なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

書籍『ザ・ストーン・ローゼズ 自ら激動なバンド人生を選んだ異才ロック・バンドの全軌跡』

ストーン・ローゼズ本


英国マンチェスター出身のロック・バンドで80年代後半から90年代初頭にかけて一世を風靡し、
今も根強い人気のSTONE ROSESのドキュメンタリー本。
『THE STONE ROSES War and Peace』という原題どおりの内容だ。
過去の記事等からの引用も含みつつ、
歴代メンバーはもちろんのこと重要関係者のほぼすべてに取材した膨大な話を基に編み上げた力作である。

個人的にSTONE ROSESは70年代後半から愛読していたロッキングオン誌からの影響で買った最後のバンドで、
シングルもけっこう持っていて89年のファースト・アルバム『The Stone Roses』はそれなりに愛聴したが、
みんなが大騒ぎするほどのバンドとは思わなかったし大して思い入れもない。
けどそんな僕でもぐいぐいぐいぐい本の中に引き込み、
恐ろしいほど一気に読ませた面白すぎる痛々しすぎる話の連続のグレイトな本だ。


分岐点になった90年のとあるシーンがプロローグの本だが、
あとは復活までを時系列どおりに進めている。
メンバーの子供の頃の話がほとんどないのはあくまでもSTONE ROSESの本だからで、
イアン・ブラウン(vo)とジョン・スクワイア(g)が高校一年生の時に結成したバンドが起点だ。

二人がその最初のバンドを始めたのは78年のようでパンク・ムーヴメントが一段落した頃だが、
当然パンク・ロックのネタが序盤は多い。
SEX PISTOLSやCLASHを好んでいたのはもちろんのこと、
STONE ROSESの最初のデモは
地元の先輩のSLAUGHTER and The DOGSをサウンドの指標にしていたそうだし、
ANGELIC UPSTARTSCOCKNEY REJECTSとの接点があまりにも興味深い。
80年代初頭はOi!周辺との交流も持っていてスキンヘッズとやりあったりもしていて、
イアンを筆頭にけっこうやんちゃだったのである。

マンチェスターの労働者階級スピリットやカルチャーみたいなものも伝わってきて、
ブレイクした頃だけでなくSTONE ROSES結成前からファッションの話も盛り込んでいるのも特筆すべきだ。
単なるバンド・ストーリーで終わってないのは彼らが様々な“シーン”に絡んでいたからだが、
地元をはじめとしてあちこちの音楽シーンには意外と絡んでなく我が道を行っていたこともわかる。
ビッグになっていた頃のThe SMITHSでさえオーナーなどに挨拶周りをしなきゃいけなかったほど
マンチェスター・シーンのマフィアみたいになっていたという、
FACTORY Recordsへの“アンチ”のアティテュードが象徴的。
上下関係の伝統なんか知ったこっちゃない。
権威なんかクソくらえ!の不遜のパワーに突き動かされていた。
かといって“仲良し倶楽部”みたいに慣れ合って“仲間”と妙につるむこともしなかった。


87年にイアンが放った以下の言葉に当時の姿勢がよく表われている。
「今のインディ・シーンが良好な状態だと感じている奴らが多いようだが、俺はそうは思わない。
みんな気取っていて、同じことばかりやってるように見えるね。
シーンにいるバンドの多くは商業的な成功には興味がないって言うけど、そんなのはゴミだね。
音楽ビジネスに関わっている人間は、誰もが金を稼ぐために存在しているんだ」
「『STONE ROSESには思い上がったエゴがある』って思われていた。
実際、俺らにはそういったエゴはあったけどね。
でも、それはいいグループであるための重要な要素なんだ。
<中略>嫌われるのは、俺たちには何らかの価値があるってことの証明でもあるのさ」


