なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MASTODON『Emperor Of Sand』

MASTODON『Emperor Of Sand』


米国ジョージア州アトランタ出身の“プログレッシヴ・ヘヴィ・ロック・バンド”が、
の約3年ぶりにリリースした7作目。
期待を上回る出来で早速ヘヴィ・ローテーションになっている。


2007年と2014年と2015年のグラミー賞の
“ベスト・ハード・ロック/メタル・パフォーマンス”部門にノミネートされたバンドで、
前作『Once More 'Round the Sun』がビルボード・チャートのトップ200の6位まで上昇。
名実共に新世代の“メタル”を代表するバンドになっているだけでなく、
2000年代以降のアメリカン・ロックを代表するバンドの一つといっても過言ではない。
そんな状況の中で発表した今回の新作、
MASTODONを引き合いに出して他のバンドを語ることが僕も少なくないが、
誰もフォロワーにはなることができないアイデンティティが圧倒的な光を放射している。

トロイ・サンダース(b、vo)は別にやっているGONE IS GONEで今年頭にアルバムを出したばかりだが、
やはりメインの活動の場はMASTODON。
2000年の結成以来MASTODONの一員の4人の結束とケミストリーはさらに固くさらに磨かれ、
すべての壁をブチ破り越えて突き抜けて現代の“ロック・マジック”をダイナミックに体現している。


2009年の4作目『Crack The Skye』を手掛けたブレンダン・オブライエンのプロデュースだが、
彼特有のメジャー感のラウドな仕上がりがハマっていて押しの強さと繊細さのバランスが見事だ。
現在進行形のプログレッシヴな音作りもさりげなく細部に施されているが、
肉体的なサウンドに飲み込まれていくしか術がない豊饒なロックである。

ツイン・ギター編成を活かした土臭いメタル・アンサンブルと
その中から湧き出てきて簡潔に感情を綴って目に染みるギター・ソロ。
味わい深いラインを弾くベースと適度に手数多くてドライヴするドラムで
ストップ&ゴーのリズムを忍ばせて緩急が絶妙のテンポ・チェンジ。
ロック・ロマンあふれる旋律。
多彩なリズム・パターンを繰り出しながらも音が止まることはない。
持続する命の如しである。

6分台と7分台の曲を前半と後半の最後にあたる場所に置きつつ、
全体的にコンパクトな尺に濃縮凝縮された“核”は揺るぎない。
マジカル&ミステリアス、
そしてメタル以前の無類かつ無頼のロック馬鹿スピリットに裏打ちされた楽曲クオリティがますます高い。
序盤の曲はキャッチーとも言えそうなほどフック十分のソングライティングで、
場面転換の激しい後半も印象に残る曲作りで最後まで持っていかれる。
どんなにマイナーであっても複雑に聞こえても、
60~70年代のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドは耳に残る作曲を試みていたと最近よく思う昨今、
このアルバムの曲もまさにそれだ。

音と共振してヴォーカルもナチュラルにワイルド&デリケイトに迫る。
ますます“うた”を聴かせる、
トロイ・サンダースが大半のメイン・ヴォーカルと思われるが、
今回のクレジットによれば3人がヴォーカルを取っていることになっており、
曲によって2~3人がシェアしてコーラスと掛け合いも聴かせる。
わざとらしい歌い方なんて一つもないし本物だから芝居がかった歌い方なんかする必要もない。
ちょい田舎臭い南部の香りも漂ってきてアメリカンならではの侘び寂びが滲み、
ジョン・フォガティを彷彿とさせるところも。
ケヴィン・シャープ(BRUTAL TRUTH、VENOMOUS CONCEPT、LOCK UP)や
スコット・ケリー(NEUROSISほか)という以前のアルバムにも参加した“同志”が、
1曲ずつゲスト・ヴォーカルで彩りを添えている。

音と共振して歌詞も、
自分から半径30センチ以内のことしか考えてない内向き表現とは別次元の巨大スケールで迫る。
神話的モチーフは空想を超えて想像力をファックしながら現世のリアルな姿を浮き彫りにする
決して政治的な歌詞ではないが、
だからこそ今の世界中の地に響く。

親しみやすいオープニング・ナンバー「Sultan’s Curse」から、
アルペジオで始まり加速そして叙情の調べへと至る8分近くに及ぶラストの「Jaguar God」まで、
曲順そのままの“再現ライヴ”を観てみたくなるほどドラマチックな感動的構成力も言うこと無し。
例によって、
MOLLY HATCHETあたりの“サザン・メタル”の流れを感じさせるジャケットも音楽にピッタリだ。

これぞまさにグレイト。


★マストドン『エンペラー・オブ・サンド』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-17646)CD
約51分11曲入り。
味のある紙質で歌詞が載った四つ折り8ページ・ジャケット封入で、
日本盤は歌詞の和訳が付いて初回生産分のみにロゴ・ステッカーも封入。


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コメント

初めてコメントさせていただきます。

まだ聴けていませんが、今年楽しみにしていたアルバムの内の一枚なので、行川さんの文章を読んでより一層期待感が高まりました。

SUMACの来日が決まりましたね。新作は聴かれましたか?前回は観ていないので、是非観てみたいです。

今年はDARKEST HOURの新作も国内盤が発売されたので、来日に期待してしまいます。

いつも行川さんの文章からは刺激をいただいています。
読むのが疲れることもありますが、無機質なものや当たり障りの無いものばかりが増えていく中、いつも熱く、真剣勝負の行川さんからは大切なことを学ばせていただいています。
これからもより一層のご活躍に期待しています。

長文失礼しました。

Re: タイトルなし

タモさん、書き込みありがとうございます。
MASTODON、間違いなし!です。いい意味でも円熟も感じさせるのは深いからでしょうが、刺激もいっぱいです。
SUMACの新作は聴きました。ライヴもドラマーが凄いですよ。最近出た末期ISISのライヴ盤(紙媒体のM~で紹介予定)が出ましたが、あのグレイトだった音空間といまだに比べてしまう僕がいます。
DARKEST HOURの新作は、なんだかんだ言っても買うでしょう。現IRON REAGANのドラマーがいた頃の凄まじかった初来日公演を思い出します。前回の来日は近くでライヴをやったにもかかわらず知らなくて見逃したので、ヴォーカルは相変わらず本気だしで、観たいと思っています。
文章に関する言葉の数々、たいへんうれしいです。力をもらえます。
> 読むのが疲れることもありますが、
そう思っていただけると本望です。引っかからないもの、考えさせないもの、刺激のないものを書く気はないですから。ツイッター(たまにツイートしていますが)みたいに立ち読みできる感じのものはしたくないですし、そういう軽さはトランプが証明していますね。自分がロックから吸収してきた感覚、ニュアンス、思いをフィードバックさせている感じです。善悪の彼岸を突き抜けたいです。
がんばります。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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