REDSHEER『Eternity』
2015-11-02

ATOMIC FIREBALL~SCALENEのメンバーだったリュウジ・オノザト(vo、b)とサトル・ヤマグチ(g)が、
元BUCKET-Tのカタラオと2013年に始めた東京の“ヘヴィ・ロック・バンド”のデビュー・アルバム。
ATOMIC FIREBALLは90年代中心に活動していたバンドで、
現SWARRRMのツカサがヴォーカルだった末期の2001年にはSWARRRMとのスプリットCDも出したが、
ツカサが抜けた直後にSCALENEをスタートさせるも短命に終わって残念に思ったものだ。
一方BUCKET-Tには現ele-phantのメンバーも在籍していた。
末期ATOMIC FIREBALLとSCALENEの流れのサウンドがふくらみ、
BUCKET-Tでも聴かせたタイトなドラムがリズム・キープに留まらずに走りながら入り、
ジャケットどおりにゆっくりと黒鳥が飛翔しているサウンドである。
アーロン・ターナー(元ISIS、現SUMAC他)が主宰していたHYDRA HEAD Recordsから音源を発表したバンドや、
RELAPSE Recordsの非デス・メタル系のバンドなどの、
いわゆるカオティック・ハードコアやマス・コアとも大いにニアミスしている。
ISIS、BOTCH、UNSANE、TODAY IS THE DAY、90年代後半以降のNEUROSISあたりを想起したりもするが、
どのバンドに似ている?と問われても困る。
曲によってはミディアム・テンポのメタルやドゥーム・メタルのリフ、
ニュースクール・ハードコアの非メタリックなパートやブラック・メタルの高速パートも聞こえてきて、
残虐な暗鬱の色合いも呈している。
むろん取って付けた形ではなくすべてが音像の中に溶け込んでいて、
救いも見えてくるサウンドなのである。
アートワークで塗り込められた暗紅色はREDSHEERの悶々たる鮮烈な思いそのものだ。
ゆっくりと渦を巻き、そして炸裂する。
美麗な旋律の中に光の連なりをギターが奏でるが、
いかにものエモとは一線を画す“生”の感情の震えである。
技に頼らない叫び系のヴォーカルがほとんどの中で、
つぶやきや歌唱の生々しさに息を呑む。
長谷川洋(元C.C.C.C.)が始めたノイズ・ユニットASTROがオープニング・ナンバーに参加しているのも興味深い。
シゲノリ・コバヤシ(元CROCODILE SKINK~SNOWLINE )による楽器の音のレコーディングも
デリケイトに行なわれている。
ユイ・キミジマ(元GAJI)によるミックスとマスタリングも奏功し、
ベースをはじめとする中低音域も神経に響く仕上がりになっているのであった。
SCALENEが唯一の作品『Grafting from instantaneous and fragmental fulfillment』を出した2002年のインタヴュー時、
VISION OF DISORDERの問題作『From Bliss To Devastation』を肯定する話題で盛り上がった記憶がある。
というのもあってREDSHEERのこのアルバム『Eternity』は、
VISION OF DISORDERのファースト『Vision Of Disorder』を初めて聴いた時のことを思い出す。
激情性はともかく音楽性が似ているわけではないが
(しいて言えば『From Bliss To Devastation』の方がニュアンス的に近い)、
他のバンドを引き合いに出しくい激音と叙情を聴かせてくれ、
さらに針が振り切れるサウンドだからである。
というわけで早くもセカンドが楽しみな力作だ。
★REDSHEER『Eternity』(TILL YOUR DEATH TYDR010)CD
味のある紙質により生々しい色合いで印刷されたアートワークも素晴らしい二つ折り紙ジャケットの
約51分10曲入り。
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