なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DEPECHE MODE『Spirit』

DEPECHE MODE『Spirit』


80年代初頭からコンスタントに活動を続ける英国出身の“エレクトロニック・ロック・グループ”の、
DEPECHE MODEによる4年ぶりの14作目。

1秒でDEPECHE MODEとわかる中毒性の匂いに覆われ、
あっというまにヘヴィ・ローテーションになった。


ポップと言えばポップな曲が多いアルバムだが、
ひとつひとつの音にこもっているものが違う。
自己表現に対する誠実な姿勢や注ぎこんだ情熱が伝わってくるし、
クールな佇まいながらも並々ならぬ“気”や“念”すら感じさせる。

歌声の色気、
音色の艶っ気、
ヒトの律動とのハーモニーで増幅するビートの彫りの深さ、
聴き手の懐にやさしく強引に入り込む楽曲の格調の高さ、
スケールの大きい開放的な音の広がりなどなど、
すべてがパーフェクトだ。
意外と同じことをやっているわけではないがブレがなくブリティッシュの風格も漂う。
英国ロックの矜持が光を放っているところもひっくるめて、
ジャンルは違うが、
中核メンバーが英国生まれで米国在住という点も含めてMOTORHEADに通じるほどである。

ARCTIC MONKEYSとの仕事で知られ、
1曲以外ドラムも担当したジェイムズ・フォード(SIMIAN MOBILE DISCO)がプロデュース。
ファン目線で深化と進化を試みたような仕上がりで、
丁寧に練り込まれた豪胆かつデリケイトな音作りに目が覚める。
歯ごたえ十分の音の質感で聞き応え十二分だ。

90年代終盤のMEGADETHや2000年代以降のIN FLAMESなどのメタル・バンドも魅了した、
浴びていると惚れ惚れとする研ぎ澄まされたヘヴィな音像と音圧に磨きがかかっている。
と同時にむろん80年代前半のニューウェイヴの非マッチョ感もキープし、
テクノ以降の音楽スタイルに遅れず飲み込まれず、
流行りに媚びずに自己更新と自己鍛錬を続けているからこそ何ら揺らぐことはない。

古臭いという言葉があるが、
あらためて言う。
本物に古いも新しいもない。
そんなことをあらためて言いたくなる。

映画『地獄に堕ちた野郎ども』で本人が語っていたように
デイヴ・ガーン(vo他)にとってDAMNEDは特別なバンドの一つのようだが、
デイヴ・ヴァニアン直系のヴォーカルもますます絶好調である。
『Phantasmagoria』(85年)の頃のDAMNEDも思い出す。

あちこちの世界情勢を俯瞰して思いを綴ったことが想像できる歌詞も深く、
耽美と似て非なる“生”の音と共振している。
言い訳せずに“免罪符”を破り捨てているかのようで、
誰もが共犯者みたいなニュアンスも見せ、
冷厳なる歌心が深々と胸を撃ち胸を打つ。

これだけキャリアを重ねてきてたくさんの楽曲を発表してきているにもかかわらず、
まだこれだけフックのある曲ばかりのアルバムを作り続けていることにも驚かされる。
新たな代表作の誕生、
これぞまさにグレイト。


なお“デラックス・エディション”のCDは2枚組仕様になっている。
“ジャングル・スピリット・ミクシーズ”と題されたディスク2には
本編の曲のリミックス・ヴァージョンが5曲収められ、
ほとんどがインストでこちらも大きな音で聴くと快楽アップである。


★デペッシュ・モード『スピリット[デラックス・エディション]』(ソニー・ミュージックエンタテインメント SICP 30937~8)2CD
ジャケットのアートワークはアントン・コービジンが担当し、
デラックス・エディションは、
28ページのブックレットが綴じ込まれた直輸入ハード・カヴァー“紙ジャケット仕様”だ
ディスク1の本編は約50分12曲入り、
ディスク2は約27分5曲入り。
日本盤のみ、
通常のCDプレイヤー等で再生できるBlu-spec CD2仕様で和訳も読みやすく載ったブックレット封入。


スポンサーサイト

コメント

Everything Counts

DMと言うとニューウェイヴ関連のガイドプックの大枠に載らないアーティストという印象で、日本では過小評価されていると思います。
でもそんなことに関係なく海外ではメタル・バンドの支持も厚く、数多くカバーされていますね。結局楽曲(歌)の魅力が彼らを惹きつけるのでしょう。IN FLAMESがやった"Everything Counts"はクールなメロデス・ナンバーに様変わりしていて、なかなかカッコいいです。
是非日本で見たいアーティストですが、現状難しそうですね・・・

Re: Everything Counts

TOMMYさん、書き込みありがとうございます。
僕も自分の中のポジションとして“大枠”のバンドではないですが、それはポップだからとも思います。ただ同じくポップでも比較するとNEW ORDERほどクセが強くないというのも影響していますね。やっぱりポップだと過小評価になりがちなのかもしれません。過激なことを言ったりエキセントリックな音を出したりしないと注目されにくいというか。
人間関係でもそうですが、何事も表面だけでなく奥底を見ないと本質が見えてこないと、彼らに耳を傾けると思います。ポップだからこそ、僕なんか、若い頃には見えてこなかった彼らの魅力を最近思い知らされます。いわゆる過激に見える聞こえるものの底の浅さを思い知らされることが多いというのもあります。やっぱり深いところに向き合わないとダメですね。
あの「Everything Counts」はDEPECHE MODEの硬質な魅力を引き出していますね。
来日公演は、勝手な憶測で彼らがそうとは言えませんが、日本以外でビッグ・ネームだとギャラも高くなるというのもありそうですね。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1801-2a015109

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (10)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (289)
映画 (242)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (42)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (405)
EXTREME METAL (128)
UNDERGROUND? (93)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (120)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (82)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん