なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『レジェンド 狂気の美学』

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60年代のロンドンを支配した双子のギャングであるクレイ兄弟の史実が基の劇映画。

最近では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『レヴェナント:蘇えりし者』で主演/助演を務めた
トム・ハーディが双子の兄弟二人を一人で演じ、
最近では『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』の主演で知られるエミリー・ブラウニングがヒロインを務めている。
『42 〜世界を変えた男〜』(2013年)が近作のブライアン・ヘルゲランド監督の脚本もクールな佳作だ

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クレイ兄弟は1933年にロンドンのイースト・エンドで生まれて下層社会で育つ。
10代の頃から暴行や恐喝や強盗といった犯罪を重ねるが、
二人からの報復を恐れて警察に通報しようとする者はおらずイースト・エンドで勢力を広げる。
1960年代にはナイトクラブのオーナーとしてロンドンのウエスト・エンドでも名を知られるようになり、
まもなく貴族、俳優や歌手などの著名人、政治家などとも親交を持っていく。
だが1969年に殺人罪で逮捕されて有罪となり、1995年と2000年にそれぞれ病死している。

そんな二人の60年代の栄光と没落を描く。

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シャープ&タフ&スマートでまさに“ギャングスター”そのもののルックスと行動の兄のレジー。
妄想型統合失調症を患っていて予期せぬ衝動的行動を取りゲイであることを公言するメガネの弟のロン。
言うまでもなく二人とも自分が必要とあらば容赦無くヴァイオレンスを行使するが、
ホット&クールな佇まいでリードするレジーは、
制御不能ゆえにコミカルに映るほど冷酷に暴走するクレイジーなロンを持て余すようになり、
決定的な出来事が続いて遂に堪忍袋の緒が切れる。

そんな中のキー・パーソンが、
エミリー・ブラウニング演じるレジーの恋人のフランシスである。
ごく普通の女の子で純情&ピュアなフランシスのためにレジーがカタギの道を模索したほど、
静かに影響を及ぼした・・・一時は。
けなげなフランシスがまさに影の主役であり、
映画の肝になる言葉をDVDの副音声のように適宜挿入する“語り手”にもなっていることが象徴的である。

もちろん兄弟の舎弟、敵対勢力、“ビジネス”の相手などなど他にも登場人物はたくさんいるが、
レジーとロンとフランシスの“三角関係”で“最期”まで持っていく映画だ。

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色々と人間関係をリンクさせながらもわかりやすい脚本と滑らかな流れのテンポの良さもさることながら、
やはり映像も素晴らしい。
主演が一人二役ながら、
兄弟二人が登場する場面は工夫して作られていて息を呑む兄弟ゲンカのシーンも自然な仕上がりだ。
とにかくいわゆるスウィンギン・ロンドンの時代の空気が鮮やかな映像からたっぷり感じられ、
イースト・エンドの街並みをとらえた掘りの深い伝統的な風景も目を引く。
本物のクレイ兄弟の写真などを参考にしたファッションも見どころで、
兄弟のスーツやセレブのドレスはもちろんのこと、
庶民がちょっとおめかしした服装も目を引く。

“R15+”指定になっているのも納得の強烈な暴力場面も目を閉じていられない。
少なくてもこの映画の中では銃がほとんど使われないのだが、
ジワジワと痛めつけて血も噴き出すプリミティヴなヴァイオレンスの方が残虐に見えることがよくわかる。
いきなり鉄拳制裁を加える瞬間など見ていて思わず身を引いてしまうほど生々しい。
それでもダイナミックな光を放射する空気感と問答無用の兄弟のキャラ、
さらに音楽でスクリーンの中に入り込みっぱなしになるのだ。

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適宜ふんだんに挿入される音楽もたいへん美味である。
映画の中で使われている曲のサントラ盤の収録曲を本稿の一番下に挙げておいたので、
映画のムードを少しでも感じていただけるとさいわいだ。

