なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SpecialThanks『heavenly』

SpecialThanks『heavenly』


ソングライターのミサキ(vo、g)が率いる2005年結成の愛知出身のメロディック・パンク系バンドが、
セカンド・フル・アルバム『Misaki』から10ヶ月のインターヴァルで出した“新作。
スタジオ録音の新曲6曲入りの約20分のCDと、
昨年11月1日に下北沢GARDENで撮ったライヴ17曲中心のDVDの2枚組である。


CDは6曲でも聴き応えありありだ。
天気予報風に書かせていただくと、
GREEN DAY…ときどきNOFX、のちWEEZER、ところによってはKEMURI”って引き合いでは収まらない、
パワー・ポップとギター・ポップの間を行き来するガールズ・ポップ/メロディック・サウンドである。
Hi-STANDARDも聴いているだろうが、
日本のメロディック・パンク系バンドに多い彼らからの影響をあまり感じさせないところも高ポイント。
もちろん演奏陣のメンバー3人もミサキの歌のバッキングに甘んじることなく、
ミサキのケツをバックから蹴り飛ばすビート感の音で歌を盛り立てている。
良さを引き出してまとめあげた本作リリース・レーベルの主宰者・古閑裕によるプロデュース力も大きい。

リーダーのミサキはメンバー・チェンジを繰り返しながらSpecialThanksを引っ張って来たが、
バンド最年少で高校生だった初期から
ロリ声とかに頼らずにまっすぐな歌唱で胸をすくストロング・スタイルのヴォーカルだ。
みずみずしさでずっと潤っている歌声ではあるが、
いい意味で垢抜けた艶っぽさが染み出すようになっているのも嬉しい。

いわゆる初期衝動がベストの人もいるが、
ミサキはどんどんどんどんソングライティングが深くなっている人だ。
昔から基本的に英語で歌ってきたバンドだけに、
日本語の歌詞の曲も音に溶け合った歌ものポピュラー・ミュージックとして“洋楽”っぽく聴かせる。
それは必ずしも歌詞の意味性に頼らず、
音と声と言葉を同時に聴いた瞬間の感覚を信じているということでもある。
といってもシンプルに思いを込めてイメージをふくにらませる歌詞もなかなか深い。
2曲めの「SWEET」は妙な“下心”を感じさせないピュアっ娘の“love & peaceソング”。
続く3曲目の「KOKOROKARA」の歌詞も日本語で、
やっぱり音と同じく“ほのかに熱い”のであった。


DVDの方はまず数台のカメラでとらえたライヴが約56分。
まだまだ“伸びしろ”がたっぷりあるステージングだが、
ファンの方は間違いなく楽しめるだろう。
フロント・ガールのミサキは
前述の古閑などのゲストが参加した曲はヴォーカルに専念しているが、
ギターを弾きながら歌うステージが断然似合う。
伝統的なシンガーソングライター風の小ざっぱりしたヴィジュアルでロング・ヘアーをなびかせながら、
ギターを弾いて歌う姿がなかなかクールだ。

ライヴの抜粋やインタヴューを含む2015年の約23分を収めた“ツアー・ドキュメンタリー映像”では、
ツアーだけでなくバンドを続けていくことも大変さも垣間見られて興味深い。


CDデビューした頃からメジャー・レーベルからのオファーが絶えなかったそうだが、
それでもずっとインディ・レーベルのKOGA Recordsからずっとリリースを続けている。
そんな感じでメインストリームなメジャー・ソングライティングと、
生の感覚を大切にするインディペンデントの味わいのハーモニーで魅せる2枚組。
細かいジャンルやサークルなんてどうでもいい。
たくさんの方の耳と目に届いてほしい作品だ。


★SpecialThanks『heavenly』(KOGA KOCA-89)CD+DVD
歌詞(英詞は和訳付)とライヴ写真で彩った12ページのブックレット封入。


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コメント

コメント

いつも読んでます。昔 ユニオンのフォローアップ(無料冊子)で知り アルバム2枚レンタルしました。ミサキちゃん 可愛いッス! 英語の発音もバッチリ。コレは 映像見たいので買いかもしれません。(ヘルチャイルドをcarcass来日の前座で見たんですが 客の反応が悪く 不貞腐れてました(笑)

タダでCDもらったり試写会に呼ばれると絶賛レビューという姿勢、どんなものでしょうか

Re: コメント

書き込みありがとうございます。

>Aさん
フォローアップ誌で知って聴き始めたというきっかけ、いいですね。やっぱり紙媒体の魅力は強いと思います。このバンドは妙な戦略を使わず音楽だけで勝負していて、しかもその音楽が普遍的でポピュラリティが高いだけに、“狭間”で留まっている感もありますが、メンバーが変わりつつコンスタントに活動して10年続けている根性もタダモノではないです。ミサキのルックスはアイドル風に見えて、髪型もファッションもやっぱりそれっぽくなく小ざっぱりしていて、それでエレキ持ってこういう曲を歌っている・・・そういう姿は意外と他にないです。
CARCASS初来日公演の前座はHELLCHILDでしたか・・・・その際に雑誌での対談の司会をしたためかS.O.Bが務めたと記憶してしまっていました。HELLCHILDは当時よくメイン・アクト目当ての観客からそういうリアクションをされましたね。
SpecialThanksを聴いてCARCASS/HELLCHILDのライヴを観て…というセンスも大好きです。

>イェリコさん、
タダのものでも購入したものでも書く気が起きないものは書いてない感じで(もうあまり時間もないので)、そういうものはたくさんあります。グレイトでも時間がなかったりして書いてないものもありますし、雑誌で取り上げたばかりのものは編集部に対する礼儀上ここでは書きません。批判的なことを書くのはかなりエネルギーも必要なのであまりやりませんが、MORBID ANGELの目下の最新作の時みたいに突き動かされた作品は書きます。
現代音楽だろうがポップスだろうがエクストリーム・メタルだろうがパンク・ロックだろうが、政治的ドキュメンタリー映画だろうがラヴコメだろうが、書きたい気になったものを書いています。人間でも表現作品でも大切なのは形じゃなくて伝わってくる意識ですから。
世の中と同じく一つの傾向に固まるのがイヤで危険というのもあって、このブログでも意識的に日替わりで色々な“ジャンル”を扱って故意に混乱させている部分あります。もちろん国籍も関係なしです。というわけでSpecialThanksの次に今日はRED KRAYOLA WITH ART & LANGUAGE、明日もまた表面的には違ったものを紹介するつもりです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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