なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

エミール・クストリッツァ監督特集上映「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!」(映画)

クストリッツァ ポスター


『アンダーグラウンド』『マラドーナ』で知られる、
1954年サラエボ(当時ユーゴスラヴィア/現ボスニア・ヘルツェゴビナ)生まれの奇才、
エミール・クストリッツァ監督の特集上映が行なわれる。
YEBISU GARDEN CINEMA[1月23日(土)~]が皮切りだ。

クストリッツァが映画作りと並行してやっているバンドの
Emir Kusturica & The NO SMOKING ORCHESTEAの曲名「Unza Unza Time」から引用されたのか、
イベント名は“ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!”
今回上映されるのは、
『ジプシーのとき』(1989年)、『アリゾナ・ドリーム』(1992年)、『アンダーグラウンド』(1995年)、
『黒猫・白猫』(1998年)、『SUPER8』(2001年)、『ライフ・イズ・ミラクル』(2004年)
の6タイトルである。

このうち東京開催期間中唯一毎日上映されて2週目の最後の4日間は一日中上映で主催者の気合い満々の、
142分の映画『ジプシーのとき』[デジタル・リマスター版(DCP)]を
試写会で観させていただいたので簡潔に紹介したい。

「ジプシーのとき」
© 1989 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

『ジプシーのとき』はロマ(ジプシー)の言葉の“ロマ語”で撮られた最初の映画とも言われている作品。
ジプシーが居住するユーゴの小さな村がメイン舞台だ。
面倒見が良くて豪快な祖母に育てられ、
手品程度に見えて使いようによっては人も殺せる超能力の持ち主のエスパーみたいな男性が、
少年から青年になっていくまでのストーリー。
金にも女にもだらしない叔父と脚が不自由な妹のためにヤクザな仕事に手を染めるハメになり、
ガールフレンドを置いてイタリアに赴く。
アレコレ経験したあと久しぶりに再会した際に祖母は青年の豹変ぶりに戸惑い、
青年は裏切りと疑心暗鬼の末に因果応報を悟ってリベンジを試みる。

おおざっぱに物語の途中までを書くとこんな感じだが、
みんな一生懸命生きているからキャラが立ちっぱなしの悲喜劇で、
喜怒哀楽を煮込んだ人間のスープみたいな映画だからホルモンたんまりスタミナ満点。
日本語字幕から感じるだけでもそうとう刺激的で痛烈なセリフの言語感覚もたまらない。
しっかり向き合っているからこそ人間のズルさ、醜さ、滑稽さ、そして誠実さを“生”のまま描く。
感動を突き抜けた善悪の彼岸でたくましく笑い飛ばす。

劇中での生演奏によるものも含めて、
アコーディオンやヴァイオリン、アコーステイック・ギターなどで奏でられる民俗音楽が
絶妙のタイミングで次々と聞こえてくるのもポイント。
けど音が鳴ってないシーンでも映画そのもののスピード感とリズム感が抜群だから
ほんと最後まで時間が経つのを忘れさせる。
細けぇこたぁどーでもいいんだよ!ってなノリでありながら、
随所でウロチョロしてとぼけた味を醸し出す七面鳥などの鳥や動物の出現シーンをはじめとして、
ディテールにこだわりまくってもいるから目が離せない。

必ずしもハッピーとは言えない映画だが、
ネガティヴなシーンもひっくるめて映像もストーリーも俳優もセリフもポップでハジけている。
やんちゃなクストリッツァならではのナンセンスな遊び心が炸裂し、
サービス精神旺盛の“イタズラ”があちこちに仕掛けられている。
ドリフから影響を受けたかのようなイイ意味で子供っぽい“罠”や演技を要所で見せるのも心憎い。
妙に雰囲気が似ている園子温のファンの方も是非。
「この世を踊れ」(2000年の『 赤いポリアン 』に収録)は『ジプシーのときの』の盗作」とライヴで言っているという
友川カズキのファンの方も是非。

奇想天外ながら筋が通っているストーリーと共振した攻めの映像もダイナミックこの上ないし、
音声の魅力を抜きにも語れない監督の映画だから、
でかいスクリーンでの体感を可能であれば是非。
よろしくです。


★エミール・クストリッツァ監督特集上映「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!」
1月23日(土)~2月12日(金) に東京・YEBISU GARDEN CINEMAにて開催。
1月30日(土)~2月12日(金)にシネマート心斎橋で開催。
他の地域でも開催予定。
予告youtube:https://youtu.be/lS-oRGUIEX4
公式サイト:http://mermaidfilms.co.jp/unzaunza/


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コメント

遅ればせながら明けましておめでとうございます。
今年もちょこちょこお邪魔させて頂きますので、よろしくお願い致しますm(__)m

『ジプシーのとき』は岩波ホールでリアルタイムで見ましたっ!この映画がキッカケでワールドミュージックにハマったり、実際90年代に何度かトランシルヴァニアへ足を運んでロマの音楽と踊りに触れたりすることになったのも、全てはここから始まったと言っても良いくらい、私にとって記念碑的な映画です。また上映されるのはとても嬉しいです。

ちなみに、『アリゾナ・ドリーム』も映画館で見ました。リリ・テイラーがアコーディオンでジプシー旋律っぽい演奏をしてたのが印象的でした。ジョニー・デップがその後『耳に残るは君の歌声』でロマの青年役を演じ、タラフ・ド・ハイドゥークスと共演したのも、『アリゾナ』と関係してるかも?と今ふと思いました。

Re: タイトルなし

yuccalinaさん、書き込みありがとうごさいます。
クストリッツァは『アンダーグラウンド』が有名だと勝手に思っていますが、監督が意識してなくても物語の背景と時代からして政治性が絡んでしまう作品とは違い、『ジプシーのとき』の方が普遍的で入っていきやすいですね。リアル・タイムで観て現地まで飛んだとは!さすがです。もちろんワールド・ミュージック/民俗音楽/民謡も全開で、色々てんこ盛りですよね。
友川カズキも好きな映画(世界観が近いので納得!)ということを最近知って、本文の終盤に付け加えてみました。

『アリゾナ・ドリーム』は観てないのでチェックしてみます。映画は世界観を広げますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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