なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WHITE LUNG『Paradise』

White Lung / Paradise


カナダの西海岸ヴァンクーヴァー出身のメロディック・パンク・ロック・バンドが結成10年目の年にリリースした、
『Deep Fantasy』以来になる約2年ぶりの4作目のフル・アルバム。

2秒で視界が開けてすぐWHITE LUNG!とわかるまたまた今回も間違い無し!の作品だ。


2007年のデビュー7”EPから、
女性シンガー、女性ドラマー、男性ギタリスト(今回もベース兼任)の3人のメンバーは変わらず、
音楽性も極初期から変わってない。
3人が発する音そのものの響きと同じく確信に満ちていて何しろブレがないのだ。
体裁を気にせず、
アタマじゃなくカラダとココロからサウンドが出ている。
10年やってきても相変わらず、
いやますます瑞々しくなっているのも驚きだ。
自己保身に陥ってないからである。

The SMITHSのアップ・テンポの曲にシューゲイサーが混入してきたみたいに
音の動きが激しいリズミックな技ありギターが冴えわたる。
ドラムはひたすら前に前に走り続ける。
パンチの効いたクールなヴォーカルは
すべての問題の根源の“私とあなた”のネタをふくらませた歌詞を突き放すようにして歌う。
例によってほぼアップ・テンポの曲オンリーだが、
いい意味でワン・パターンのようで聞かせどころをバッチリ設け、
多彩なアレンジ・ワークも光るのだ。

『Noctourniquet』(2012年)のエンジニア/ミックスをはじめとして
MARS VOLTA関連作品を多数手がけてキーボードなどで参加もしてきた、
ラーズ・スタルフォースの録音とミックスとプロデュースの影響も大きそうだ。
中低音を効かせたヘヴィな音作りでぐいぐい持っていき、
ジャケットからイメージできるカラフル・サウンドが繰り広げられる。
クレジットから察するにラーズは曲作りにも関わったようで、
ドリーミーなミディアム・テンポの曲や、
多少ドラマチックな曲や、
けっこう珍しくストレートなハードコア・パンク調の曲も新鮮なのだ。

タイプは様々ながら2000年代に世界中のアンダーグラウンド・シーンから
胸のすく女性ヴォーカルの新世代パンク・ロック・バンドが同時多発的に出てきたが、
ほとんどが短命に終わっている。
プライヴェイトな事情で解散と言うバンドも多いだろうが、
そんな中でWHITE LUNGがコンスタントに活動を続けているのは、
ソングライティングやミュージシャンシップに磨きをかけていることをはじめとして、
音楽に対する情熱が加速しているからだと聴いてあらためて思う。
いわゆるインディ・ロックと呼ぶには足腰がしっかりしているし、
今でもWHITE LUNGをパンク・ロックと呼ぶことに僕はなんのためらいもない。


外に開かれたサウンドで無気力をやる気にさせるグレイト・アルバムだ。


★WHITE LUNG『Paradise』(DOMINO WIGCD373)CD
約29分10曲入り。
薄手の二つ折り紙ジャケット仕様で、
LPを縮小したデザインと思しき手書き書体の歌詞が裏面に載った四つ折りインナー封入。


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コメント

毎回になってしまいますが、個人的にはベストだと思います。
作曲面も、アレンジも表現力もますます素晴らしいです。
貫く姿勢は1枚目から変わらず、まさにパンクだと思います。
短命で終わるバンドっていうのは、少しパターンが見えてきてしまいました。

かなりの推しっぷりだったのでそそられて試しに聴いてみましたが、全曲キラーチューンと言える充実ぶりにやられてしまいました。今年リリース作の中でも指折りと言いたいくらい良かったです。

へえ、意外と行川さんっていろいろ聞いてるんですね。

書き込みありがとうございます。

>Lifeさん
ファースト・アルバムの時点で完成されていたバンドだからこそ表現力が試されるわけですが、年を重ねるごとに凄みと加速度が増していて、ベストと言ってもいいアルバムかなと。WHITE LUNGはパターンが見えてもそれを凌駕するものがありますね。

>EGさん
まさにキラーチューンの連続で金太郎飴のようで全部違う・・・リズム・パターンもさりげなくかなり曲ごとに工夫していますね。今年のベストの一つはなも間違いないです。

>じゅんさん
色々な系統のものを聴いて観るように努めています。WHITE LUNGはデビュー7"EPの頃から大好きなのです。

何度か聴きましたが、まだアルバム全体をつかみきれません。Gtのインタビューによると、各曲が同じようにならないよう意識したそうですが、それが成功しているなと感じました。あと、音が立体的になっていて驚きました。あまりパンク系では目指していない音づくりに意欲的だなと。

Voの声も力強くてセクシーでやっぱり良いなと。歌詞も社会・国家に向けて言いたいことはたくさんあるだろうに、人間の持つ”愛”だの”業”みたいなのをを歌っていて歌詞を追いながら聴いてしまいます。

ただ1点、ベースの鳴りが弱い印象を持ちました。このバンドにあったパーマネントのメンバーを見つけてほしいなと。
でも今回も震えられるアルバムで大満足です。

長文、失礼しました。

Re: タイトルなし

溝口さん、書き込みありがとうございます。
ギタリストの人の話、興味深いです。勢いでどんどん押す曲がほとんどなのは変わりないですが、途中で飽きないように、短い時間でも一気に聴いてもらいたい気持ちが強いのでしょう。立体的なのは、いわゆるノイジーな音の壁みたいなサウンドのバンドはベターっと平面的な音像になって聴いてられないCDも多いから、とも思えます。確かに新しいパーマネント・ベーシストそろそろ入れて固定してほしいですね。スタジオ録音でもギタリストが兼任しているとギターと同じラインのベースになりがちなので。
そっけないようでさりげなくセクシーなヴォーカルもこういう系統に意外とあまりないですね。歌詞は、結局、物事何でも、目の前にいる人、隣にいる人に向き合わなきゃ進まないということです。

>>>スタジオ録音でもギタリストが兼任しているとギターと同じラインのベースになりがちなので。

いやほんとその事を言いたかったのです。
ご返信いつもありがとうございます。

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プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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