なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ドント・ルック・バック』(ボブ・ディランのドキュメンタリー)

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1965年の4〜5月の英国ツアー中のボブ・ディランを追ったドキュメンタリー映画。
アメリカでは1967年に公開されているが、
このたびデジタル・リマスター版による日本上映が実現する。
モノクロゆえに映像のポイントになっている黒の色合がくっきりし、
濃淡のコントラストが鮮やかで彫りの深い映像に仕上がっている。


監督は後にデイヴィッド・ボウイの映画『ジギー・スターダスト』も手掛けたD・A・ペネベイカー。
ただし、こちらはいわゆるコンサート・フィルムのみの映画ではない。
終盤は別として全体的にはライヴ・シーン(カメラ一台での“長回し”が基本)も映画の一要素で、
16ミリ・カメラひたすら回しっぱなしで撮ってポイントになる部分をピックアップしたかのように、
英国ツアー中のディラン周辺の様々な“画”を切り取って編集されている。
もちろんディランが中心でディランがたくさん映っていることは間違いないが、
追っかけの女の子も含めてディランを取り巻いた人たちも適度に挟み込んでいるのだ。
当時の英国での“ディラン現象”の記録とも言えるし、
ちょっとしたトラブルの類いも収めた“ディランの英国道中記”としても楽しめる。

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5作目の『Bringing It All Back Home』をリリースした数カ月後で
既にビッグ・ネームになっていた頃だが、
プロテスト・ソングのフォーク・シンガーソングライターという“いかにものディランのイメージ”から、
ネクスト・レベルに進みつつあった時期でもある。
スター性の高い研ぎ澄まされたルックスも相まって早くもカリスマ性を帯び、
いかつくて才気走った顔からは、
うかつに触れたら指でも切れそうなオーラすら感じられる。

23歳になる目前で既にシャープな顔つきになっているとはいえ、
初々しいディランがなかなかかわいい。
だが、英語の意味のsmartなキャラ全開である。
不遜とは言わないが、
インタヴューや記者会見の場では
機知に富む機転の効いた返答をしつつ容赦のない言葉も吐く。
むろんそれはジャーナリストに真正面から向き合った“真剣勝負”ゆえのクールな攻めだ。
色々な立場の人とのやり取りをおもしろがっている様子もうかがえる。
気難しそうで生意気っぽくも見えるが、
とにかく率直でクレヴァーだ。

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ピアノを弾くディラン、
タイプライターを打つディランなどなど、
なにしろ絵になる人である。
楽しそうなディランも、
気を荒くしているディランも見せ、
巨匠になる前ならではの人間味が滲む。


ジョーン・バエズ、ドノヴァン、アラン・プライス アレン・ギンズバーク、
アルバート・グロスマン、ボブ・ニューワースの姿も見られる。
リハーサル・シーンも見どころだ。

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1963年のセカンド『The Freewheelin' Bob Dylan』に収録の「Masters Of War」を
カナダのISKRAが2004年のファーストの『Iskra』でカヴァーしたように、
当時のディランは我が道を行くパンク/ハードコア・バンドにつながる部分も少なくない。
もちろん映画の中で流れてくる曲の歌詞の日本語字幕(寺尾次郎による新訳)もありだ。

同じ場のシーンを長時間続けることがほとんどなく、
場面り切り替えも速くてスピーディーなテンポも特筆したい映画である。


★映画『ドント・ルック・バック』
1967年 | アメリカ | モノクロ | 96分 | リマスター版DCP |
© 2016 Pennebaker Hegedus films.Inc
5月27日(土)より新宿K’s cinemaほか 全国順次公開
http://dontlookback.onlyhearts.co.jp/


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コメント

ご無沙汰です。
これ昔深夜の地上波で見たんですが、映像も音も良くなってるんですね。車の中でバナナ食べてるジョーン・バエズとか、追っかけの女の子にはやけに優しいディラン、でも男にはツンツンしてるディラン、アラン・プライスと喧嘩するディラン、等々が浮んで来ます。また見たくなりました。対訳が新しくなってるのもポイントですね。

Re: タイトルなし

yuccalinaさん、書き込みありがとうございます。
地上波でやっていたんですか! 
このあたりの人たちへの関心の強い方は、そういうバナナ・シーンなどのちょっとした場面でも頬が緩むと思いますが、そうでない方もyuccalinaさんが書かれているような、ある意味表裏のない正直なディランが楽しめると思います。和訳や画質などのアップデートは再演のポイントになりますね。

再びお邪魔します(^O^)/

地上波で、ナビゲーターがラヴ・サイケデリコの二人だったんで、「これは中々貴重なのでは?」とDVDに落として取ってあります。

で、ちょっと話が逸れますが、「ジョン・レノンはディランに”歌詞に主張が無い”と言われたのがショックで、以降メッセージ性を重視するようになった」とロジャー・マッギンが某ドキュメンタリーで言ってたんですけど、当時のディランの直接的&間接的影響力の凄さを物語るエピソードだなあと思いました。ディランを迎えた時のイギリスの熱狂振りにも頷けます。

Re: タイトルなし

yuccalinaさん、書き込みありがとうございます。
そういうナビゲーターの地上波の番組があったとは、貴重ですね。
レノンのその話は知らなかったので興味深いです。それまであまりそういう歌を作ってなかった人が変わるのは、よほどの出来事あった時ですから。この映画もイギリスでのディランのモテぶりも見どころですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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