なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』

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ワシントンDC出身で80年代初頭に拠点をニューヨークに移した
グルーヴィな“パンク/ハードコア/ファンク/ハード・ロック+レゲエ・バンド”、
BAD BRAINSのドキュメンタリー映画。
RAMONESの映画『Too Tough To Die』を手がけたマンディ・スタインが監督で、
『悪魔とダニエル・ジョンストン』を手がけたタイラー・ハビーが撮影している。
ちなみに原題は、
観客が暴れてDCのライヴ会場から締め出しを食らったことを歌う初期の代表曲「Banned In D.C.」のタイトルではなく、
「A Band In D.C.」である。

BAD BRAINS MAIN

何らかの事情で本国での公開も2012年まで延びたが、
ツアーを行なった2007年の撮影がメインだ。
そこに映画『アメリカン・ハードコア』を手がけたポール・ラックスマン提供のお宝を含む
昔の秘蔵ライヴ映像や(↑↓のモノクロ画像のように80年代初頭撮影と思しきものが大半)、
ポイントになるシーンにもかかわらず映像にされてない場面の画(一番↑の画像参照)を織り交ぜ、
メンバーをはじめとする関係者の発言を盛り込んでBAD BRAINSの歴史を追っていく。

H.R.(vo)という稀代のトラブル・メイカーを擁してハプニングだらけのバンドだけにネタに困らず、
いかようにも作れたと思うが、
それだけに制作者の苦労がうかがえる。
けどそもそも全部が全部カオスの歴史ではなかったわけだからバランス良くまとめ、
BAD BRAINS側としては封印しておきたいであろう“失態”“痴態”の数々もポイントになるものをピックアップし、
オーソドックスな編集で仕上げられている。
彼らをよく知らない方にも“これがBAD BRAINS!”という具合にわかりやすい内容になっており、
と同時に“現在進行形”でBAD BRAINSをリアルにとらえようとした映画である。

昔と変わってないことを示すかのようにH.R.の奇行も撮影当時のリアル・タイムの姿で映し出す。
オフ・ステージでの素行不良はともかく、
ファンが観ている前でのオン・ステージの“醜態”もいくつか容赦なくさらす。
この映画で終始浮世離れしたH.R.の笑顔を見るたびに
僕は2000年の来日時に“怪発言”を飛ばして凍りついたインタヴューの時間を思い出すのだが、
そのライヴの時の奇行をこの映画の2007年のステージ映像を観て思い出すのは僕だけではないだろう。
メンバーも激怒してH.R.を何度も怒鳴りつけるシーンも含むが、
他のシーンと同じく霞をつかんで霞を食っているようなH.R.のリアクションも見どころである。

とはいえ昔の話も外せない。
数々の名盤のレコーディング・エピソードも盛りだくさんだ。
80年代前半のハードコア・シーンで少なからずBAD BRAINSのイメージを一変させた、
ゲイのランディ“ビスケット”ターナーを擁したBIG BOYSとのトラブルに時間を割いているのも、
避けて通れない話とはいえ制作者の誠実さが見て取れる。
H.R.のホモセクシャル嫌悪ネタは僕が知っているだけでも他にあるし、
映画『デクライン』におけるFEARのリー・ヴィングがかわいく見えるほどだ。
BIG BOYSのランディが他界しているだけにBAD BRAINS側の見解を紹介する形にはなっているが、
H.R.のその問題に対する制作者の考えは、
2007年のライヴでH.R.が行なったホモセクシャル嫌悪の言葉を含むMCもこの映画に入れたところにうかがえる。

BAD BRAINS SUB1

メンバーの他に以下の豪華“コメンテイター”らが発言している。
ヘンリー・ロリンズ(S.O.A.~BLACK FLAG~ROLLINS BAND)、
イアン・マッケイ(TEEN IDLES~MINOR THREAT~FUGAZI~EVENS)、
マイク・ダイヤモンド、アダム・ヤウク、アダム・ホロヴィッツ(以上、BEASTIE BOYS)、
リック・オケイセック(CARS、プロデューサー)、
ロン・セントジャーメイン(プロデューサー)、
デイヴ・グロール(SCREAM~NIRVANA~FOO FIGHTERS)、
ライル・プレスラー(MINOR THREAT~CAROLINE Records)、
アンソニー・カウンティ(マネージャー)、
ハーレー・フラナガン(STIMULATORS~CRO-MAGS~HARLEY’S WAR)、
ジョン・ジョセフ(CRO-MAGS~BOTH WORLDS)、
ジミー・ゲシュタポ(MURPHY’S LAW)、
アンソニー・キーディス(RED HOT CHILI PEPPERS)、
ドン・レッツ(映画監督~BIG AUDIO DYNAMITE)。

