なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ゲロゲリゲゲゲ『燃えない灰』

GEROGERIGEGEGE『燃えない灰』]


奇才・山ノ内純太郎のプロジェクトのThe GEROGERIGEGEGEによる、
『Saturdaynight Big Cock Salaryman』以来の15年ぶりの新作。
リリース元は小長谷淳(WHITE HOSPITAL~GRIM)のレーベルで、
2014~2015年レコーディングの17枚目のフル・アルバムである。

GEROGERIGEGEGEといえば
ANAL CUNTの先を行っていたノイズコア(ノイズグラインド)スタイルの作品が有名だが、
実際はレコードやCDやライヴごとにやることが違い、
何をしでかすかわからない数々の伝説を生んできた。
だが、すべて“ゲロ”と“ゲリ”と“ゲゲゲ”という言葉の意味と響きのイメージの
排出しないではいられない必死の思いと生あたたかいユーモアに包まれている。
鬱屈の逆噴射の激烈排泄ノイズあり、たそがれのつづれ織りの琴線に触れるメロディありで、
しいたげられがちな人間や日陰者のエレジーのようでもあり、
すべてが赤裸々な“生のドキュメンタリー”である。


今回は全編ほぼインストで、
以前のGEROGERIGEGEGEの何枚かの作品でも聴けた現代音楽の趣もところによっては感じるが、
たいへん研ぎ澄まされた音で突き抜けているアルバムだ。

4曲入りながら全長約54分のヴォリュームで、
オープニング・ナンバーの「西河の果て」からして8分弱の尺である。
この曲ではいわゆる楽器を使ってないようで“Treasure / Trash Recordings”とクレジットされているが、
巷の音を引用しただけのいわゆるフィールド・レコーディングではなく“作曲”を試みているのだ
踏切付近で酔っ払いがクダを巻いているみたいな序盤にビックリするが、
空漠のアンビエント・サウンドが漂泊している。
英題の「Out Of Saiga」も含めて曲名どおりのイメージで、
さりげないGEROGERIGEGEGEならではの一種のドキュメンタリー・タッチの曲だ。

2曲目は初期の85年作曲ということが納得できるタイトルで、
「ゲロゲリゲゲゲ(The Gerogerigegege)」という曲が約15分半にわたって繰り広げられる。
ギターとベースは山ノ内。
ドラムは、
GASTUNKのBabyやBakiらと初期EXECUTEを支えた後にしばらくしてからHIGH RISEに加わり、
ちょっと前まではGREEN FLAMESで活動していた氏家悠路だ。
氏家はGEROGERIGEGEGEの80年代後半のステージで叩いたこともあって、
氏家がドラム、氏家もメンバーだったQOPのギター、
当時JOYやCANIS LUPUSなどでギターを弾いていたカワカミがベースのライヴは、
僕もDOLL誌のギグ・レヴューのコーナーで書いたこともある。
1曲目でヴォリュームを上げて聴いていた人は気をつけた方がいいほどの音で始まるが、
グランジとシューゲイザーのしあわせな交わりが何度も繰り返されるような曲で、
鉛を研ぎ澄ましたみたいに美しい輝きと美しい哀切のメロディでシンプルな物語を展開する。

3曲目の「敗残兵士達の海」はさらに長い22分強の曲だが、
山ノ内がピアノとギターとチューナーを使って作ったアンビエント・サウンドの魔力で
ゆっくりと引き込まれる。
邦題はもちろんのこと英題「Tokyo~Sea Of Losers / Donors For USA」も意味深で、
僕には鎮魂の曲に聞こえる。

そしてラスト・ナンバーの「最期の調律」(英題「Final Tuning」)は、
1曲目同様に楽器未使用のようで“Treasure / Trash Recordings”とクレジットされた8分強の曲。
ほぼ静寂で小さな音のオルゴールみたいなサウンドが、
これまた意味深な曲名どおりの世界を描き出している。

自然な意識の流れが息づいて呼吸しているみたいなアルバムで、
やっぱり空気感が大切だとあらためて思う。
とにかくゆっくりと覚醒されて想像力が無限大にふくらむのである。

マスタリングは中村宗一郎が行なっている。
山ノ内はASYLUMの大ファンで
(GEROGERIGEGEGEとASYLUMは80年代後半のTRANS Records時代のレーベル・メイトでもあった)、
87年のファースト・アルバム『Crystal Days』は再発されるたびにゲットしているほどだが、
昨秋SUPER FUJI DISCSから出た『Crystal Days』の再発盤の中村のリマスタリングを気に入って依頼。
その中村のマスタリングもハマったデリケイトな仕上がりの愛の一枚である。


★The GEROGERIGEGEGE『Moenai Hai』(ESKIMO CD-03)CD
約54分4曲入り。
4月20日発売。



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コメント

こんばんは(^^)
ついにゲロゲリが帰ってくるんですね。感慨深いです。
アルバムも行川さんの文を読む限りでは、シリアスな内容みたいで…
しびれるやつが期待できそうですね!
発売まであと一週間!

コメント

いつも読んでます。地獄の黙示録で一番好きなシーンは ウィラードがボートでマルボロの煙を吐く所です。レンタルビデオでここだけ巻き戻して何度見た事か!自分の中では 永遠のド傑作映画です。

コメントありがとうございます。

書き込みありがとうございます。

>岸辺のアリバイさん、
新作は『パンクの鬼(Tokyo Anal Dynamite)』やPSYCHOMANIA Recordsの7”EPあたりの作風とは違いますが、同じ匂いがありますし、ゲロゲリの作品を何枚か聴いている方ならますますうならされる心に染みるアルバムです。
ライヴも期待したいところですね。

>Aさん
もちろんダイナミックなシーンも見どころですが、あのマルボロ・シーン、クールですね。そういう細かい場面ひとつにもウィラードなどの出演者の心情が表われていて、アイテムやディテールのこだわりも凄い映画ですね。

燃えない灰

すごく良い作品でしたね
聴いて思った事は、山之内氏にはきっと良き理解者or伴侶ができたのかな?と思いました。幸せなのかなと。だから闇に対峙している音だと思いました。しかし、どんなに幸せでも終わる事は避けられない事、そして、闇は消えないという事。それはまさしく灰である。灰は燃えないですよね。残り続ける…。
しかし、それを真っ正面から受け入れようとしていると思いました。だから幸せな状況にいるんだと思うわけです。羨ましいなあ…。

Re: 燃えない灰

tokiさん、書き込みありがとうございます。
とてもグレイトな捉え方で的を射ていると思います。「闇」と「灰」、まさにそうですね。
突っ込んだプライヴェイトなことまでは聞いていませんが、精神的にもいい状態に見えます。やっぱり音楽は正直で、よく出来ているけど底の浅いものもそのまま表われますが、即効性/速攻性とは一線を画すこのアルバムも自己表現に対して真正面から向き合う今の彼の肝がそのまま深い音楽になっていますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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