なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MOTORHEAD『Clean Your Clock』

MOTORHEAD『Clean Your Clock』


レミー・キルミスター(vo、b、ハーモニカ)が永眠する1ヶ月ほど前にあたる昨年11月20/21日に
ドイツのミュンヘンで行なわれたステージを収めたオフィシャル・ライヴ盤。
数種類のフォーマットでリリースされているが、
僕はCDとDVD(日本製のDVDプレイヤーで再生可能)の2枚組のものを買った。
どちらもギター・ソロ・コーナーを含めて16トラック入りである。


CDは曲間のMCやアンコール前の時間をDVDより多少カットして約74分に編集されている。
ライヴ自体は超絶好調!とは言わないまでもまずまずのプレイ。
CDでサウンドだけに集中すれば、MOTORHEAD健在!と言ってもいいパフォーマンスが楽しめる。
だがDVDで映像を観るとこのライヴの印象がずいぶん違ってくる。
いつもと同じ調子のパフォーマンスを聴かせるべく見せるべく、
レミーがいかに苦闘していたかがわかる。
もちろんレミーのことだから苦しそうなそぶりは見せないし、
顔をゆがめて眉間にしわ寄せていかにも“気合入ってるぜ!”と言いたげな表情を見せつけもしない。
クールな佇まいだからこそ逆にリアルな生きるか死ぬかの“ドキュメンタリー作品”なのである。


序盤と終盤には『Overkill』~『Ace Of Spades』の頃の初期の人気曲を多数持ってきているが、
昨夏の最終作の『Bad Magic』やその前の『Aftershock』の曲もやり、
90年代の曲がなくて80年代の渋い曲が目立つセットリスト。
ある程度MOTORHEADを聴きこんでいないと出会わないであろう曲も多いのは、
ファンに対して誠実だからこそファンに媚びないMOTORHEADならではだが、
“本当”に覚悟を決めていたレミーが悔いのないようにやっておきたい曲で固めたように思える。

81年のライヴ盤『No Sleep 'til Hammersmith』のジャケットみたいな“爆撃機”がステージ上方に設置された
万全のステージ・セットで、
ときおり超満員の観客を映し出しつつオーソドックスに様々な角度からMOTORHEADをとらえている。
もちろんレミーを特別扱いはせず、
メンバー3人が均等のMOTORHEADの作品として編集されたことが
最期までMOTORHEADを生き抜いたレミーに対する最高のリスペクトになっている。

それでもヴォーカルをとっているだけに当然レミーがたくさんクローズアップされる。

ジャケットには精悍に見える一瞬の画が使われているが、
この1カ月後に他界した情報がなくてもこのステージのレミーが病弱状態ということが怖いほど伝わってくる。
痛々しくて見ていられないほどだからこそ目が離せない。
見ていて胃が痛くなり目から熱いものがこみあげてくるのを押さえることができない。

もともとステージ上を動きまわる人ではないがマイク・スタンドの前からほとんど動かない。
体が言うことを聞かない中でまさに最後の力を振り絞っているかのようで、
“最期”までベストのステージに挑むレミー。
ガリガリに痩せてやつれて虚空を見つめながら歌っている様相なのだが、
鬼気迫る形相だ。
特に「Orgasmatron」を歌うシーンは照明の関係で死相が現れているように見え、
ゆっくりしたテンポの曲ということも相まってレミーの歌声も地獄からのうめきに聞こえる。
「Doctor Rock」をやる前に、
このライヴの10日ほど前に亡くなった昔のドラマーのフィルシー・アニマル・テイラーに捧げる、
というようなMCを言い忘れそうになったシーンも意味深だ。
フィル・キャンベル(g)に促されたかのような感じで曲をやる前に付け加えたが、
プレイに熱中していて失念していたのか“まもなく後を追う予感”がして口にしたくなかったのか、
色々と邪推してしまった。

アンコールの1曲目の「Whorehouse Blues」では、
フィルとミッキー・ディー(ds、g)がステージ前方で椅子に座ってアコースティック・ギターを弾き、
レミーが立ってヴォーカルとハーモニカを担当。
フィル(31年)もミッキー(23年)も長年連れ添ってきただけに、
正確な体調を知らされてなかったとしてもレミーが尋常ならざる状態ということは感じていたはずだから、
レミーと同じく“覚悟”を決めていたと思う。
それでも平静を保ってステージで演奏せざるを得ない。
一生懸命演奏してレミーを盛り立てるしかない。
二人がいつもどおりの元気なパフォーマンスというのがまたやるせないのだ。

勘のいい観客も察していたであろう。
だから固唾を呑んで見守るしかない複雑な気持ちでノっていた様子が伝わってくる。

だが最後の「Overkill」ではレミーが百万年生きるようにも映る。
仙人のようにも見える。

目にしたくないファンの方もいるだろうが、
ファンの方は避けて通れない生々しすぎる映像作品だ。


約23分の追加映像はライヴ前後の時期に行なったと思しき3人のメンバー別々のインタヴューを中心に構成。
その合間にMOTORHEADの2013と2014年のライヴ映像もちょろりと入り、
『Bad Magic』収録曲の「When The Sky Comes Looking For You」「Thunder & Lightning」「Electricity」の
ミュージック・ヴィデオの一部も挟み込み、
ロンドンでのリハーサルも少々見られ、
GIRLSCHOOLの話とライヴ少々やSAXONのビフ・バイフォードの話とライヴ少々も間に入れられている。


★MOTORHEAD『Clean Your Clock』(UDR UDR062P04)CD+DVD
開くとステージ上の3人が現れる“飛び出す絵本”みたいなポップ・アップ・アート作りの
二つ折り紙ジャケット仕様で、
CDとDVDが各々別のデザインのペーパースリーヴに収納され、
メンバー3人が均等に扱われている構成の32ページの写真集も封入されている。


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Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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