当時兄レジーは極悪な一方でナイトクラブも経営し、
惚れこんだ米国の女性シンガーソングライターのティミ・ユーロらに歌わせるなど
(本作では英国のダフィーが“ティミ役”を演じる形になっている)、
金儲けの手段というだけでなくそういう音楽や音楽が取り巻くものを純粋に愛してもいた。
だからこそ映画後半に弟がクラブのステージで行なった俗悪パフォーマンスが許せなかったのである。

イースト・エンドが舞台で“兄弟が主役”ということで、
80年代初頭にOi!(パンク)ムーヴメントをリードしたCOCKNEY REJECTSが否応なく頭に浮かぶ。
同じくボクシングの手ほどきを受けているし、
この双子のエクストリーム&お馬鹿なヴァイオレント行動様式は、
COCKNEY REJECTSのコア・メンバー兄弟二人のやんちゃな素行とダブるのである。


ストレートなエンタテインメント性もたっぷりの中で、
人として大切な信義みたいなものも考えさせられる。
イギリス臭さ、イングランド臭さ、イースト・エンド臭さにも惚れ惚れする映画だ。

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★映画『レジェンド 狂気の美学』
2015年/イギリス、フランス/英語/131分/5.1ch/原題:Legend/日本語字幕:佐藤栄奈/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム/R15+
6月18日(土)からYEBISU GARDEN CINEMA,新宿シネマカリテほか全国ロードショー。
(C) 2015 STUDIOCANAL S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
http://www.legend-movie.net


サントラ盤の収録曲(映画で使われている曲)は以下のとおり。

[ディスク1]
1. カーター・バーウェル / レジェンド
2. ブッカー・T. &ザ・MG's / グリーン・オニオン
3. ミーターズ / シシー・ストラット
4. ロッキン・ベリーズ / ヒーズ・イン・タウン
5. ポンチョ・サンチェス / ウォーターメロン・マン
6. ハーマンズ・ハーミッツ / 朝からゴキゲン
7. ダフィー(as ティミ・ユーロ) / アー・ユー・シュア
8. ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ / ハイダウェイ
9. ディキシー・カップス / チャペル・オブ・ラヴ
10. スター・サウンド・オーケストラ / ムーングロウ
11. ヘレン・シャピロ / リトル ・ミス・ロンリー
12. ダフィー(as ティミ・ユーロ) / メイク・ザ・ワールド・ゴー・アウェイ
13. カーター・バーウェル / エレジー・フォー・ フランシス
14. サント&ジョニー / スリープ・ウォーク
15. タミー・テレル&マーヴィン・ゲイ / 恋のひとこと
16. カーター・バーウェル / ユア・レース・イズ・ラン
17. ダフィー / ホール・ロッタ・ラヴ

[ディスク2]
1. ジョージー・フェイム / ドーン・ヨーン
2. ザ・ハイ・ナンバーズ / アイム・ザ・フェイス
3. ヤードバーズ / ホワット・ドゥ・ ユー・ウォント
4. ラムゼイ・ルイス・トリオ / ジ・イン・クラウド
5. グラハム・ボンド・オーガニゼイション / ストラット・アラウンド
6. ロッド・スチュワート / ジ・アウトスカーツ・オブ・タウン
7. マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラス / マイ・ベイビー・ラヴズ・ミー
8. ライチャス・ブラザース / ハング・オン・ユー
9. ロニー・スコット / ゼイ・キャント・コンビンス・ミー
10. タビー・ヘイズ・オール・スターズ / レディ”E”
11. バート・バカラック / 恋の面影
12. アレクシス・コーナーズ・ブルース・インコーポレイテッド /アイ・ウォナ・プット・ア・タ
イガー・イン・ユア・タンク
13. スモール・フェイセス /グロウ・ユア・オウン
14. ハッティ・リトルズ / バック・イン・マイ・アームズ
15. スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ /カム・オン・ドゥ・ザ・ジャーク
16. ビリー・ヴォーン / 夏の日の恋


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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