なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ミリキタニの猫〈特別篇〉』

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ニューヨーク・シティの路上で絵を描いていたアーティストである、
1920年生まれの“日系アメリカ人”ジミー・ツトム・ミリキタニのドキュメンタリー映画。
このたび、
2006年公開の話題作『ミリキタニの猫』(新日本語字幕)と
補足的な新作短編『ミリキタニの記憶』の同時上映でロードショーとなる。

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『ミリキタニの猫』の本編は、
家の近くの路上で2001年の元旦に出会ったジミーの猫の絵を気に入ったことがきっかけで深く考えずに撮り始め、
こうやって映画化したリンダ・ハッテンドーフが監督・プロデュース・撮影・編集。
ジミーはいわゆるホームレスながら基本的に他人の施しを受けずに絵で食っていた。
米国政府等に対する不信感もあってずっと社会保障を拒絶し、
生粋のアーティストならではの頑固者ながら“個”であり“孤”ゆえに、
“家”の近くの店の人などと仲良くやっていたようだ。
とはいえ80歳を越える高齢ゆえの路上生活を監督は心配し、
そんな中でジミーが生活するソーホーの路上の近くで“9.11”のカオスが起き、
粉塵の中でもなお絵を描いているジミーをリンダは熱心に“口説き”、
ジミーは彼女の部屋を“間借り”して生活するようになる。

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説明的な作りを極力排してダイレクトにジミーを撮り、
ジミーの喜怒哀楽の魅力を74分に編集した手腕が見事だ。
インタヴューみたいな発言にも頼ってないからこそ生々しい息吹に貫かれている。
そんな中でニューヨークに来る前の最低限のジミーの人生もナチュラルにたどっている。

カリフォルニア生まれながらまもなく父の故郷の広島県に移住したが、
日本の芸術を世界に紹介するアーティストを志して1940年前後に米国シアトルに移住。
だが1941年12月の日米開戦で翌年2月から捕虜収容所生活を送っていくが、
1945年8月に米軍が広島に原爆を投下してジミーは兄や親戚、小学校時代の同級生の多数を失う。
終戦後も苦労を重ねて米国内を転々として80年代後半からニューヨークでの路上生活を始めるも
絵画に対する情熱は増す一方で、
捨ててあったカレンダーの裏などの“廃材”も活用して描き続けた。

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日本と米国の狭間で、
戦争と“ワールド・ピース”の狭間で生きてきたジミーの絵の主なテーマは、
捕虜収容所生活、
育った故郷の風景や原爆を含む広島、
そして猫であった。

ジミーと監督の共同生活シーンも見どころで、
ジミーが監督を娘のように思っている。
不屈の強靭な精神性と背中合わせでの人間臭いキャラがこぼれ落ちる。

ジミーは自分がアーティストであることを強調する。
どんな状況になろうと崩さないプライドの高さ、
いやプライドの“強さ”に圧倒される。

本物のアーティストはいつだって一人で戦い、
最終的には一人で闘う。
2012年に92歳で他界してからも作品に宿っているそんな意思と意志、
そして絵心がスクリーンいっぱいに広がっていく映画だ。

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新作短編の『ミリキタニの記憶』の方は、
『ミリキタニの猫』の撮影が始まった2001年以前のジミーを知る人々(たぶん全員が日本人)に話を訊き、
ジミーの昔の写真や描いた絵も挿入していく映画。
音楽系カメラマンの佐藤哲郎を含む二人は90年代のジミーを振り返り、
広島に住む2つの家族がジミーを語る。
こちらでも本音の人間ジミーが炙り出されていくのであった。


★映画『ミリキタニの猫〈特別篇〉』
(1) 『ミリキタニの猫』
[2006年/アメリカ/74分/監督 リンダ・ハッテンドーフ]
同時上映
(2) 新作短編『ミリキタニの記憶』
[2016年/日本/21分/監督 Masa]
8月27日(土)〜渋谷・ユーロスペースにてロードショー。以降、順次、他の地域でも公開予定。
http://nekonomirikitani.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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