なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

桑田佳祐『君にサヨナラを』

桑田


サザンオールスターズのリーダーの桑田佳祐のCD。
3曲入りだが、
またしても奇才ぶりを発揮しまくったシングルとは言いがたい26分15秒の逸物である。


CDタイトル曲の「君にサヨナラを」はまったりゆったりの“桑田節”。
妙なポーズ無しでサザンを30年率いてきたシンガーソングライターとしての才覚に満ちた、
ストレートなシングル・チューン。
エリート意識を感じさせないところが好きだ


2曲目の「声に出して歌いたい日本文学<Medley>」がすごい。
日本の古典文学10篇の一節を10曲にしてつなげたのだ。

中原中也の『汚れつちまつた悲しみに……』
高村光太郎の『智恵子抄」
太宰治の『人間失格』
与謝野晶子の『みだれ髪』
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』
小林多喜二の『蟹工船』
樋口一葉の『たけくらべ』
石川啄木の『一握の砂』
夏目漱石の『吾輩は猫である』
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』

以上が歌詞として引用した作品である。
歌詞カードにない言葉を少しだけ補足している部分もあるが、
まったく別のストーリーにもかかわらずひとつの物語になっている。

古典を音楽に引用する例はたくさんある。
たとえばマーク・スチュワート(元The POP GROUP)や、
Emerson, Lake & Palmer(ELP)やブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)は、
自国イギリスのウイリアム・ブレイクの詩「Jerusalem」を引用して歌った。

日本の古典に関しては、
友川カズキ(友川かずき)は『中原中也作品集』というアルバムをリリースしている。
イタリアのPAINTING PETALS ON PLANET GHOSTも日本文学にどっぷりだ。

「声に出して歌いたい日本文学<Medley>」は、
AORありラテンありロックンロールありの多彩なソングライティングで、
“全10曲”をひとつの流れにしている構成力も見事。
18分強という曲の長さも同じぐらいだからNOFXの『The Decline』も思い出す。
むろん決してふざけているわけじゃない。
最近増えているポップな画の表紙による古典の文庫本のリイシューに近いノリを感じるし、
シリアスな日本の古典文学をこそばゆいポップス仕立てにするセンスはやっぱりタダモノじゃない。


3曲目は「HONKY JILL~69ブルース~」。
ここでの“69”は“あいなめ”と発音する。
要はシックスナイン賛歌である。
ブルースのいやらしさをポップに解釈した桑田のワイセツな変態性も舌で味わうように聞こえてくる。
フェミニストだからこそ書けるセクシストすれすれの極初期の名曲、
「女呼んでブギ」のフレーズの“女 呼んで もんで 抱いて”を織り込んでいるのも心憎い。
ユースケ・サンタマリアが絶妙のタイミングで入れる“合いの手&お囃子”もいい味を出している。


全3曲が自然に連なっているトータル26分強。
曲単位のダウンロードに抗っているわけではないだろうが、
3曲でひとつの作品になっている。
さすがの一枚。


●桑田佳祐『君にサヨナラを』(ビクター・エンタテインメント VICL-37200)CD
原由子も2曲に参加している。


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コメント

もともとサザンは苦手だったので、よく知らなかったのですが今年の1月ごろワイドショーで「桑田は反日だった」とネット上で騒がれている知り検索してみると唖然としました。
3月31日にニューアルバム&全国ツアーが始まるらしいのですが、またとんでもないことをするのではないかとハラハラドキドキです。

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
サザンはレコード・デビューした時から好きで(といってもレコードは一枚も買っていませんが・・・タイミングを見て揃えようと思っています)、いわゆる反体制とは一味違う感じで波紋を投げかけるところも好きです。デビュー・シングルの歌詞や歌い方にしたって、今までありえない調子でしたからね。桑田は自分と同じくA型魚座男ならではのシニカル&ワイセツ&アグレッシヴな視点や姿勢が刺激的です。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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