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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

LA MISMA『Kanizadi』

LA MISMA「KANIZADI」


ニューヨーク・シティ拠点のガールズ・ハードコア・パンク・ロック・バンドが7”EPに続いてリリースした、
息を呑むほど素晴らしいファースト・アルバム。

初期DCハードコアをはじめとする“thrash punk”とは違う速すぎないハードコア・パンク・サウンドが
ゆっくりとうなりを上げている。
CRASSのイヴとDIRTのディノとVICE SQUADのベキがニューヨーク・シティで交わったかのような調子で
次々に言葉を投げつけてくるヴォーカルが象徴するように、
アナーコ・パンクの感情表現が詰まった初期UKハードコア・パンク・スタイルとも言うべきサウンドだ。
そのうえ初期のSLITSやRAINCOATSのパンク・ロック要素も噴き出しており、
英国のレーベルからリリースされたのも納得である。
LPのB面のオープニングでは“飛び道具”の音をカマし、
ダークだがさりげなくポップ・センスと切ないメロディが滲み出ているところも心憎い。

音の粒のひとつひとつから湧き上がる無数の激情と熱気にめまいを覚える。
このプリミティヴな息吹はどうだ!?
聴いていると胸が熱くなり胸がいっぱいになる。
アナログ盤でも音が死にかかっている仕上がりのレコードも最近多いが、
レコードというフォーマットならではの命が震えている音は姿勢が正されるほど“真剣”の輝きで響く。

粗く削られた音の渦の中から高い声域で放たれるヴォーカルが歌うはポルトガル語で、
歌詞カードの英訳を見るとサウンドと共振していい意味で大人だ。
幼稚で子供っぽいパンクみたいな甘えがない。

ここのところリアルDIYパンク系でもレコードの価格が高騰して高額なLPだと特に“失敗”が痛いが、
パッケージ全体で値段以上の“買って良かった・・・”という気持ちになることを保証する。
こういう目の覚める表現に出会うためにパンク・ロックを聴き続けているようなものだから。

まさにウルトラ・グレイト。


★LA MISMA『Kanizadi』(LA VIDA ES UN MUS MUS105)LP
歌詞と英訳が載った手作りらしき28ページブックレットと版画風のポスター封入の9曲入り。
マニアックな現行パンク/ハードコアものを扱う専門店なら国内でもまだ購入可能だと思う。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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