なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RED KRAYOLA with ART & LANGUAGE『Five American Portraits』

レッド・クレイオラpcd25108


1週間後には66回目の誕生日を迎える御大メイヨ・トンプソン(vo、g、p)のRED KRAYOLAの新作。
いや正確にはRED KRAYOLA with ART & LANGUAGE名義である。
RED KRAYOLAも固定メンバーでのバンドとは言いがたい状態だが、
これはもっと自由な形態でのロンドン録音。
音楽っていいなぁとあらためて思わせてくれるし、
音楽の深い可能性をあらためて思い知らされるアルバムだ。


RED KRAYOLAはRED CRAYOLAとして60年代後半にスタート。
初期のサウンドはテキサス・サイケデリックの代表ともされるが、
70年代後半から80年代前半は英国のパンク/ニューウェイヴ・シーンと絡み、
90年代以降は米国シカゴを中心に音楽シーンの先鋭と絡み続けている。

パンクとも接点を持つ。
RED CRAYOLA時代の名曲「Hurricane Fighter Plane」はCRAMPSやDWARVESがカヴァー。
5月に東京公演を行なうSTIFF LITTLE FINGERSの79年のファースト『Inflammable Material』を、
メイヨ・トンプソンはプロデュースもしている。

RED KRAYOLAも何度か日本ツアーを行なっており、
元MINUTEMENのジョージーハーレーがドラムの時も、
TORTOISEのジョン・マッケンタイアがドラムの前回の時も、
ほんとびっくりするほどパンク・ロックで感動した。
後者のライヴ・レヴューで“老いてなお盛ん”みたいなこと書いた記憶もあるが、
パンク・ロックな音じゃないとはいえ生き生きした今回のアルバムもまさに!なのであった。


12分強の曲と15分強の曲を含むトータル約44分5曲入りの『Five American Portraits』は、
45年間寝かせたワインみたいな芳醇なサウンドは豊穣の極みである。
全体的にはピアノが目立ち、
そこにドラムが絡んでギターはさりげなく入り、
曲によってはベースがファンキーに鳴ってホーンも差し込まれる極々シンプルな作り。
誤解を恐れずに言えば“ポップ”だ。

以下の“アメリカン5人”の肖像をネタにしたアルバムである。
★ワイル・E・コヨーテ(ワーナー・ブラザーズのアニメのキャラクター)
★ジョージ・W・ブッシュ大統領(息子の方。テキサス州知事出身)
★ジミー・カーター大統領(同じく南部のジョージア州知事の後77~81年に大統領職。ノーベル平和賞も受賞)
★ジョン・ウェイン(MDCも「John Wayne Was A Nazi」で攻撃した保守派“カウボーイ”俳優)
★アド・ラインハート(20世紀の抽象芸術家)

5人の“人生”が刻み込まれた顔の凸凹を音で描写すべく昔のポピュラーな音楽を下敷きに、
ART & LANGUAGEとRED KRAYOLAが作詞と作曲を行なった。
ブックレットにリストが載っている“出典”が興味深い。
★ボ・ディドリーの「Road Runner」
★メイヨが生まれたテキサスの“州歌”の「Texas, Our Texas」
★アメリカ民謡「I've Been Working on the Railroad(線路は続くよどこまでも)」を元にしたテキサス大学の校歌の「The Eye Of Texas」
★ジョージアの“州歌”の「Georgia On My Mind」
★19世紀半ばに南北戦争時に南部のアメリカ連合国軍の行進歌にもなった大衆歌謡曲の「Dixie’s Land」、
★ジョン・ウェイン主演の映画『捜索者』の音楽の「The Searchers」、
★ゴスペルの「Just A Closer Walk With Thee」
★モーツァアルトの「ピアノ・ソナタ第六番」
★ROLLING STONESの「Paint It Black」

メロディがはっきりしているから曲は決して小難しくはなくポピュラリティは高いが、
ファンクもジャズも現代音楽もゴスペルもアメリカの民謡もダシにしているからアレンジは実にストレンジ。
だからこそ信じられないほど妙味に富んでいる。


メイヨ・トンプソンの他には、
SST RecordsがリリースしていたSLOVENLYの元メンバーであるトム・ワトソン(g)や、
ジム・オルークといったRED KRAYOLAでお馴染みの面々も参加した。
アレックス・ダウザー(ds)はVICTIMというヘヴィ・メタル・バンドをやっている人らしいが、
昨秋はレバノンのベイルートで十代のパレスチナ難民のためのワークショップ(体験型講座)も開いている。

そしてジーナ・バーチ(RAINCOATS)がヴォーカルとベースで大活躍。
RAINCOATSのファーストの『The Raincoats』(79年)をメイヨ・トンプソンはプロデュースしており、
RED KRAYOLA with ART & LANGUAGEの『Kangaroo?』(81年)でもジーナはプレイしていた。
RAINCOATSはここ数年だと、
『Silver Monk Time : A Tribute The MONKS』(2006年)などのオムニバス盤に参加はしているが、
単独作は96年の『Looking In The Shadows』以来リリースしてないだけにうれしい。
滋味深く飄々としたメイヨのヴォーカルの1曲目をRAINCOATSそのもののサウンドにしているし、
ジーナはダグマー・クラウゼ(SLAP HAPPY)を思わせる喉もたっぷり震わせてくれるのだ。


アルバム・タイトルどおりに歌詞は5人の顔の描写のみである。
ファニーな観察眼で5人の顔の特徴を冷静かつ詳細かつ徹底的に綴るだけだ。
いわゆる政治的な歌詞はゼロ以下だが、
フツーに暮らしていても否応無しに政治的な場に置かれるがゆえの鋭い批評性はムンムンだ。
裏ジャケットの文字が赤/青/白という星条旗やアメリカ連合国旗も含む米国旗色なのも意味深。
けどナンセンスとも言える歌詞をゆったりとアメリカを振り返るような曲で本格的に歌うもんだから、
ずっと聴いているとニヤリとさせられながらムズムズしてくる。


「なんかヘン?」と思いつつ一般の方でも入り込める音楽にもかかわらず、
ラガービールみたいな苦味がたまらないディープな底無し沼の諧謔音楽である。
ユーモアとペーソスにあふれ、
これぞまさにグレイト!!!!!


●ザ・レッド・クレイオラ with アート&ランゲージ『ファイヴ・アメリカン・ポートレイツ』(Pヴァイン PCD-25108)CD
ミニ・ライナーと歌詞の和訳付。
各パートの音が目に見えるほど鮮やかに響くレコーディングの仕上がりもパーフェクトなのだ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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