なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』

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大御所ケヴィン・コスナーが主演を務めて
ヴァイオレントな行動の中で感情を押し殺し震わせるド迫力かつ重厚な演技を見せ、
ロンドンをメイン舞台にした英国/米国の合作映画。
スパイものや国際政治ものでもあるし派手なアクション・シーンやミサイル発射/爆発シーンも含むが、
一般社会とはかけ離れた人間でも持ち得る家族愛を嫌味なく絡め、
人物の感情の微妙な揺れをしっかりと描きこんだエンタテインメント人間ドラマだ。
俳優全員名演で、
監督は『THE ICEMAN 氷の処刑人』(2012年)を手掛けたアリエル・ヴロメンである。


CIAロンドン支局のエージェントの男が重大な極秘任務の最中に死亡した。
彼は米軍の核ミサイルさえも遠隔操作可能なプログラムを開発した謎のハッカーの居場所を知る唯一の人物だった。
巨大なテロを阻止するために謎のハッカーを捜し出す最後の手段は、
殺されたCIAの男の記憶を脳手術によって他人に移植すること。
まもなく処刑される人間ゆえ手術に失敗しても問題無しみたいにその移植相手に選ばれたのは、
幼い頃に父親から受けた虐待が原因で人間的な感情や感覚を失ってしまった凶悪な死刑囚ジェリコ。
手術は成功するが、ロンドンの街へ逃走したジェリコは、
我が物顔で極悪な自分自身と正義感あふれるビルの“2人の記憶”の間で引き裂かれながら、
テロリストとの壮絶な闘いに巻き込まれていく。

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序盤で派手な単細胞アクション映画と思っていた僕もまもなくぐいぐい引き込まれていった。

失うものは何もねえ!どいつもこいつもブッ殺してやる!ばかりに殺伐とした天涯孤独の極悪男が、
妻と娘の愛に包まれた生活を送っていたCIAの男の記憶を脳に埋め込まれ、
二人の人格の間で葛藤と軋轢を繰り返して苦悩する姿がこの映画の肝だ。
親に感情を殺されて憎しみに満ち満ちた人間の精神の苦闘が、
粗暴極まりない言動の中から命を削って紡ぎ出すように描かれていく過程が生々しい。
いわゆる更生の類いとは違うが、
いわゆる更生もおのれのはらわたをズタズタに切り裂くぐらいの覚悟がないとできないとも思わされる。
そこに世界情勢を一変させる政治的な行動や人間同士が向き合い“ふれあい”を絡めていく
スリリングかつエモーショナルな展開に目が離せなくなる。

計算高いうわっツラのやさしさなんてなんの意味もない。
極悪男のハートに火を点けたのは、
極悪男の脳に記憶を埋め込まれた男の妻のギリギリの行動もさることながら、
極悪男の心が実父のものと悟って極悪男を父親のように慕う娘の無邪気な行動が大きい。
ここから先のストーリーを書くのは野暮ってもんだろう。

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2010年代に入ってまた冷戦化しつつある米国とロシアをはじめとする冷厳な国際関係に加え、
やさしさとエゴが殺し合う冷厳な人間関係も炙り出す。
この映画の主人公が一匹狼というところも大切だ。
信じる者がいない人間は、
仲良く手を取り合って“共犯者”になって繰り広げる“愛と平和の大合唱”なんか知ったこっちゃない。
でも調子いいこと言っていても結局は自分の身の回り30センチ以内が良ければそれでいい“善人”より、
百万倍誠実だ。

全員死ね!と思っているような人間が世界を救うこともありえる。
命がけであれば愛が世界を救うこともありえる。
そんな幻想を信じてみたくもなるストロング・スタイルの映画だ。


★映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』
2015年/イギリス・アメリカ/113分
ゲイリー・オールドマン(『ダークナイト』『裏切りのサーカス』)
トミー・リー・ジョーンズ(『ノーカントリー』『ジェイソン・ボーン』)
ライアン・レイノルズ(『デッドプール』)
ガル・ガドット(『ワンダーウーマン』)
2月25日(土)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー。
© 2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.
criminal-movie.jp


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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