまみれ 人間放棄


東京拠点の女性トリオ・バンドであるつしまみれの11枚目のアルバム。
オリジナル・アルバムとしては『つしまみれ』以来の2年5ヶ月ぶりのリリースだ。

16年間メンバー・チェンジ無しでコンスタントに活動している女性バンドは
世界中探してもほとんどいないだろう。
色々とユニークな展開をしてきているバンドで、
先月も原宿・表参道で開催されたVOGUE主催のFASHION'S NIGHT OUT 2015でゲリラ・ライヴを決行
(http://ototoy.jp/news/82263)。
トレンドに流されず、
東京都内の私立大学とかではなく千葉大学のバンドサークル出身というのが妙に納得できるほど、
地道で一歩一歩進んできているバンドである。
いい意味でミーハーだし、
それでいて地に足が着いているのだ。


前作に引き続き録音/ミックス/マスタリングを一手に引き受けた中村宗一郎とのレコーディング。
ゆらゆら帝国のブレイク以降もはや一種のブランドになっている録音技師とはいえ
中村宗一郎が手掛ければなんでもかんでもイイわけではないが、
『人間放棄』は音の粒立ちが光っている。
つしまみれのポップな艶っぽさと艶やかさをしっかりと際立たせた仕上がりになっているのだ。

キワモノに見えて変化球投げまくりの“王道”ゆえにシーンの“アウトロー”になってしまう、
“つしまみれロック”に磨きをかけてジャケットのような妖しい透明感にすら包まれている。
それほどオルタナティヴ・ロックを聴いているわけでもないにもかかわらず、
いやだからこそ天然オルタナティヴ・ロックになっている。
やはりパンクでもなんでもそうだがジャンルを妙にオベンキョーすると“オシャレ”すぎてつまらなくなるのだ。
そのうえ日本語を活かしたメロディ・ラインだから歌謡ポップスのようなヴォーカルでもあるし、
そのうえ雰囲気はドリーミーだからノイジーではないにもかかわらずシューゲイザーの香りも漂う。

つしまみれのオフィシャル・サイトのプロフィールで
“オルタナティブガールズロックスリーピースバンド”という言葉が使われているが、
彼女たち自身は「ジャンルは?」と訊かれると最近は「ニューウェイヴ」と答えているという。
実際『人間放棄』はオルタナティヴ・ロックというよりその“前身”のニューウェイヴの味なのだ。
例によって色んなものが少しずつ入っている“ガールズ”ならではのアルバムで、
例によってありえないブレンドをしているのも“ガールズ”ならでは。
NIRVANAが見えてきたりWIPERS~PIXIESラインのサーフ・テイストが聞こえてきたりもするが、
ぜんぶ偶然だろう。
四つ打ちからハードコア・パンクになだれこんだりレゲエ/スカを“つし塗れ”でやってのけたりもして、
何が起こるかわからないポップなワクワク感も彼女たちならでは。
そんな中でRAINCOATSやNEW ORDER、
さらにTALKING HEADS別動隊のTOM TOM CLUBなどのニューウェイヴの影がちらついて楽しいのだ。

80年代のニューウェイヴ~オルタナティヴ・ロック~歌謡ポップス~アニメソングといった
彼女たちが育った頃の音楽が自然と出ているようなサウンドだから、
まさに正直なアルバムである。
メルヘンちっくなメロディでポップであるにもかかわらず
全体的にヘヴィなベースの音が目立つためか重み十分の効き応えで、
コーラスも含めて歌も明るくなりすぎずダークなままポップに突き抜けていく音に共振している。

若干アイドル声のヴォーカルはこれが基本的に地声で、
わざとらしくないまっすぐな歌い方だからキュートなのに生々しい。
言葉を抱きしめてていねいに歌っているから、
さりげなく歌心がこぼれおちている。
70年代前半の日本のフォークのような牧歌感と2015年のサイバー感覚がブレンドした歌唱が独特で、
おしつけがましくウソ臭いエモーションを凍らせるほどクールだからこそピュアな感情が躍っている。

アルバム・タイトルから察せられる歌詞も屈折しているように見えてまっすぐだ。
これまで以上にシリアス・モードである。
ジャケットからイメージできるリアリスティックなSFラヴロマンス人間ドラマ映画みたいで、
現実を踏まえて人間に向き合っている。
音と同じくウソがない。

キワモノ・ネタ的に接点がありそうなサブカルに取り込まれなかったのは、
彼女たちの根がロックでありパンクだったからに他ならないとあらためて思わせられる佳作だ。
地に足の着いたミーハーが一番怖いと知らしめ、
女性ならでは発想と感覚の歌と演奏とパフォーマンスに嫉妬すら覚える。


★つしまみれ『人間放棄』(Mojar DQC-1503)CD
16ページのブックレット封入。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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