なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』(デジタル・リマスタリング版)

キン・ザ・ザ_main


旧ソ連とジョージア(日本での以前の呼び名は“グルジア”)共和国による製作の1986年のカルト映画。
へんちくりんすぎて厚い支持を集め続けるリアル・ファンタジー“怪映画”が、
このたびデジタル・リマスタリング版でより生々しく腰砕けで迫りくる。


冬のモスクワの街頭で出会ったばかりの技師の“おじさん”と“バイオリン弾き”の青年が、
謎の砂漠に突如飛ばされる。
状況を把握できない状態でヘタリ込む二人の前に釣鐘型の“小型飛行物体”が着陸し、
劇場のスクリーンから酸っぱい臭いが匂ってくるほどルンペンな風体の二人が降り立ってくる。
怪しい二人は「クー」としか言わないが、
“おじさん”と“バイオリン弾き”はワープした砂漠が地球以外の惑星であることを察知。
怪しい二人が乗ってきた“小型飛行物体”が宇宙船ではないかと推測し、
妙ちくりんな“アクセサリー”を付けさせられつつも乗せてもらって“脱出”を試みる。
だが“おじさん”がタバコを点けるマッチがこの惑星では大変な貴重品で価値があり“使える”ことを察知し、
さらなる気の抜けたカオスの旅に突入するのであった。

キン・ザ・ザ_03050111

映画も空気感で決まることがあらためてわかる作品だ。
映画全体を覆うまったりした空気感が異様なほど生ぬるくてシケている。
クラシック系で有名なジョージアの作曲家ギヤ・カンチェリによる脱力ミュージックの挿入も、
“間抜け美”を高めている。
投げ銭を受け取って地球に帰る燃料費の足しにすべく、
とんまな芸人と化した“おじさん”と“ヴァイオリン弾き”が檻の中で歌って「ママ~ママ~♪」と歌う曲も、
救いを求める童謡みたいで切ない。

笑い声が漏れそうでなかなか漏れないモヤモヤしたシーンが続き、
煙に巻かれたようにあれよあれよといううちに135分が過ぎていく。
「クー」と言いながらやる惑星の挨拶のお辞儀(↓の画像参照)をはじめとして、
ひとつひとつの動きがいちいちおかしくてたまらない。
宇宙船の外装と内装をはじめとして、
チープなディテールにこだわった精巧な作りの原始美も妙に泣かせる。
今回の上映に際して『スター・ウォーズ』と並び称する宣伝コピーもあるが、
当時の米国とソ連の様々点での違いも見えてくるようで面白い。
二人がワープした惑星は砂漠の中で集落や街が点在しているが、
その様が廃墟と楽園の両極端だったりするのも興味深い。

キン・ザ・ザ_01515900

馬鹿馬鹿しさが目立ってかなり注意して見ていないと気づきにくいほど、
民族や差別関係をはじめとして色々と政治的/社会的な問題を薄っすらと刷り込んでいるかのような映画である。
表現の自由云々の規制等で当時ストレートな主張の映画製作が難しかったと思われるが、
そういう本当に締めつけられたギリギリの状況下ならではの“透き間を飄々とすり抜けた表現”が
見事としか言いようがない。
お馬鹿に見えて根がハングリーなのだ。
ゲオルギー・ダネリヤ監督がジョージア出身で、
この映画を撮影した頃のジョージアが当時強権的姿勢だったソ連の構成国の一つだったことを思えば
色々と深読みができる。
2000年代以降もジョージアとロシアの間に紛争があったことを思えば現代にも通じる映画でもあり、
普遍的な視点でも色々考えさせられする。

けど、ただひたすらナンセンスな映画としても楽しめる作品だ。
この世のあらゆる理屈をくすぐり倒すように翻弄する。
「クー」と言えば平和になるほど世界は甘くはないが、
「クー」と言って謙虚にお辞儀をすればどーにかなる気もしてくる。

ためになる映画ではないかもしれないし、
世界中が感動する映画ではないかもしれない。
だが最後に感動するのは僕だけではないだろう。

滑稽であれ。


★映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』
1986年/ソ連・ジョージア共和国/カラー/デジタル/135分
8月20日(土)新宿シネマカリテにてレイトショー。他の地区でも順次公開。
© Mosfilm Cinema Concern, 1986
www.kin-dza-dza-kuu.com
PS:“バイオリン弾き”の青年役を務めたレヴァン・ガブリアゼは現在映画監督としても活躍し、
日本でも『エターナル 奇蹟の出会い』や『アンフレンデッド』が公開されている。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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