なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Lou Reed『New York In LA』

Lou Reed『New York In LA』


89年4月22日にLAで行なったルー・リード(vo、g)のライヴを約73分15曲収めたCD。
権利関係はクリアーしている“灰色リリース”と思われる。
音質は痩せ気味でダイナミズム十分!とは言いがたい小ぢんまりとまとまったサウンドだが、
いわゆるオーディエンス・レコーディングにも思える音空間ながら、
FMラジオ・オンエア用の音源だからルーを含む4人全員の音がちゃんと聞こえてくる。


最初から最後まで飄々と悠々と進む“安定期”のパフォーマンスで、
この3ヶ月ほど前にリリースした『New York』の全14曲のうち10曲を中盤まで立て続けに披露。
不特定多数の観客相手のフェスは別として基本的にグレイト・ヒッツなセットリストは組まず、
リリースしたばかりアルバムの曲をガンガン続けるスタイルでライヴをやってきたルーの常道である。
MCも実際は入れていたかもしれないが、聞こえてこない構成だ。

ギタリストとベーシストは『New York』のレコーティングと同じだが、
ドラマーは『New York』のフレッド・メイハーではなく、
90年の来日時のドラマーのモーリン・タッカー(元VELVET UNDERGROUND)でもなく、
Robert Medici。
そういうミュージシャンたちをバックに、
お馬鹿なルーでも皆殺しのルーでも重厚なルーでもないルー・リードが手堅いパフォーマンスを展開する。

『New York』はルーのソロの中でも人気作でリリース当時は僕も聴きまくってのめりこんだが
(普段一度の来日で一回しか観ないのに90年の来日時はジョン・ケイルとのデュオも含めて3回観た)、
ルーの中で駄作とされる数作も含めて今では最も聴かないルー関連のアルバムになっている。
音も曲も歌詞もあのわかりやすさはルーのアルバムの中で異色だし、
“正義”に(一瞬)目覚めたような意識が全体の表現をおかしくした気がする。
それまで政治的/社会的テーマをほとんど歌ってなかった人が突然扱い出したら不自然だし、
ロクなことがない。
イメージを狭めて結局はアーティストの根源的なパワーがコントロールされてしまうから、
音楽だけでなく映画でも文章でもそういう問題には注意深く向き合って消化する必要がある。

僕にとってのルーのライヴのピークである『Ecstasy』ツアーのような殺意紙一重の恍惚感からは程遠い。
でもルー・リード史上最もシンプル明快ロック・サウンド作『New York』のツアーだけに、
その収録曲以外もそういう音を推し進めた極々シンプルなロック・アレンジになっていて、
それはそれで痛快なのもまた事実である。

『New York』の曲をブッ続けた後はほとんどルーの“趣味のコーナー”、
実はここからがこのCDの聴きどころ。
ルーの“好事家”向けとも言い切れず何をしでかすかわからないルーならではの面白さなのだ。
フランク・シナトラのヴァーションが知られている1940年代の曲「One For My Baby」や、
本作の中で唯一のVELVET UNDERGROUND時代の曲「Rock And Roll」(ルーのギター・ソロが艶めかしい)
をやりつつ、
『New York』の前にリリースしたビミョーな2作から曲を持ってきている。
いつでもどこでも丸く収めないルー・リードらしい。
84年の『New Sensations』からは、
さりげなく以降も時々やっている埋もれた名曲「Doing The Things That We Want To」と、
ルー屈指のイケイケ軟派ポップ・チューンの「I Love You Susanne」(ルーのイケイケギターもサイコー!)。
そしてラストは86年の『Mistrial』収録の「Video Violence」。
“もっと他にやる曲あんだろ!?”と観客から罵声が飛んでもおかしくない締めにも思えるが、
このアツアツのファンキー・ナンバーが『New York』の質感の重厚サウンドでイケるのであった。

こういう“ドキュメンタリー音源”に向き合うと、
ルー・リードにますますますますます興味が募ってしまう。


★Lou Reed『New York In LA』(GOOD SHIP FUNKE GSF010)CD


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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