なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ふちがみとふなと『だってチューだもん』/ふちがみとふなと with ちんどん通信社「オオサカのうた」

だってチューだもん


90年代初頭からコンスタントにライヴ&リリース活動を続けて国内に留まらず
近年は欧州ツアーも盛んな京都在住の“おしどりデュオ”が、
スタジオ録音のオリジナル・アルバムの新作CDと、
そこからシングル・カットした7”レコードの『オオサカのうた』をリリースしている。
発売元は自主レーベルの吉田ハウスだ。

ふちがみとふなとは、
渕上純子(ヴォーカル、メロディオン、ピアニカ、ウィンド・チャイム、シンバルズ、
トイ・グロッケンシュピール、タンバリン/LOVEJOYのbikkeとのユニットJBでCDも出している)と、
船戸博史(コントラバス、コーラス)の二人組。

スタジオ・レコーディングのアルバムとしては『フナトベーカリー』(2008年)以来である。
でも今年4月に
“ふちがみとふなととパスカルズ”名義でパスカルズとのCD+DVDのライヴ盤を『1と2』を出している。
単独作としては『FUCHIGAMI TO FUNATO LIVE IN EUROPE 2007-2013』と
『FUCHIGAMI TO FUNATO LIVE IN JAPAN 1994-2011』のライヴCDを昨年出している。
そして本作の帯には“ふちがみとふなと4年ぶりの新作”と書かれているから、
いわゆるライヴ・レコーディングながら“前作”と言うべき
東日本大震災前後の東北録音盤のCD『6がつのうた』を2011年に出している。


『だってチューだもん』は、
観客の顔が見える場所での
そういったほんとうに精力的なライヴ活動で目一杯吸い込んできた“生”が大きく息をしているアルバムだ。


1曲目の「オオサカのうた」は異色の曲で(後述)、
それだけふちがみとふなとの“活動拠点”である大阪ムジカジャポニカでのレコーディング。
他の14曲は沖縄の木造スタジオでの録音も功を奏したと思われる微妙な残響がまずたまらない。
適度に音が“壁”に吸収されているようにも聞こえる。
最終的な仕上げにしても音を圧縮して音圧を上げてないと思われるから、
昨今の一般的なCD以上に再生機器のヴォリュームを自分で上げることで、
アナログな感触の自然な音のふくらみのヴォリューム感が味わえる。

2曲目以降は二人だけの歌と演奏の二人による静かな“宴”だ。
ヴォーカルとコントラバスだけのパートが大半の歌心たんまりのサウンドである。
取れたての新鮮な野菜みたいな苦味も甘味も活きたままの渕上の120%天然ヴォーカルの“歌”と、
時折アヴァンな音を飛ばしつつ朴訥とした船戸のコントラバスの“歌”との、
ごくごくシンプルな“デュエット”である。
繰り広げるのはジャズとR&Bとポップスと歌謡曲と童謡の大胆な“歌もの”。
作詞・谷川俊太郎で作曲・武満徹の「昨日のしみ」と、
ビリー・ヒルが30年代に書いたジャズ/R&Bナンバー「The Glory Of Love」の
日本ビクター・リズム・ジョーカーズ・シャズ・バンドのヴァージョン「それだけさ」の
カヴァーが象徴的だ。

まったく気取りがないのに凛としている。
ポップだしスウィングもしている。
でも重み十分で地に足がしっかり着いている。
オープニング・ナンバーの「オオサカのうた」は踊っているし、
エンディング・ナンバーの「詩人の血(ウソ)」は疾走しているし、
その間のまったりしているゆっくりの曲も躍っている。
演奏はなかなかアグレッシヴだし、
歌詞もなかなかアグレッシヴだ。

Ett(渓、西本さゆり)、船戸、のロケット・マツ(パスカルズ他)が一曲ずつ作曲しているが、
フック十分のオリジナル曲の大半の曲は渕上が作詞・作曲を手がけて歌詞はすべて渕上が書いている。
渕上のヴォーカルは大胆かつ繊細な自分自身の歌い方で、
もちろんわざとらしさなんてこれっぽっちもなく、
気持の軋みも聞こえてくる歌声だ。
真正面から人間に向き合っていることが伝わってくるシリアスな空気感の曲が続くが、
天真爛漫にケセラケラな歌「詩人の血(ウソ)」(注:僕は本音と解釈した)でスキップしながら締めるのも、
ふちがみとふなと、ならでは。
さりげなく金言満載なのである。

ファニーなセンスも捨てがたい。
CDタイトル曲は、
2012年の11月に“森元暢之漫画家的生活30周年記念夜のお楽しみ會”に向け、
本作のジャケット画を描き下ろしてもらった森元暢之の漫画『チュー星人の襲来』に敬意を込めて作られている。

ふちがみとふなと オオサカのうた

7”レコード(17センチ・シングル)の『オオサカのうた』の方は、
まさにレコードならでは立体的な音質で、
ひとつひとつの楽器の音と人の声が心をとんとんノックする。

アルバム『だってチューだもん』のオープニング・ナンバーであるA面の「オオサカのうた」は
“ふちがみとふなとwith ちんどん通信社”でのレコーディング。
ちんどん通信社のメンバーは、
林幸次郎(ちんどん太鼓、トランペット、コーラス)、
小林信之介(クラリネット、コーラス)、
ジャージ川口(バンジョー、ウォッシュボード、ゴロス、コーラス)である。
チンドン音楽のサウンドながら欧州などの民謡っぽいメロディが溶け合って景気がいい。
しあわせになる。
とにもかくにも“ふんだららったった!”なのだ。

B面もアルバムからカットされたこれまた新たなる名曲「おばはんは見ている」。
おばはんに“扮した”渕上がまぶしいジャケットが痛快だが、
歌詞も楽曲もなかなかシリアスでヘヴィというギャップも、ふちがみとふなと、ならでは。


出会えて良かったと心から思うCDとレコードだ。


★ふちがみとふなと『だってチューだもん』(吉田ハウス YHL-014)CD
とても読みやすい四つ折り歌詞カード封入の二つ折り紙ジャケット仕様の約59分15曲入り。
念のため、実際のジャケットは一番↑の画像とは違って中央に薄い横線は入っていません。

★ふちがみとふなと『オオサカのうた』(吉田ハウス YHL-015)7”
往年の日本のメジャー・シングル盤レコードのように、
表にレーベルのロゴ等もデザインして裏にA/B面の曲の歌詞を載せた紙一枚ジャケットながら、
その材質も音楽と同じく味のある作りで、
レコード自体ももちろんドーナツ盤だ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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