昔BAD BRAINSのローディも務めていただけにジョン・ジョセフが実に的を射た発言をしていて、
ステージにおけるH.R.の態度に対して率直な意見を吐いているのも彼らしい。
ヘンリー・ロリンズは相変わらず上手いことを言っており、
“イギー・ポップと双璧”と称えつつ宗教ネタを絡めてH.R.を痛烈に言い表しているのもさすがだ。
色々な音楽ドキュメンタリー映画で顔を見せるデイヴ・グロールはここでも謙虚に語り、
嫌味なくマニアックなネタを引っ張ってきて
NIRVANAの「Smells Like Teen Spirit」のドラムの元ネタを明かすところも心憎い。

もちろん心あたたまるシーンもある。
懐かしの場所をメンバーが訪れるところなど郷愁を誘う場面はH.R.以外のメンバーがしみじみ語る。
ドクター・ノウと(g)とダリル・ジェニファー(b)は娘や息子を披露するのだが、
ドクター・ノウの母親も姿を現して
「子供の頃から知ってるわよ♪」と対面した時はH.R.も照れ笑いを隠さず“人間らしく”て楽しい。

とにかく何かと見どころだらけの映画である。
さすがBAD BRAINS、退屈はさせない。

様々な問題が“迷宮入り”のままにも見えるが、
終始“期待”を裏切らない“怪発言”が続出のH.R.がシメるラスト・シーンに
制作者の意思と一つの“結論”が表われている映画だ。


★映画『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
2012年/アメリカ映画/104分/スタンダードサイズ
7月16日(土)、渋谷HUMAXシネマにてレイトショーほか全国順次公開
© 2012 PLAIN JANE PRODUCTIONS
http://badbrains.jp/


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コメント

いつもお世話になっております。

バッド・ブレインズのすべてが分かるような良作のようですね。初期作品のみは良く聴いてた時期もあったのですが、彼らのことはほとんど未知なので観に行きます( ^ω^ )1981年4月6日のwith MDCとのツアー(オースチン、テキサス)での出来事が語られるのであればMDCファンも必見ですね❤️

Re: いつもお世話になっております。

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
>初期作品のみは良く聴いてた時期もあったのですが、彼らのことはほとんど未知なので~
という感じでしたら、ますますオススメです。PMAの幻想を抱かせず、ポジティヴな面もネガティヴな面も、けっこうありのままにバンドを捉えていますから。
テキサス州ヒューストンからはゲイがフロントマンの個性的なパンク/ハードコア・バンドが80年代初頭にいくつか出てきましたからね。

パンクな映画を紹介して頂きありがとうございます。

この映画に出てくるキーワード(pma)(ラスタ)(レゲエとゲイ)を検索して調べました所、パンクとは関係無いとは思いましたが色々な事が分かり勉強になりました。後、出演者のコメントで(DCパンクはUKパンクと違ってFUCKと人を罵ったりしない)発言があり、これは自分の求めるパンクバンドとは違うなと思いました。

Re: パンクな映画を紹介して頂きありがとうございます。

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
早速、観ていただいたようですね。

> この映画に出てくるキーワード(pma)(ラスタ)(レゲエとゲイ)を検索して調べました所、パンクとは関係無いとは思いましたが

だからこそ新しかったとも言えますし、ラスタ化して当時の元々のファンが複雑な思いを抱いたのでしょうね。
“後、出演者のコメントで(DCパンクはUKパンクと違ってFUCKと人を罵ったりしない)発言”に関しては、10月1日公開の80年代DCパンク/ハードコア・シーンのドキュメンタリー映画『SALAD DAYS』で、そういう姿勢をさらに突っ込んで描いています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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