なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『愛と哀しみのボレロ(デジタル・リマスター版)』

メイン


1981年のフランス映画の“問題作”がデジタル・リマスター版でロードショー公開される。
1937年パリ生まれのクロード・ルルーシュ監督の代表作のひとつであり、
問答無用で迫り押し寄せ解き放つ185分のカオティックな大河ドラマだ。
明るいテーマの映画ではないが、
バレエのボレロをはじめとする音楽と踊りの躍動感が並走して持っていかれ、
まさに“これぞ映画!”とヒザを打ちたくなる巨大スケールの作品なのである。

サブ5

情報量が膨大な映画だから簡潔に書くと、
パリとベルリンとニューヨークを中心にモスクワなども舞台にしていくつかの家族を、
1930年代と1945年と1960年代と撮影当時のリアル・タイムの70年代末~80年の時代ごとに区切って描く。
何人かは実在の人物をモデルにしているようだが、
前半はナチスが闊歩した第二次世界大戦に翻弄される家族たちを映し出し、
後半は“その後遺症”と“子孫”があちこちで息をする悲喜こもごもの姿を映し出す。
50年近くの時代の中を生きるいくつかの家族や人々を順繰り別々に綴っていき、
やがて交わり“大河”へとクールに収斂していく流れを見せるだけに、
たくさんの人間模様がクロスワードパズルのようになっている。

サブ2

入れ替わり繰り出される10本の映画を観た気分になるほどの作品だし、
通して観て一回ですべてを理解することは監督自身もできないのではないかと邪推するような映画である。
けどそもそも何においてもすべてを理解することなんてできるのか。
理詰めで無理やり善悪白黒つけようとしたら窒息する。
政治的要素も含めて一つ一つのシーンに色々なことをダブらせているし音声にも仕掛けがあるから、
DVDなどで繰り返し観たり“巻き戻し”て観たりして細かいところを確認しながら楽しむのもありだが、
なんだかわけわかんないけど殺られて興奮するのも映画の醍醐味ではないか。
“あそこがこうでこうなんだろうな”みたいに勝手な解釈で妄想するのも映画の醍醐味ではないか。

サブ3

現実を反映してわかりやすい映画ではない。
けどアート臭い気取った映画でもない。
あれこれ考えるのは後まわしで、
音楽のライヴみたいにダイレクトに心と頭と体で受け止めることが一番大切。
その瞬間に感じることがすべてだ。
時代や場所によって異なる様々な服装や風景も見どころのひとつの映画でもある。

サブ4

ボレロの踊りのシーンは言うまでもないが、
何しろ他の場面もビッグなスクリーンで観るとエキサイト十割増しになることを保証する。
指揮者や歌手やダンサーなどのパフォーマーが主要登場人物に含まれていることも相まって、
音楽とダンスのエナジーで先へ先へと進める映画だからである。
いわゆるミュージカル仕立てではなく、
ステージでの演奏シーンなどが自然な形でストーリーの中に組み込まれ、
バレエやクラシックだけでなくジャズや民謡などのリズムとメロディがこの映画の命なのだ。

すべてを御破算にするかの如く長時間続くエンディングのボレロはオープニングとつながっている。
それが人間、
まるで輪廻だ。

サブ1

★映画『愛と哀しみのボレロ デジタル・リマスター版』
1981年/フランス/185分/デジタル・リマスター版/原題:Les Uns et les Autres
提供:マーメイドフィルム、配給:コピアポア・フィルム、宣伝:VALERIA
10月17日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAにて4週間限定公開、以降順次全国ロードショー。
LES UNS ET LES AUTRES © 1981 Les Films 13 - TF1 Films Productions. All Rights Reserved.
公式サイト:http://mermaidfilms.co.jp/bolero/


スポンサーサイト

コメント

ご無沙汰してます。

この記事、今頃気が付きました。

不覚にも、『ボレロ』まだ見てなかったです。踊りとしては、ジョルジュ・ドンやシルヴィ・ギエムを含め、色んな人のをビデオで見てましたが、、。

ベジャールは日本の文化も含め、東洋思想に造詣が深かった方のようですから、ボレロに輪廻のイメージはあったのでしょうね。音楽的にも延々リフレインな訳ですし。

確かに音楽や踊りが良い映画は大きな画面で見ると迫力が違いますよね。私は以前『ピナ』を映画館で見た時は、ダンサー達が目の前に迫ってくる様で、本当に痺れました。まあ、あれは3Dということもありましたけど。

『ボレロ』残念ながら映画館では見逃してしまいましたが、テレビででもリマスター版、是非見てみようと思います。

Re: タイトルなし

yuccalinaさん、書き込みありがとうございます。
こういう踊り関係はまったく疎いのですが、踊りが節目で引き締めるとはいえ大河映画として楽しめます。そういう東洋思想的な観点も興味深いです。ダイナミズムは映画館での鑑賞にはかなわないと思いますが、わかりやすいストーリーの映画ではないので、DVDで観て色々確認するのもいいと思います。
『~ボレロ』でナチスに翻弄される役で目立っていた俳優のダニエル・オルブリフスキー(↑の2つめの画像の一番前の男性)、先月ポーランド映画祭で観た『約束の土地』では不滅の悪党を演じていて見応えありました。そちらの映画もDVDになっているようですからオススメです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1547-f142ba82

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん