なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

柳川芳命(Yanagawa Homei)『2016』

柳川芳命


70年代後半から即興演奏を始め、
90年以降はDISLOCATIONでの活動を含む多彩な展開を続けている名古屋拠点の音楽家、
柳川芳命(アルト・サックス)が自身のレーベルの極音舎から出した10年ぶりの9作目。
鷹揚としたサックスの表情をはじめとして、
ホディ&ソウルの芯を確実にあっためるCDである。

一か月以内にレコーディングした以下の4つのセッションが約77分のCDの中に収められている。
①「Naked Soul」  with 新井田文悟(el-b)+藤田亮(ds)
 2016.9.7 名古屋御器所なんやのライブ録音
②「Hyper Fuetaico」 with Meg(ds)
 2016.8.23 スタジオ録音
③「Dual Expansion」 with 依田拓(per./electronics)
 2016.8.20 名古屋御器所なんやでのライブ録音
④「Break Open」 with 佐藤シゲル(el-b/b大正琴)+石井正典(ds)
 2016.9.14 名古屋鶴舞K.D.Japonでのライブ録音


柳川といえば、
若松孝二監督の映画『エンドレス・ワルツ』(94年)で町田康が演じた阿部薫のサックスの吹替を担当した人だが、
このCDは全編インプロヴィゼイションながら旋律のはっきりしたメロディアスなサックスがほとんどだから、
阿部本人の大半の演奏より取っつきやすく入り込みやすい。

誰が相手であろうと、
たくましく骨太で伸びやかで大らかで寛大な音をブロウする。
でかい演奏なのだ、
と同時にやはり相手によって演奏のトーンが異なる。
どうけしかけられようがあまり意に介せず飄々と悠然と我が道を吹きまくり続けながらも
交感していくうちに、
共演ミュージシャンに焚きつけられているようにも聞こえるが、
たゆたう歌心は持続する意思そのものだ。


①はリズム隊が、
不失者の静かな曲のような調子で始まりつつ、
『Earthbound』と『Larks' Tongues In Aspic』の間のKING CRIMSONまでをもイメージさせていく。
根がパンク/ハードコア(だがたいへんデリケイト)のドラムが攻める“ロックンロール”でビートが転がり、
滑らかに走るベースもドラムもよく歌っていて全パートのハーモニーで和の情趣を編んでゆく。
市川崑などの日本映画にも合いそうなパフォーマンスだ。

②は男と女の駆け引きみたいな念を帯び、
何食わぬ顔で気持ち良さ気に吹き続けて疾走する柳川に対し、
Megがスネアで噛みついてキック・ドラムで文字通り蹴り込んでいくみたいな演奏である。
ゴツゴツしたビートは本作の中で一番ラフかつ豪快な硬いドラムで、
対照的にサックスは一番艶っぽい音色ではないだろうか。

③はジャズを完全に逸脱して日本の祭り太鼓にも憑かれたかのようなリズムの原始ビートが野蛮で素敵である。
途中から声みたいな音声も聞こえてくるが、
時にインダストリアルな“飛び道具”のエレクトロニクスの音も戦慄が走るハマりようで、
50~60年代と80年代の日本映画の融合みたいな趣。
次々に仕掛けられて否応なくサックスは灼熱と化し、
本作の中で一番アグレッシヴかつ混沌としたバトルが楽しめる。

④はこのCDで一番フリー・ジャズのイメージに近い演奏だが、
ブレイク・タイムも設けられて静かなパートからも哀愁と頓智の味が滲み出ている。
クレツマーなどの民俗音楽のメロディとリズムも交錯しながらバンカラにスウィングしていくのであった。

4つのセッションの流れが“起承転結”のように聞こえ、
聴くたびに違った情景と心情が見えてくるひとつのアルバムとして絶妙にまとめられている。
柳川自身が手掛けたレコーディングとマスタリングで奥行き十分の音の仕上がりも特筆したい。


★柳川芳命(Yanagawa Homei)『2016』(GOKUONSYA GO-09)CD
二つ折りのペーパー・スリーヴ仕様。
http://raindrops.rgr.jp/TandF/index.html


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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