80年代終盤から90年代初頭にかけてSTONE ROSESは
日本でも音楽誌のニュース欄を毎月賑わせていて僕ですら目にしていたが、
今ならインターネット上を毎日賑わせていたことは間違えないほど絶えなかったトラブルの全貌も
“よくぞここまで!”と驚嘆するほど詳細に綴られている。
したたかで理想実現のために現実的に立ち回ってSTONE ROSESは89~90年にピークを迎えたが、
そういった上昇過程を描いた前半部分ですらトラブルの連続だ。
全盛期のマネージャーが仕掛けたことも大きいし、
業界がSTONE ROSESを理不尽に扱い続けてきたことも大きい。
メンバーの中で最も政治的で
色んな人に突っかかっていって波紋を投げかけたがるビッグ・マウスのイアン・ブラウンが、
納得がいかないことに黙っちゃいられない性格というのもさらに大きい。

個人的に、
クラシック・メンバーのうちレニ(ds)以外の3人は僕と同じ学年で、
音楽趣味などの彼らの話が時代的にえらく納得できたというのも本に入り込めた一因だ。
特にイアンは生年月日が8日しか違わない魚座という共通項で色々と“星の影響”の面で同じと思われ、
色々な面でとても他人とは思えない。
メンバー全員好き勝手なバンドだが、
STONE ROSESの“ファック・ユー!”アティテュードのイメージの大半は、
フロントマンでバンドの顔のイアンの行動や意識によるところが大きいとあらためて思った。


それはともかく上昇中のトラブルはバンドにとってエネルギーにもなりえるが、
下降中のトラブルに次ぐトラブルは“病気”にもなりえる。
特にメンバー間の確執でバンドが崩壊していくトラブルの連続の後半は読んでいてこっちの胃や頭も痛くなるほどだ。
ストレートな書き方だけに彼らの精神状態や意識の流れがストレートにモヤモヤと伝わってきて、
何しろ読者を当事者の一人に巻き込んで気持ちを共有させるぐらいのパワーに満ちた本である。

著者のサイモン・スペンスの力量に感服もした。
緻密な取材で集めた発言の数々もインタヴュー相手にすれば過去の記憶を掘り起こして引っ張り出す作業であり、
思い違いもありえるだろうが、
そのへんは多数に話を訊くなどとして事実を絞っていったと思われる。
メンバーをはじめとす膨大な数の人間の話を“現在進行形”のリアル・タイムの発言のようにして文字化し、
ほとんど秒単位で時間が流れる臨場感あふれるバンド・ヒストリーに仕上げた手腕に舌を巻く。
リリース数が少ないだけに個々のレコーディングの様子の記述も詳しく、
マーティン・ハネットやジョン・レッキーなどのプロデューサーとのやり取りも緻密に綴っている。
色々と細かいネタも少なくないが、
彼らの曲名などをよく知らない人でも興味深く読める書き方になっておりし、
もしわからない部分があっても1ページでもめくって先に進めればまた加速して読める。

スピード感のある仕上がりになっているのは故・佐藤一道の読みやすい翻訳があってこそだ。
“同業者”ながら活動フィールドが違っていて面識がなかったとはいえ、
発言部分における生々しい口調の和訳をはじめとして
STONE ROSESを深く理解している人間ならではの丁寧な仕事ぶりに敬意を表したい。
あとがきを書いてまもなく今年1月に他界されたのがあまりにも残念だが、
STONE ROSESの<サード・カミング>を願う“遺作”にもなった。


STONE ROSESに一度でも入れ込んだ方は全員必読なのはもちろんのこと、
彼らに対して特別な思い入れがなくてもバンド内や音楽業界のゴタゴタに目がない方、
エキサイティングなドキュメンタリーに酔いたい方も読んで損はない。
これはオススメ。


★『ザ・ストーン・ローゼズ 自ら激動なバンド人生を選んだ異才ロック・バンドの全軌跡』
サイモン・スペンス著
佐藤一道 翻訳
2,700円(税込)
DU BOOKS
A5版 / 416ページ(うち貴重な写真コーナーが32ページで本文は二段組み)
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK046


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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