なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ザ・メタルイヤーズ』

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ハリウッド映画『ウェインズ・ワールド』(92年)を手がけたペネロープ・スフィーリス監督による、
『ザ・デクライン』シリーズ3部作の第二弾。
87年の8月から88年の2月にかけて撮影されたメタル・ドキュメンタリー映画である。

こちらもパンフレットやプレス資料用に3000字程度の文章を書かせていただいているので、
それと極力ダブらないように必要最小限の情報と補足したい見どころなどを簡潔に書いてみる。


アリス・クーパーオジー・オズボーン、AEROSMITHのスティーヴン・タイラーとジョー・ペリー、
KISSのジーン・シモンズとポール・スタンレー、MOTORHEADレミー・キルミスター
W.A.S.P.のクリス・ホームズ、POISONが“後輩たち”に金言を吐く。
自分らの破滅的な経験を踏まえたお言葉の数々もさることながら、
各々のキャラを際立たせるトークの“場”の設定に監督のシャープ&ユーモラスなセンスが表れている。

以上のビッグ・ネームはコメントのみだが、
LIZZY BORDEN、FASTER PUSSYCAT、SEDUCE、LONDON、ODIN、MEGADETHといった、
この映画のメイン・アクトである当時の中堅~新人メタル・バンドたちはライヴも楽しめる
(『ザ・デクライン』シリーズの中で本作だけ歌詞とその日本語字幕は無し)。
ほとんどはLA周辺が拠点のバンドで、
ほとんどは派手なヴィジュアルでグラム・メタル(ヘア・メタル)と呼ばれるロックンロール・メタル・サウンドのバンドだ。

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デイヴ・ムステイン(MEGADETH)

この映画のテーマの一つが<女>である。
バンド以外の人がメインで作られたコーナーでもそういうネタがかなりピックアップされている。
けど監督は彼らのセクシストぶりを強調した編集にしたつもりはないだろうし、
いわば伝統的なロックンロール・アティテュードの継承者としての一面を強調しているだけだ。
微笑ましいを通り越してお馬鹿さんぶりが笑える。
そう『ザ・デクライン』シリーズはエクストリームなユーモアを忘れていないところもポイントなのだ。
確かに『ザ・メタルイヤーズ』の素材はメタルだが、
ナンセンス度では一番パンクな映画である。

飲みの席のような調子でメンバーが集まって雑談しているみたいな感じだから本音トークが炸裂しているが
(大判になってからのフールズメイト誌の日本のバンドのインタヴュー記事を思い出す)、
ただの女たらしではなく前向きなバンド活動にも取り組んでいるという点をそっちのけにしちゃいけない。
お馬鹿なようで真剣なのがメタルの本質ということをジリジリと炙り出している。
音楽に対して一生懸命じゃなくて音楽もただ利用するだけの頭デッカチのバンドは一つもいない。
そもそも映画『ザ・デクライン』シリーズの根はシリアスである。
“ロックンロール・バンド”としてのいい意味での上昇志向をしっかりと捉えていることも忘れちゃいけない。
何しても正邪の背中合わせで生きているってわけである。

そういった流れの中、
音楽面も含めて本作のメイン・アクトの中で浮きまくりながら今や大御所のMEGADETHがえらくカッコよく見える。
いや実際この映画のライヴで披露している「In My Darkest Hour」はクールな名曲だし、
観客が目の前で次々とダイヴしていく中でクールにプレイしているMEGADETHのライヴ・パフォーマンスが凛々しい。
デイヴ・ムステイン(vo、g)がドラッグ等で一時ボロボロになっているから彼らも清廉潔白というわけではないが、
えらくストイックに見える。
彼特有のシニカルなジョークも飛ばすデイヴ・ムステインと、
デイヴ・エレフソン(b)のコメントは、
メタルもパンクも関係なく自己責任で表現に向かって自己を生きることの大切さも知らしめる。

この映画もバンドに対しての予備知識がなくても楽しめる。
とはいえ余談を一つ。
監督が意識したか否かは不明だが、
映画『ザ・デクライン』シリーズはシリーズ間で何気にリンクしている部分がある。
たとえば『ザ・メタルイヤーズ』でLONDONがライヴで披露している「Russian Winter」のテーマは、
『ザ・デクライン』のトリを飾ったFEAR
85年のセカンド・アルバム『More Beer』に収めた曲「Bomb The Russians」も思い出す。

ネタの広がりは尽きない。


★映画『ザ・メタルイヤーズ』94分
(C) 1988 IRS World Media and Spheeris Films Inc. All Rights Reserved.
新宿シネマカリテ 3/26(土)〜4/1(金)
渋谷HUMAXシネマ 4/2(土)〜4/8(金)
http://decline.jp/


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コメント

ナンセンス度では一番パンクな映画

まだ観て無いのでコメントのしようもないのですが、(ナンセンス度では一番パンクな映画)なら 期待大ですね。

Re: ナンセンス度では一番パンクな映画

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
出演ミュージシャンの中には完成した映画を観て怒った人もいたほど、全体的には発言も構成も映画『デクライン』シリーズの中で一番ムチャクチャな作りですから。
アメリカでオルタナティヴ・ロック・ムーヴメント勃発直前で、ロック・シーン的にはロック・スターを夢見るバンドたちがしのぎを削った最後の時代の記録としても興味深いと思います。
この三部作、バラバラなようで、今見るとまたシーンの流れみたいなもののつながりが見えてきて面白いです。

星二つ(五段階評価)

出演ミュージシャンが完成した映画に怒ったというシーン目当てに観に行きましたが、確かに観てて気持ちのいいものではありませんでした。(>_<)
スラッシュメタル四天王の一つが出演しているのにパンフにその呼び名が載って無いのが不思議です。ポゴダンスのように最近では使われ無いのでしょうか?

Re: 星二つ(五段階評価)

余分三兄弟+さん書き込みありがとうございます。
怒ったシーンというのはW.A.S.P.のメンバーのシーンですかね・・・明らかにシラフじゃなくてブザマに撮られている様子だけでなく、マザコンを疑われそうなシチュエーションも本人は恥ずかしかったのかもしれませんね。
スラッシュメタル四天王というフレーズは、僕は“~とも呼ばれている”という書き方はするかもしれませんが、あまり使いたくないフレーズです。SLAYER以外の3バンドは明らかにスラッシュ・メタルではないアルバムもけっこう出しているからでもあります。MEGADETHも90年代後半に極端な迷走をしましたしね。

初めまして

遅ればせながら先日見て参りました。これ当時のBURRN!誌でも問題作と言われてましたが、個人的には面白かったです。ロック・バンドは欲望に忠実でなんぼとも思うので、登場する無名バンド達の上昇志向は清々しくも映りました。
初めて名前を聞くようなバンドのパフォーマンスも楽しめましたし、個人的には一級のロック・ムービーだと思いますね。

Re: 初めまして

TOMMYさん、書き込みありがとうございます。
>当時のBURRN!誌でも問題作と言われてました
その話は今回の日本公開関係者の方から聞きました。けどヘヴィ・メタル云々以前に表現として向き合えばいいことです。マニアックなハンドも出演しているかもしれませんが、ジャンルとかの狭っ苦しい“サークル”関係なく、これはこれで人間個々に向き合っているからこそ“生”の映画に仕上がっていると思います。それこそが大切なのです。
僕も、何かしら欲望に忠実で上昇志向がないとつまらないものになると思っています。何に対しても言えますね。
>一級のロック・ムービーだと思いますね。
“ロック・ムービー”という言葉がジャスト!の映画ですね。

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Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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