なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『キャノン フィルムズ爆走風雲録』

キャノンフィルムズ爆走風雲録ポスター


70年代の末に誕生したキャノン・フィルムズという会社を基地にアグレッシヴな映画活動を繰り広げた、
現イスラエル出身の従兄弟チームの栄枯盛衰ドキュメンタリー映画。

・・・と書いても映画マニア以外にはピンとこないかもしれないし僕もそんな調子で試写会に臨んだが、
知らず知らずのうちに彼ら関連の製作作品や監督映画を観ている人も多いと思う。
ジミー・ペイジ(LED ZEPPELIN)が音楽担当の『ロサンゼルス(Death Wish Ⅱ)』(81年)を含む、
チャールズ・ブロンソン主演の“ならず者かたき討ち映画”『Death Wish』シリーズも
キャノン・フィルムズの製作映画。
頭の中がアレのことでいっぱいな思春期映画の快作群である、
『グローイング・アップ』シリーズもキャノン・フィルムズ物だ。

キャノン メイン

従兄弟二人の談話(“都合”によりほとんどは別々に収録)と関連映画の場面映像や貴重な画等で振り返る構成で、
シルヴェスター・スタローンやチャールズ・ブロンソンなどの俳優の姿も見られる。
1929年生まれのメナヘム・ゴーランは実際に映画作りに携わっていたプロデューサー/映画監督で
(監督としては85年の『デルタ・フォース』代表作とされる)、
その従弟で1941年生まれのヨーラム・グローバスの方は資金を仕切る財務担当。
絶妙のタッグ・チームで米国映画シーンに攻め入り、
その総本山のハリウッドの“陥落”を試みる。

頭デッカチの批評家の評価なんて知ったこっちゃない。
あくまでも“お客様が神様”である二人は宣伝も含めてアイディアを駆使して投資し、
この映画の原題の一部であるフレーズの“The Go-Go Boys”そのものの調子で進み続ける。
でも二人の歯車の噛み合わせがしだいに悪くなっていく。
ヒット作が連発しないにもかかわらず台所事情を無視して狂ったように映画を撮り続けるメナヘムに対し、
資金繰りに四苦八苦する従弟のヨーラム。
映画的に恵まれていた小さい頃からの生い立ちを考えると
現実を見据えて進むビジネスマンより現実感覚希薄の“アーティスト”になるのも納得できるメナヘムは、
まもなく苦渋の決断を下す。

キャノン_サブ2

二人の出身地が現イスラエルということで抜き差しならないパレスチナ問題などが頭をよぎるが、
意識的に排除したかのように政治的な話題にほとんど触れられてないのが謎だ。
70年代末のハリウッド進出に際しての米国のユダヤ・ロビーとの関係も気になったが、
家族の話はあれど従兄弟自身のディープな部分への言及が少ないから何とも言えない。
ちなみに試写会の際にいただいた紙資料によれば、
従兄メナヘムの方は1929年にポーランド系の両親の元に現イスラエルのティベリアで生まれ、
イスラエル空軍のパイロットとなり(イスラエルが建国された)1948年に愛国的理由で姓をゴーランに変えたという。

終始自信たっぷりの怪気炎で押すメナヘムは不遜の塊にも映る。
この映画のための収録と思しきインタヴューの中で問いかけられた失敗作に関する質問に対し、
メナヘムが怒るシーンがある。
自分たちに関する映画にネガティヴな話を入れたくないとのことだが、
そこに僕は気弱な一面を見た、
それだけにメナヘムの他界に近い時期の収録と思しきエンディングの数分間のシーンも心憎い。

映画自体のテンポがいいから予備知識がなくてもいつのまにか引き込まれ、
映画業界云々に留まらずショウビズをはじめとするビジネス関係を含めて色々と示唆に富む作品だ。

キャノン_サブ1

★映画『キャノンフィルムズ爆走風雲録』
原題:The Go-Go Boys: The Inside Story of Cannon Films ‒ Golan/Globus
監督:ヒラ・メダリア(「Web Junkie」、「To Die in Jerusalem」)
2014年/イスラエル/89分/カラー/デジタル
11/14(土)よりシネ・ヌーヴォにて、11/21(土)よりシネマート新宿、名古屋ピカデリーにて公開。ほか全国順次公開。
なお<メナハム・ゴーラン映画祭>も11/14(土)からシネマート新宿、シネ・ヌーヴォ大阪でも開催される。
http://cannonfilms2015.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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