なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

The POP GROUP 12月8日 at 東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE

pop group


77年に英国ブリストルで結成されたポスト・パンク・バンドの9か月ぶりの来日公演で、
初の単独日本ツアーの2日目である。
一日だけのライヴで立錐の余地なしの超満員だった今年3月の初の単独日本公演とは違い、
今回の東京公演はやや小さめの会場ながら2日間行われたからスペースに余裕があってゆったり観られた。

ステージに立ったのは前回と同じ5人で、
オリジナル・メンバーのマーク・スチュワート(vo)、ギャレス・セイガー(g、kbd、sax、クラリネット)、
ブルース・スミス(ds、バッキング・ヴォーカル)、
80年春リリースのシングル「We Are All Prostitutes」からバンドの一員のダン・カトゥシス(b)、
そしてサポート・メンバーのアレクシ・シュリンプトン(g、バッキング・ヴォーカル)である。


ライヴのオープニングのSEが、
80年のセカンド・アルバム『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の
オープニングを模したインドネシアの音楽ケチャを“リメイク”したような音声で、
果たせるかなその1曲目の「Forces Of Oppression」で始まる。
2曲目と3曲目は今年2月に出した復活第一弾作『Citizen Zombie』の曲だったが、
以降しばらくは『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の曲を続け、
その後に『Citizen Zombie』の曲を続ける。

今回『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の過半数の曲を披露したのだが、
それは来年2月に1曲差し替えた新装版でリイシューするプロモーションということだけでなく、
そのアルバムの曲を前回の来日公演では1曲もやらなかったからという気持ちもあったと思う。
その代わり前回たっぷりやった79年のファースト・アルバム『Y』の曲や
デビュー・シングル「She Is Beyond Good And Evil」はセットリストからすべてカット。
やることなすこと一貫して極端なバンドである。
それはともかく、
『Y』まで不参加の現メンバーのダン加入後にレコーディングした曲オンリーということで、
ダンの極太ベースが活きた“フリーキー・ファンク・チューン”で押すライヴになった。

でも、いい意味でファンキーとは言い切れないライヴだった。
4曲目の「Feed The Hungry」以降、
「There Are No Spectators」~「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」~
「Blind Faith」(の短縮ヴァージョン)という具合に、
前半に『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の曲が立て続けというのが大きい。
このへんの曲をやっているときステージ後方に映像が映し出されたことも影響している。
「Feed The Hungry」のときは歌詞とは直接関係ない画でCONFLICTが好む“闘争シーン”だったが、
昨今の中東や北アフリカの状況を思い出す映像も込みで、
普遍的なテーマの『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の曲にふさわしい。

むろんあの頃のテロリスティックな狂騒や加速度はない。
でも個人的に生涯ナンバー・ワン・アルバムで死ぬほど聴いた作品の
『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の曲が生でこんなに聴ける日が来るとは・・・
という感慨めいた気持ちが僕の中で渦巻いていた。
と同時に、
ライヴの序盤でキャーキャー盛り上がっていた観客が歌詞の内容が直接わからなくても引くほど重苦しく、
それでいてノリノリの観客もいるという雑然としたアナーキーな空気感が、
まさにThe POP GROUPらしくて胸がすく気持ちになったのもまた事実である。

For-how-much-longer-packshot-lo-res_revised_convert_20151209174749.jpg

フロントマンのマーク・スチュワートは冷めたような、
いや醒めたような凄味を呈していた。
ヘンテコなダンスやステージ・アクションも健在だったが、
酔っているというよりキメているかのようで、
終始マークの目は据わっていた。
ど忘れして途中で歌えなくなることを避けるためか譜面台に“カンペ”を置いて歌っていたのも潔く、
スタンディング・マイク中心で時折ハンドマイクでステージ上をうろつきながら歌うのも問題無し。
個人的な思い入れ抜きにしてもやっぱり格別のカリスマ性がプンプン放たれていたのだが、
それはやっぱりあのヴォーカルがあってこそでもある。
むろんあの独特の歌唱法は不変ながらスタジオ録音ヴァージョンをなぞることはしない。
“その瞬間の気持ち”で自由に声を発していた。
『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』の曲は歌詞が歌詞だけに、
苦しそうに歌っていた姿も眼に焼きついた。

