なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CRASS『Semi-Detached Video Collages 1978-84』

semidetached_boxcase_wDVD.jpg


アートワークをはじめとしてCRASSのヴィジュアル表現担当メンバーだった
ジー・ヴァウチャーによる映像コラージュと、
CRASSの曲がミックスされた計107分のDVD。
6000字程度のライナーを書かせてもらいました。


例によってここではライナーの内容とあまりダブらないように要所を押さえて紹介する。


2001年にVHSのビデオ・テープ、2014年のDVD-Rでリリースされた映像作品の初DVD化である。
曲のテーマに合わせてライヴでステージ後方に映し出していた映像をまとめた作品らしく、
ほとんどはいわゆるニュース/アーカイヴ映像のモノクロで、
当時のサッチャー英国首相などのリアル・タイムのものを含みつつ第二次世界大戦中の映像が中心と思われる。
もともとの映像も鮮明ではなかったろうが半ば意識的に粗い画質で仕上げられ、
それがCRASSのサウンドと共振して生々しく迫ってくる。


収録曲は以下の7曲(曲名はすべて日本盤のパッケージ裏の表記に準じる)。
「Reality Whitewash」
「Shaved Women」
「Mother Earth」
「Smother Love」
「Bomb(-working title)」
「Yes Sir, I will」
「Yes Sir, I will」(2009年のリマスター版)

このうち「Smother Love」は実際収録されている曲は「Mother Love」だが、
以前のリリースの誤表記をジーの意向で今回もあえてそのまま残し、
「Smother Love」とクレジットされている。
あと「Yes Sir, I will」(2009年のリマスター版)は
ブックレットにも“2009年のリマスター”と書かれていてそれも確かだろうが、
CRASSのリーダーのペニー・リンボーによるプロデュースで「Yes Sir, I Will」を2002年にリミックスしたものだ。
“Crassical Collection”のリイシュー・シリーズCD『Yes Sir, I Will』に追加され、
「Why Don’t You Fuck Off ?」という曲名が付けられている。
サックスやアップライト・ベース、バス・クラリネットが加えられた音同様に映像の方も、
「Yes Sir, I will」を多少リミックスしたような仕上がりになっている。


完成品を手にして観てあらためて色々と思った。
CRASSの男声担当のスティーヴ・イグノラント(vo)自身もウンザリしたほどのたうちまわる、
実質的なCRASSの“swan song”である45分を越える“明日なき暴走”曲「Yes Sir, I will」も、
この並びでこの映像とともに体感すると、
吐き気がする現実が末期CRASSの苦悩と共にするりと自分の中に入ってくる。

今回の日本盤のポイントの一つは歌詞とその和訳が56ページの小冊子に読みやすく載っていることだ。
CRASSの曲の極一部ながら本作の選曲はCRASSの多様性を示すテーマのバランスになっており、
“こんなことを歌っていたのか!”とCRASSの肝を感じ取ることができる。
CRASSの歌詞は言葉数がべらぼーに多く、
特にLPではA/B面をフルに使っていた「Yes Sir, I will」(と「Why Don’t You Fuck Off ?」)は膨大で、
英語が堪能な人でもかなり時間を割かないと読み通せないだろうからたいへんありがたい。
「Yes Sir, I will」はCRASSのパブリック・イメージが一番表われた歌詞だと思うが、
言い残したことがないように“最期”にCRASS・・・というか実際はリーダーのペニーが書きなぐった
実は異色の歌詞でもある。

歌詞の字幕は出せない仕様だが
(一般的な歌ものポピュラー・ミュージックの何倍もの速度と文字量で歌詞が放たれるから現実問題難しい)、
映像と歌詞和訳を交互に見ながら楽しむのもカオティックで楽しい。
とあるモチーフに沿って書かれた曲がCRASSには多いが、
一曲の中に無数のメッセージや思いを込めているだけにたくさんの映像のコラージュがハマっているのだ。


今回のパッケージはいわゆるDVDトールケースではなく、
DVDディスクより一まわり大きい紙ケース仕様。
CDの紙ジャケットの大きめのものと同じぐらいのサイズなのだが、
紙ケースの手触りもいい。
DVDの中身も厚手のブックレットも含めて重みたっぷりの作品である。


★CRASS『Semi-Detached Video Collages 1978-84』(キュリオスコープ CSVS0198)DVD
DVD盤はシンプルなデザインの紙ジャケットに入っており、
厚さ5ミリほどに及ぶ冊子と呼びたい56ページのブックレットと共に
渋い味わいの紙ケースに封入されたパッケージだ。
ちなみに現物は↑のジャケット画像と多少違っていて左上に“DVD VIDEO”のマークは入ってない。


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コメント

ミーハーなファンは観ない方がいいですか?

歌詞和訳の小冊子は魅力的です。しかし日本語字幕は無しでタイトルを辞書引きしても?でしたので購入を躊躇してしまいますね。01年のVHSが駄目だったひとは観ない方がいいですか?

Re: ミーハーなファンは観ない方がいいですか?

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
基本的にDVD字体はVHS作品の映像/音声をヴァージョン・アップした感じだと思います。
本文にも書きましたが、CRASSの歌詞を音声と同時に日本語字幕で出すのはかなり難儀で、逐語訳にしたら映像そっちのけで字幕をひたすら追う感じになりそうです。曲の一部を抜き出して使うぐらいなら映画/DVD『クラス:ゼア・イズ・ノー・オーソリティ・バット・ユアセルフ』のように意訳にする方法もありでしょうが、一曲フルで使っているこのDVDだと、歌詞のある一般的な他のアーティストと違って意訳でも字幕を追うのが大変なのがCRASSかなと。特に「Yes Sir, I will」は、ヴォーカルが入らない部分以外は映像にまったく目がいかなくなる45分間になりそうです。
まずはリアル・タイムで音声と映像を同時に感じて、その観ている最中でも後でも冊子をめくって歌詞/対訳を眺める感じ方もありかなと。余分三兄弟+さん自身の楽しみ方でいいと思いますよ。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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