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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WITH THE DEAD『With The Dead』

WITH THE DEATH


CATHEDRALのフロントマンだったリー・ドリアン(vo)と、
ELECTRIC WIZARDのオリジナル・メンバーだった
ティム・バグシャウ(g、b)とマーク・グリーニング(ds他)による、
英国のドゥーム・メタル・バンドのファースト。

リーはCATHEDRALの前にNAPALM DEATHの最初の2作でヴォーカルを取っていた人である。
かたやティムとマークはELECTRIC WIZARDが最もイカレていた時期のリズム・セクションで、
4作目のフル・アルバム『Let Us Prey』(2002年)までベースとドラムを演奏。
その後二人はRAMESSESを結成し、
ティムはメイン楽器をギターに変えて2010年代頭ぐらいまで在籍する。
その一方2010年代に二人は別々の活動も行ない、
ティムはSERPENTINE PATHでギターを弾き、
マークはELECTRIC WIZARDに最新作『Time To Die』(2014)年で一時復帰して大貢献をした。


というわけでこの3人の音楽センスを思えば悪いものになることはありえない。
まさに真正ドゥーム・メタルだが、
予想通りというより期待を上回る“真性”ドゥーム・メタルと言いたい。

一般的なヘヴィ・メタルからしたら十二分に畸形かもしれないが、
CATHEDRALやELECTRIC WIZARDほどフリーキーではない。
ナチュラルかつオーガニックですらある。
本物だから気をてらう必要はない。
だからこそディープだ。
うっすらと叙情性もたたえ、
ブリティッシュ・ロック伝統の侘び寂びも効いている。

ティムとマークのリズム隊は健在ぶりを示すどころか、
粘着質なのに飛べる音のリズム・コンビネーションに磨きをかけていて舌を巻くほかない。
ずぶずぶ沈み込んでいきながらも絶えぬドライヴ感が素晴らしいのだ。
ティムの演奏パートのクレジット欄にはただのベースではなく“Fuzz Bass”と書かれており、
同じくリーのクレジット欄にはヴォーカルではなく“Nocturnal(夜行性)Screams”と記されており、
その微妙な表記が納得できる響き具合がたまらない。
マークは曲によってスペーシーなハモンドを弾いている。
そしてラスト・ナンバーの反復は、
かつてリーのレーベルもリリースしたSunn O)))への回答にも聞こえる。

リー・ドリアンはいわゆるスクリームではなく歌唱のヴォーカルなのだが、
説くようにリーが歌い放つ言葉にはCATHEDRALからの流れも感じるが、
『In Darkness, There Is No Choice』というアルバム・タイトルに象徴されるANTISECTの世界観も広がっている。
だがリーは、
だてに本作リリース元でもある自分のレーベルに“rise above”というフレーズを使っているわけではない。
そういうエナジーがこんこんと熱く湧いているのだ。

バンド名どおりに死者のヴァイブレイションが渦巻くこういうアルバムこそ克服する力が湧いてくる。
気合十分。
まさにグレイト。


★WITH THE DEAD『With The Dead』(RISE ABOVE RISECD201)CD
レンチキュラーレンズ(ホログラム)印刷で立体感のあるパッケージのスリップケース仕様の
約42分6曲入り。
8ページのブックレット封入。


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コメント

待ってました。with the dead!
今までにありそうでない傑作ですよね!
bagshawとgreeningはこの手の音楽させたら最強だと思います。unearthly tranceも
bagshawが加入したserpentine pathで凄いよくなりましたからね。
一時的なプロジェクトじゃなく、ずっとやってほしいですよね。これで終わるのはもったいないですよ。

Re: タイトルなし

hiroshiさん、書き込みありがとうございます。
王道のようで今までにないタイプですよね。
このリズム隊の音はまさにケミストリーで昔から良からぬモノを生み出す魔力すら感じますし、それでいてパワフルですから。とはいえティムはベースもギターも良しなので、ライヴ・バンドとして続けるとしたらどちらのパートで観たいか、ファンとしても嬉しい悲鳴みたいな感じです。
こういう音楽が好きなある人には昔から言っていたのですが、初期を除いてCATHEDRALはリズム・セクションがベストとは言いがたかったと思っています。メンバーが住んでいる場所が近くでなかったというのもあったのか、音合わせとかも足りなかった気がします。
けどWITH THE DEADは、一時的なプロジェクトというよりバンド感ありありのサウンドで、たまげました。やっぱりバンドはリズム隊が重要で、その音の足腰でバンドはキマります。リーとのケミストリーも抜群のアルバムですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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