なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

.es『曖昧の海/Ambiguity Sea』

es『曖昧の海』


2009年に大阪で結成されたデュオ・グループの“ドット・エス”が、
昨年10月11日の滋賀県近江八幡の酒游舘で行なったライヴを約39分収めた“4曲入り”CD。

今回のアルバムで、
橋本孝之はGUNJOGACRAYONの新作でも吹いていたメイン楽器のアルト・サックスの他に
改造尺八(alto bamboo saxophone)とハーモニカ、
saraはメイン楽器のピアノを演奏している。
もちろんインプロヴィゼイションだ。


たおやかと思えば烈火と化す気まぐれでそよぐ洒落た音のsaraが左。
雄々しくも物哀しい研ぎ澄まされた音の橋本が右。
つかず離れずの距離感で黙々と演奏する二人の間には冷厳な空気がゆっくりと渦巻き、
わかりやすく絡み合うパートはあまりないが、
離れてお互いが好き勝手にやっているかのようで深く有機的につながっている。
まさに交感である。
スノッブな作品とは一線を画すいい意味でのアートとして音が生きており、
まるでいわゆる男と女の大人の駆け引きみたいで、
クールなヨーロッパ映画を観ている気分にもなるのだ。

1曲目の「Senses Complex」は昨年の前作アルバム・タイトルと同じ表題で音の強弱が激しく、
曲名そのもののパフォーマンスである。
今回のアルバム・タイトル曲の2曲目も“曖昧な海”のイメージが浮かび上がる音像で、
改造尺八がほとんどサックスのような音ながら伸びやかな高音域でつつましやかにまっすぐ光を描く。
3曲目はアグレッシヴ&パーカッシヴな加速チューン。
.esの得意の“パターン”の演奏で燃える音にもかかわらずあえて3分弱に留め、
今回収録したライヴ会場の名の「酒游舘」をタイトルにし、
ほんと“酒”の中を、“游”ぐ(泳ぐ)、“舘”・・・みたいな破天荒ぶりが見事だ。
そしてラストの「Nostalgia」は橋本がハーモニカで泣き語ってブルースも感じさせるのが興味深いのであった。


“コンテンポラリー・ミュージック”という言葉が発売元の自主レーベルのリリース資料に書かれている。
いわゆるジャンルとしての“現代音楽”と和訳される言葉だが、
ジャズと現代音楽の間をおくゆかしく大胆に中央突破して視界が開かれた音楽に聞こえる。
そしてジャンルとしてだけでなく“今まさに起こっている音楽”というリアルな意味合いも感じられるのだ。

これまで.esがリリースした作品の中で最も静謐かもしれない。
でもこれまで以上にいくつものいくつもの歌が聞こえてくる。
いわゆる歌ものポピュラー・ミュージックみたいな曲を演奏してないとはいえ、
メロディを次々と紡ぐ管楽器もピアノも屹立した歌なのである。

調子のいいメッセージやテーマ、あるいはイメージ先行の音楽が目立つ。
フロイトが3つに分けた人間の自我な中で、
自我(ego)や超自我(super ego)と比べての最も深い階層にあり、
人の精神エネルギーの源泉で無意識の領域にある本能的な欲求・衝動を意味する“es”を
思わずにはいられない音楽でもある。
なぜなら理屈からかけ離れて解き放たれた音楽だから。

空間を司っていることが伝わってくる音の立体感が抜群で、
演奏している位置だけでなく指の動きまでが見えてくる音の仕上がりもパーフェクト。
ふたりの音が“クリアー・ブレンド”されて凛とした響きにただひたすら覚醒される。
至福の一枚。


★.es『曖昧の海/Ambiguity Sea』(Nomart Editions NOMART-109)CD
約39分4曲入り。
現代美術作家・稲垣元則のイメージ・ヴィジュアルを
ノマルディレクターの林聡が構築/プロデュースしたアートワークが使われている。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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