ヴィジュアル含めて他のメンバーも何気にいい味を出している。
緑色に発光するメガネがPiLのメンバーもあることを納得させるブルース・スミスは
バッキング・ヴォーカルでも大活躍。
イケイケのリズムのビートが現在進行形のThe POP GROUPの音の象徴にもなっている。
ガレス・セイガーはギターだけでなく、
サックスやクラリネットやキーボードも次々と操って当時の味を昔の曲に添えていたが、
スタジオ録音ヴァージョンの“再現”には終わらぬ熱演ぶりで、
メンバーの中で最も初老なルックスであるにもかかわらず演奏中に大声を上げるなど一番ホットだった。
そしてダン・カトゥシスはサウスポーで指とピックを使い分けて弾く演奏姿だけでクールだし、
あの骨太ベースこそが昔と今のThe POP GROUPの音を最もリンクさせていると再認識した。


後半は『Citizen Zombie』の曲を5曲ぐらい続ける。
昔の曲もさることながら、
前回の来日公演のときは“こなれていない感じ”でやり慣れてなかったその最新作の曲も
ツアーを重ねて板についてビシッ!とプレイしていった。


その頃にフロアーの一番前近くで“観客”間のちょっとしたトラブルがあった。
ライヴ自体とは関係ないが書いておきたい。
僕は3列目ぐらいで観ていたのだが、
人が入れる空間があったとはいえ途中から初老の白人男性が割り込んで最前列に入ってきて写真を撮り始め、
撮影を延々と続けていたから観ている障害にもなったのであろうその後ろの女性がいさめたようで、
それが面白くなかったのか男性が逆上。
女性に食って掛かって殴りかかりそうな勢いだったから暴れるその男性の腕を僕も取り押さえた。
その男性は親族と思うほどマーク・スチュワート似で僕の前にゲストで入ったことを覚えていただけに、
近くだったからずっと視界に入っていた前方での一部始終は“関係者”という思い上がりの傲慢なものに見えた。
なんにせよ“タダ客”はお金払って観に来ている観客の迷惑になる行動をライヴ中にやったら失格だ。

男性に対してのその女性の行動はThe POP GROUPの”ファック・ユー!”アティテュードそのものだと思ったし、
周りの観客の協力でトラブルが収まったのもThe POP GROUPのアティテュードそのものだと思った。


そういうタイミングで私的生涯ベスト・ナンバーである、
「We Are All Prostitutes」が始まったのも必然としか思えなかった。
“反資本主義の歌”なんて陳腐な解釈を殲滅する“人類みな共犯者”ってな曲が、
80年のリリース当時とはもちろんのこと前回の来日時とも明らかに違う
ビシッ!とパワー・アップした音で繰り出される。
あっけにとられるしかなかった。
アンコールは今回も「Where There's A Will..」。
でねスタジオ録音ヴァージョンに近かった前回の来日時とは打って変わり、
冒頭の歌詞が聞こえてくるまで新曲かもと思ったほどで原曲の倍近くの長さにアップデートされていた。
The POP GROUPの進化と深化が見て取れたが、
かつてのThe POP GROUPの中で最もタイトな曲で締めということで、
歌詞だけでなく音も今につながっていることを示したかのようでもあった。


トータル70分弱。
どんなにキツかろうが今でもThe POP GROUPで解き放たれる。
気持が楽になった一夜である。


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コメント

タダ見

行川さん、ここで暴露されてますよ。


http://yomogi.2ch.net/test/read.cgi/punk/1327915253/l50

ツカサさん、書き込みありがとうございます。
トラブルの時は数人が協力した感じでしたが、腕組みするようにその男性のヒジをグイッっと腕で巻き込んで押さえた一人でした。

どういう事情があるにせよ、初老の1人に集団で暴行を振るったんですね。

文士を名乗る人が言論でなく暴力でもめ事を解決しようとした時点で、とても残念です。


http://yomogi.2ch.net/test/read.cgi/punk/1327915253/l50

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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