なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ザ・デクラインⅢ』

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ハリウッド映画『ウェインズ・ワールド』(92年)を手がけたペネロープ・スフィーリス監督による、
『ザ・デクライン』シリーズ3部作の第三弾。
96年の7月から97年の8月にかけてLAで撮影された“ホームレス・パンク”・ドキュメンタリー映画である。

こちらもパンフレットやプレス資料用に3000字程度の文章を書かせていただいているので、
それと極力ダブらないように必要最小限の情報と補足したい見どころなどを簡潔に書いてみる。


登場するバンドは、
FINAL CONFLICT、NAKED AGGRESSION、LITMUS GREEN、The RESISTANCEで、
全バンドのしっかりした映像のライヴが数曲分を楽しめ(英語の字幕が出る曲の歌詞には日本語の字幕も出る)、
NAKED AGGRESSIONとThe RESISTANCEは各々の“アジト”でのインタヴューも収めている。
バンドのセレクションが謎だが、
FINAL CONFLICTとNAKED AGGRESSIONとLITMUS GREENは同じ日に同じ会場でライヴをやっている。
そのライヴで対バンだったはずのU.S.BOMBSが未収録なのも謎だが、
当時EPITAPH傘下のHELL-CAT Records(RANCIDのティムのレーベル)と契約したからだろうか。
そう思ったのは、
この映画の撮影がGREEN DAYやOFFSPRINGのブレイクでパンクが注目された時期だからでもある。
個人的には、
NAKED AGGRESSIONはバンドからメールオーダーでTシャツを買ったこともあるし、
LITMUS GREENも7”EPやアルバムを買っていたから懐かしい。

それはともかく、
『ザ・デクライン』に出演したCIRCLE JERKSのキース・モリス(元BLACK FLAG)の他、
RED HOT CHILI PEPPERS結成直前の一時期ながら『ザ・デクライン』に出演のFEARに在籍していたフリーなどが、
コメンテイターとして登場する。
ただこの映画の“メイン・アクト”はLAのガター・パンク(gutter punk)である。

一言でいえばガター・パンク≒ホームレス・パンク。
今風の日本語で直訳すれば“底辺パンク”ってことになるのだろうか。
監督が寄り添いながら何人ものガター・パンクスの生い立ちを訊き、
日常生活をそのまま映し出している。

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映画『ザ・デクライン』シリーズはシリーズ間で何気にリンクしている部分がある。
たとえば余談だが、
『ザ・デクライン』に登場するFEARのリー・ヴィングと
『ザ・メタルイヤーズ』に登場するMEGADETHのデイヴ・ムステインは、
MD.45というプロジェクト・バンドで96年にアルバム『The Craving』を出している。
それはともかくそのデイヴ・ムステインが『ザ・メタルイヤーズ』で語っていた親子の関係のシリアスな話が、
この映画につながっているのも偶然とは思えない。
ほとんどのガター・パンクの原因が悲惨な家庭環境だからである。

ガター・パンクの日常映像が生々しい。
ガター・パンクの大半はLAの観光客や住民と“交流”して飲食費を得る。
USパンク/ハードコア・バンドたちのシンプルなファッションの伝統に抗うかのようなヴィジュアルを活かして
稼ぐパンクスも少なくないが、
酒代のために日銭をゲットしようと街頭をうろつく姿は派手なパンク・ファッションだからこそ滑稽にも痛々しくも映る。

生々しい人間関係の崩壊ぶりもチラリと覗かせて必ずしも“ハッピー・エンディング”にはなってはない。
だがポジティヴな方向性の映画である。
この映画のシリーズの第一弾の『ザ・デクライン』と社会的な“虚無主義”の意識はダブるが、
似て非なるニヒリズムとも言える。
ガター・パンクスの仲間意識が強いのだ。
人種も性別も関係なく包容している点も特筆したい。
そういったところ全部ひっくるめて『ザ・デクライン』よりも今の大半のパンク・ファンの感覚に近いかもしれない。

出てくるバンドは『ザ・デクライン』シリーズの前2作以上にマニアックだが、
前2作以上にバンドの予備知識がなくても映画に入り込める。
なぜならパンク云々を超えた社会派ドキュメンタリー作品だから。
それこそNHKの『NHK特集』や日本テレビの『NNNドキュメント』などの、
テレビのドキュメンタリー番組でオンエアされても違和感のない映画だ。


★『ザ・デクラインⅢ』86分
(C)1998 Spheeris Film Inc. All Rights Reserved.
新宿シネマカリテ 4/2(土)〜4/8(金)
渋谷HUMAXシネマ 4/9(土)〜15(金)


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コメント

この映画の出演バンドやガターパンクスの事も何にも知らないのですが、キースモリスとフリーのコメントシーン目当てに観に行きたいと思います。あとは歌詞の日本語訳とガターパンクス愛用のバンドTシャツ(パンクTシャツ)を観るのが楽しみです。

Re: タイトルなし

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
ドキュメンタリー映画は、知っていることの確認だけでなく、観て→知るという面白さもありますね。
出演バンドは基本的にポリティカルな歌詞で、そういう効果もあって監督が採用したとも思われます。
パンクスが着ているTシャツは、ある意味偏っていますが、色とりどりです。

デクラインシリーズ全部観た記念

ずっと前から観たかった三部作が観れてスッキリしました。なめブログをチェックしていなければ見逃していたであろう映画なので、行川さんのパンク情報の提供に感謝しております。
なかなかの良作だったので何でもっと早くDVDリリースと劇場公開しなかったのかと思いましたが、監督のインタビュー記事に謝罪文があったので良しとしました。またパート4の情報も待ちたいと思います。
目玉焼きを焼いていたシンガーも今更注目されても困惑するのでは?
あと、パンク史を何にも知らない人が観た時スクワッターパンクスはLAが発生の地だと間違った歴史認識をしてしまわないかと心配になりました。

Re: デクラインシリーズ全部観た記念

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
映画公開情報解禁の前に、別のスレッドで余分三兄弟+さんがこのシリーズに関してのコメントをしていただくなど(それで情報フライングしていまいましたが)、ずっと熱心に関心を持っていただき、全部観ていただき、率直な感想、感謝します。色々な情報が溢れていて僕も知らなくて見逃すケースもどんどん増えているだけに、自分でも色々なるべく情報提供していきたいです。
日本公開等の話はかなり前から僕も聞いていたのですが、インタヴュー等で明かされている理由などで、実現まで時間がかかったようです。
目玉焼きシーンの挿入もこの監督ならではのセンスですね。
> あと、パンク史を何にも知らない人が観た時スクワッターパンクスはLAが発生の地だと間違った歴史認識をしてしまわないかと心配になりました。
ああ、そうですね・・・そのへんのこともパンフレットで言及しておけば良かったですね。別の機会の時に触れてみます。

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Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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