なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SLAYER『World Painted Blood』

SLAYER.jpg


本国アメリカなどでは昨秋リリースした作品だから今さらでもあるが、
いつでもどこで買えるCDは後回しになりがちでやっと購入。
オリジナル・アルバムとしては10作目にあたる。
METALLICAの『Death Magnetic』(2008年)を録音したグレッグ・フィデルマンがプロデュース。
長年SLAYERの片腕であり続けたあとに『Death Magnetic』をプロデュースしたリック・ルービンは、
エグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされているから最終チェックをした模様である。


当然のことながら今回も横綱相撲であるが、
スラッシュ・メタルだかといって速い曲ばかりでもないのは周知の事実。
速いパートが目立つ点ではマスターピースの『Reign In Blood』(86年)に通じるが、
あちこちに“ブレイク”を入れるから絶対的な加速度に貫かれているわけではない。

芸風を変えぬ帝王として知られるが、
SLAYERにしたって必ずしも作品ごとに同じことをやっているわけでもない。
MOTORHEADやRAMONESが同じアルバムを作り続けてないのと同じ意識だろう。
おのれを焼き直さぬために毎回面白い挑戦をしている。

1曲目から途中でラップともトーキング・ヴォーカルとも言いかねるストレンジなヴォーカルが入り、
しばし“小休止”するのも御愛嬌。
今回のドラムは80年代初頭のUSハードコアみたいなドライな音色だし、
軽いとは言わないがビートの抜けが良くも硬くてリズム・パターンも一様ではない。
ヴォーカルもひっくるめて一人一人のメンバーの響きに個性をもっていれば、
よほどブレたことをしない限り自分らの世界に持っていける自信があってこそである。

ヘヴィ・メタル界をはじめとして、
今やもっと激しい曲のバンドはたくさん活動している。
だがSLAYERはひとつひとつの音の説得力が圧倒的に違う。
“一音一殺”みたいな問答無用のサウンドは、
“SLAYER”というバンド名を背負った者たちならではの殺傷力に磨きがかけられている。
そんなにボリュームを上げなくても“耳痛”がする。

両脇のギターが壁を作っているわけではなく音は極めてストイック。
だからこそ生み出される重苦しい殺戮音響である。
金も時間もかけられるとはいえ曲作りも音作りも平板じゃない。
聴くたびに発見がある。
ゆえにヘヴィ・メタル・ファン以外の様々な層にもアピールする。
媚びず驕らず内向きにならず、
先駆者だからこそ自分らが築いた様式に甘えぬ。

音の強度がすべてのバンドには取ってつけた言い訳じみたコンセプトはいらない。
音そのもので有無を言わさぬ不穏な物語を展開して絞殺する。

そんなバンドは能書きを必要としないが、
『World Painted Blood』の歌詞も“帝王学”を体得したバンドならではの深みを呈している。
むろん例によって基本的にリアリスティック。
特に「Americon」が生々しい。
SLAYERが住むアメリカ合衆国に対して自分らを省みるような視座も交えて描き出している。


約40分11曲入りという長さも潔いアルバムである。


●SLAYER『World Painted Blood』(AMERICAN 88697 61491 2)CD
8ページのブックレット付。
ぼくが買ったCDのプラケースは“Sony Music”と刻印され、
提携企業を明らかにさせたものとはいえ妙に興味深い。
“200 RPM 500”というCD盤面の速度表記も妙に納得させられるデザインで良し。


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コメント

こんにちは。行川さんに質問があります。
ぼくはMASONNAがすごく好きなのですが、MASONNAが世界中のハードコアを聴きこみまくってるという話を聞きました。
具体的にMASONNAが聴いてるハードコアバンドをもし知っているのであれば教えて下さい。行川さんなら知ってるかも!と思いコメントしました。

よろしくお願いします

2010 SECOND IMPACT様
書き込みありがとうございます。
MASONNAのマゾ・ヤマザキくんからは、サイケを聴きまくっているという話は聞いたことがありますが、世界中のハードコアを聴きこみまくっているという話は、ぼくは聞いたことないです。ただしもう何年も彼と話をしていないので、最近そういう世界中のハードコアを聴いている可能性はあります。
ちなみに初期のMASONNAは、NAPALM DEATHなどのグラインド・コアにインスパイアされて、そういう感じのことをノイズでやるという意識もあったと言っていました。
ここ数年マゾ・ヤマザキくんはガレージ・サイケ・パンク・バンドのACID EATERでの活動が目立ちますから、そういう感じの音楽を最近よく聴いているのかもしれません。
あまりお役に立たなくて申し訳ないです。

そうですか~。わかりました!わざわざどうもありがとうございました。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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