なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『オールディックフォギー/歯車にまどわされて』

OLE main


静岡県沼津市で“母体”が生まれ、
2003年に東京で結成されたバンドのOLEDICKFOGGYのドキュメンタリー映画。
昨夏から今春にかけて撮影された映像でほぼ占められている。

OLEDICKFOGGYは日本語の歌を聴かせる6人編成のロック・バンドだが、
マンドリン、ウッド・ベース、バンジョー、アコーディオンも演奏し、
いわゆる“ラスティック・ストンプ”のスタイルのサウンドだ。
東京スカンクス[TOK¥O $KUNX]の流れも感じさせ、
そのフロントマンのダビすけによるDOLL誌の連載にもOLEDICKFOGGYは登場していた。
ただし根はパンク・ロックでクラストともニアミスしてきたバンドである。

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監督・撮影・編集は川口潤。
『77BOADRUM』(2008 年)、bloodthirsty butchersの『kocorono』(2011年)、
『山口冨士夫 / 皆殺しのバラード』(2014年)を監督し、
『GET ACTION!!』(2014年)の撮影/編集も手掛けてきた奇才だけに、
ふつうの音楽ドキュメンタリーで終わるわけはない。
OLEDICKFOGGYのキャラと共振し、
いまだかつて観たことのない映画に仕上がっている。

音楽ものに限らずドキュメンタリー映画というと“不良自慢”や“不幸自慢”が付きものだが、
そういった類いのネタを売りにしてないバンドということを強みにし、
ふつうの庶民目線でじっくりとOLEDICKFOGGYの滑稽なソウルを炙り出している。
語るシーンは文章で読めば済むようなことも多いし馴れ合いと言い分けに終始しがちだから、
バンドマンや関係者のコメント撮りは皆無でメンバーのインタヴューすらもほとんどない。
飄々と真剣なOLEDICKFOGGYの佇まいでひたすら持っていく。

OLE4.jpg

曲作り、練習、ライヴ、レコーディング、ツアー、金銭面を含むシビアな打ち合わせなどの、
バンド・ライフを撮り倒す。
と同時に、食うための仕事、メンバーのお宅訪問、結婚、病院、出産などの、
メンバーのプライヴェイトな日常ライフの“小トピック”も挿入。
となるとヘタしたら小ぢんまりとまとまってしまいそうなものだが。
ちょいエッチなスパイスを2~3粒ふりかけつつ、
酒とタバコとパチンコ(一部のメンバー限定)といった昭和の風物詩に興じる姿を随所にちりばめ、
豪放で和の情趣の侘び寂びの効いたドキュメンタリーに仕上がっている。

川口監督ならではの編集と撮影でOLEDICKFOGGYの肝が全開だ。
映画に限らず音楽でも雑誌でも最近目立つスタイリッシュに整然とまとめる合理主義の作りに中指を立て、
小ネタをたっぷり盛り込んでOLEDICKFOGGYの“雑食ワールド”を浮き彫りにしている。
監督は色々な映画を観ていて最近だと『AMY エイミー』も鑑賞されたらしく、
編集のポイントをはじめとして内外の無数の映画から触発されて吸収していることが想像できる。
なにしろ冗長な映画が目立つ最近の邦画とは完全に一線を画す大胆かつ丁寧な編集方法がアッパレなのだ。
バンドの爪と髪の先から心の毛穴まで描写したみたいな内容盛り沢山の作りで
無駄なシーンだらけになりかねない映像を要所を押さえまくりの簡潔な編集で引き締めている。
バンドを適度に突き放しつつカメラはメンバーの心にさりげなく踏み込んでぐいぐい迫り、
絶妙の距離感は見事と言う他ない。
メンバー以外の事物の映像も実にポイントを絞って挿入して山椒みたいな味わいをプラスしている。

OLE増子NAOKI

ドキュメンタリー映画には異例の(ほぼ)フィクションのシーンが随所に挿入されているのも特筆したい。
演出や演技によって作品のリアリティが増すのはグレイトな劇映画を観ればわかろうというものだ。
OLEDICKFOGGYの新作の曲「シラフのうちに」のミュージック・ヴィデオの“拡大ヴァージョン”と言える、
伊藤雄和(ヴォーカル、マンドリン)が運転手にふんしたタクシー内でショート・ドラマが繰り広げられる。
渋川清彦、仲野茂(アナーキー)+中尊寺まい(ベッド・イン)、増子直純(怒髪天)+NAOKI(SA)、
Tezuka Takehito(LINK 13)、HAYATO(HAYATO(CROCODILE COX AND THE DISASTER)が、
乗客役で名演。
みんな“芸人”ぶりを発揮し、
伊藤と絡んでバンド活動にまつわるアレコレを醸し出す。
ナンセンスの中にこそ眠っている真実みたいなもんを漫才みたいなトークで掘り起こし、
伊藤がゆっくりと目覚めていく過程がさりげなく鮮やかだ。

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僕は昔OLEDICKFOGGYを東京・武蔵境のライヴ・ハウスのSTATTOで観たことがある。
90~2000年代の東京のポリティカルなパンク・シーンの一つを作り上げたクラスト・コア・バンドの、
BATTLE OF DISARMが企画したシリーズ・ギグ“UNGOVERNABLE FORCE”に出た時だ。
BATTLE OF DISARM のヴォーカルが仕切っていた自主レーベルのD.I.Y.レコードが
OLEDICKFOGGYの7”レコードをリリースした2008年前後のことだと思う。
ちなみに今回の映画のタイトルになったフレーズの“歯車にまどわされて”は
今年出した最新アルバム『グッド・バイ』の収録曲のタイトルでもあるが、
もともと「歯車にまどわされて」という曲はその2008年のレコードに入れていた初期の代表曲だ。
話を戻すとそのライヴでは狭いステージに無茶なほどメンバーがひしめいてプレイし、
クラスト系のハードコア・パンク・バンド中心の出演陣の中で浮きまくっていたことで印象に残っていた。
そういう“お里”を示すべく今回の撮影時期にバンドとは別に撮ったポリティカルな要素の“映像”を、
今回の映画で監督がさりげなく挿入もしている。


OLEDICKFOGGYのファンの方は観たらますます好きになることは間違いないし、
OLEDICKFOGGYにあまり興味がない方も観たら好きになること間違いなしの映画だ。

ps
この文章の“続き”は映画のパンフレット、そしてwebDICEのインタヴューで。


★映画『オールディックフォギー/歯車にまどわされて』
2016年/日本/99分/
8月11日(木・祝)より東京・シネマート新宿にてロードショー。以降、各地で公開。
http://oledickfoggy-movie.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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