なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

HIGH ON FIRE『Snakes For The Divine』

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当代最強の米国産ロック・トリオが2年半ぶりにリリースしたばかりの5枚目のオリジナル・アルバム。

世界一好きなバンドの新作だからビール飲みつつ緊張しながら向き合ったが、
期待を裏切るどころか期待を上まわるまたしても超弩級の出来で興奮を禁じ得ない。


SLAYERの『World Painted Blood』 を手がけた数ヵ月後にグレッグ・フィデルマンがプロデュース。
The (INTERNATIONAL) NOISE CONSPIRACYやMETALLICAの最新作のエンジニアも務めた人だ。

HIGH ON FIREがレコーディングで仕事をしてきたプロデューサー/エンジニアは、
ビリー・アンダーソンにしてもスティーヴ・アルビニにしてもジャック・エンディノにしても、
それぞれストーナー・ロックやオルタナティヴ・ロックやガレージ・ロックンロールの音の質感で、
HIGH ON FIREが内包してきている要素をその時々で体現してきた。
ただしみなアクが強い素敵な持ち味である反面ゴリゴリの音に仕上げる人たちではなかった。
今回はむろんスタイルのメタルではなく音そのものがメタルで固められている。

ハード・ロックでありヘヴィ・メタルでもある音の熱度だが、
むろん“HR”だの“HM”だのの“記号”をデストロイ!する魔力が息づく邪悪な純重金属ロックである。
NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)やサザン・メタル、
手垢がつく前の極初期のスラッシュ・メタルやブラック・メタルやデス・メタルやドゥーム・メタルを、
クラスト・テイストのパンク/ハードコアで荒削りにブレンド。
要するに80年代前半の世界津々浦々の蛮族ロックの核のみを凝縮して叩きつけている。

抜けのいい音作りで広がりのある音作りはいい意味でメジャー感も漂ってスケール感を増した。
リズムがシンプルになったドラムも前作の時は加入して間もなかったベースも中低音の弾力と音圧が格別。
リフの魔術師のギターはメロディを舐めまわすソロ・プレイも差し込む。
とにかくウルトラ・ヘヴィ・サウンドの胆力が尋常じゃない。

全8曲中6分以上の曲が半数以上を占めるが、
一曲一曲の長さを感じずにあっという間である。
前作ほど叙事詩的ではないとはいえプログレッシヴな曲作りだが、
言うまでもなく頭デッカチなやつとは対極。
ジャズや現代音楽や民俗音楽を密かにあちこちで応用し、
土臭い旋律を滲ませつつリズムのズラしやリフの反復によるこの加速度はHIGH ON FIREならではだ。

何より素晴らしいのはメタルを深化させるからこそメタルに甘えていないこと。
いやメタル云々以前に何しろ自己表現に甘えがない。
クサくて陳腐な言葉だが音楽に対する誠実さに満ちている。
だから本質的に重い。
音楽も言葉も発するときの心持ちひとつで重くも軽くもなるから。
リフのひとつひとつ、
ビートのひとつひとつ、
言葉のひとつひとつ、
すべてに覚悟を決めている。

ギターにもベースにもドラムにも歌心にあふれたメタルだが、
SLEEP時代はギター専任だったマット・パイクのヴォーカルは言わずもがな。
歌いことがありすぎてガラガラになった歌声がすべてのコケオドシをなぎ倒す。

曲名などの言語センスもますます冴えわたる。
同名の曲も収録したアルバム・タイトルからしてそそられるし、
「Frost Hammer」は“CELTIC FROST meets HELLHAMMER”としか思えないし、
「Bastard Samurai」はダサく見えるフレーズをカッコよく聴かせる強引さがたまらない。
平易な言葉を使った歌詞も意味深なフレーズばかりで以前にも増して想像力が刺激される。
神話的ながらも時事ネタも絡めたと思しきリアリスティックな内容に痺れるばかりだ。


トリオ・バンドの“魔術”もあらためて思い知らされた。
BLUE CHEERもMOTORHEADも不失者もトリオ編成のときが最高に輝いてきたのも、
“仕分け”じゃないが音も精神も贅を削ぎ落として研ぎ澄まされているからだ。
本作も豪腕ロックでありながら肉体から導き出した根源的なインテリジェンスに裏打ちされており、
そういった面々に連なるバンドであることも確かだ。

ジャンル問わずグレイトな音楽は、
耳を傾けていると言葉が止めどもなく自分のなかからあふれてくる。
今再びロックを聴き続けていてよかったと思わせてくれるアルバムを届けてくれて感謝の念でいっぱいだ。
いわゆるポジティヴポジティヴなアルバムではないんだろうが、
全身で浴びていると、
生きていたくなる力がカラダの奥底から湧きあがってくる。
すべてのイカサマを殲滅するから。

今年いちばんのヘヴィ・ローテーション・アルバムになることは間違いない。


●HIGH ON FIRE『Snakes For The Divine』(E1 E1E-CD-2010)CD
ちなみにぼくが買った↑のカタログ・ナンバーのCDは、
ジャケットの右下に“PARENTAL ADVISORY EXPLICIT CONTENT”と書かれたマークが入っている。
歌詞カードを見ると“Fuckin”と思しき言葉が伏字になっている。
少なくても米国ではいわゆるメジャー・ディストリビューションゆえの処置だろうか。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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