なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

JOJO広重『Little Something』

JOJO広重


ジャパニーズ・ノイズの先駆バンドである非常階段のリーダーによる初の完全ギター・ソロ・アルバム。
今年7月にレコーディングした独演でエレクトリック・ギター一本勝負である。


非常階段の82年のファースト・アルバム『蔵六の奇病』と関係があるのか1曲目が「Zouroku no Kibyo」で
ラスト・ナンバーが「Mishima Park」と言った具合に、
8つのトラックのすべてに曲名が付けられて確かに区切られてはいるが、
曲間はほとんどなく一続きだ。
作曲した曲を演奏しているのかもしれないが、
インプロヴィションに聞こえる。
はっきり言えることは、
全体の展開がしっかり構成されていて透徹した一つの流れになっていることだ。
レッド・ブル・スタジオでのリュウ・カワシマによる録音で、
エレクトリック・ノイズの角や粒や硬度や動きが見えてくるほどの鮮烈な音の仕上がりも特筆したい。

欧米のインダストリアル・ノイズを殲滅する熾烈な巨大音で迫る非常階段でお馴染みの轟音に限らず、
強靭なノイズの針金を死ぬまで耳にねじ込み続ける感覚の音である。
NAPALM DEATHCARCASSを世に送り出したレーベルの名の如き真に“earache(耳痛)”な響きで、
耳だけではなく心臓をも突き刺して“胸”を丸ごとえぐりだす。
まさに“真剣”のエレクトリック・ギターであり、
何十年も俗の世で磨き抜いた唯一無二の名刀の一音一音でケリを付けていく。

“怒りで音楽をやってない”みたいなことを昔から言ってきた広重だが、
確かに怒りの類いとは別次元の響きである。
と同時に“一人リンチ”みたいなギター・パフォーマンスでもあり、
憤りもひっくるめて何もかも刺し通して突き抜けた後の殺伐とした桃源郷が見えてくる音像だ。
ヴォーカルは入ってない。
だがこれは、
本作のリリース元で自ら主宰するALCHEMY Recordsのサイトで広重が書いているコラムのタイトルの、
“こころの歌・最後の歌”そのものだ。
ルー・リードの『Metal Machine Music』を思い出す叙情の連なりも断続的に漏れてくる。

アイドルやボーカロイドを含む非常階段でのここ最近のコラボレーションはもちろんのこと、
“他のメンバーの音を聞いてない”としても
非常階段でも他の人が出す音や声との関係を少なからず意識してギターを弾いていると思われるし、
エレクトリック・ギター弾き語りの時も自分のヴォイスとの絡みを考慮した演奏になっているだろう。
だがこのアルバムで“そんなの関係ねー!”とばかりに解き放たれた時の広重の恐ろしさを知る。

坊主頭になってからの広重は修行僧のようにも映り、
80年代や90年代に放射していたノイズの百万倍ストイックで研ぎ澄まされているように聞こえる。
だが耳ざわりだ。
歳を重ねて丸くなるどころかますます耳ざわりでたまらない。
50年以上いろんなノイズを体験してきて耳が慣れてきているためか、
一般的にノイズ(・ミュージック)とされているどんな音でもBGMになる耳に鍛えられてしまった僕だが、
このCDは、
“聴きながら”は言うまでもなく“聞きながら”他の何かをすることは難しい。
強靭な中低音域もさることながら広重のギター特有の高音域は、
爆音で再生しなくても耳鳴りを引き起こす可能性があるから取扱いに注意である。

さすがキング・オブ・ノイズ、
起死回生、いや真打ち登場である。
35年を越えるノイズ・ライフと55年を越える人生の末、
満を持した空爆、否、空漠の“デビュー作”である。

“Little Something”いうフレーズを辞書で調べると、
“ちょっとした何か”という意味の他に“お駄賃”という意味もある。
さりげなく人を喰ったセンスも広重らしい。


★Jojo Hiroshige『Little Something』(アルケミー ARCD-242)CD
約47分8曲入り。
11月11日(水)発売。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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