なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』

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“黒澤明監督の『七人の侍』や『用心棒』に
セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウエスタン(『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』等)を足し、
香港伝統の武侠映画で掛けたような“
という宣伝文句がハッタリではない映画だ。
1968年香港生まれのベニー・チャン
(『WHO AM I』『コネクテッド』『新少林寺/SHAOLIN』『レクイエム -最後の銃弾-』ほか)が
製作・監督・共同脚本。
本作と本作に先駆けて上映される『おじいちゃんはデブゴン』では主演も務める、
サモ・ハンがアクション監督を担当した2016年の作品である。

サブ8

舞台は内戦下の1914年の中国。
団長率いる自警団に守られて貧しいながら平和に暮らしていた田舎の村に、
各地で略奪と虐殺を続ける悪名高き軍閥の勢力が迫っていた。
軍閥を率いる将軍の冷酷非情な息子は、
村に単身乗り込むと教師やその教え子をたやすく殺して逮捕される。
団長は会議を開いて将軍の息子の死刑を決めるが、
そこへ軍閥の将校が現れて将軍の息子の釈放を要求する。
拒否すれば総攻撃をかけて村民を皆殺しにするという軍閥の要求を団長は断固拒否し、
徹底抗戦を主張。
だが村人たちは、おびえるばかりだった。

以上はストーリーの序盤だが、
馴染みのない人が多いであろう時代の中国の史実を元にしているとはいえ
話の流れはわかりやすい。

サブ4

一地域の物語であるにもかかわら大陸感あふれる超ビッグ・スケールで迫る。
可能であれば映画館で観ていただきたいビッグ・スクリーンの左から右までをフルに活用した動きで、
ダイナミズム満点の映像力に“これぞ映画!と”ひざを打ちたくなる。
アクション・シーンは言わずもがなだが、
人物をじっくりとらえるシーンでも押しと引きが絶妙なカメラ・ワークの思い切りが良く、
ロマンあふれる楽曲で躊躇なく大仰に盛り上げる音楽も相まって
映画全体の歯切れのいいテンポに一役買っている。

戦いのシーンも様々な場が描かれ、
アクションが売りの一つの映画とはいえダラダラ続けずにメリハリをつけ、
派手にやればやるほど観ている方は意外と飽きることをわかっているかのように、
様々な見せ方をしているのも上手い。
映画全体を見渡して無駄がなく引き締まっていて適度に風通しのいい編集が的確なのだ。
もちろん移動の乗り物は車ではなく馬。
これがまたいい味を出している。

サブ9

核兵器や化学兵器をはじめとしてまとめて始末しようとする現代の兵器も残酷は残酷だが、
当時の戦いの火薬関係はせいぜいピストルやダイナマイト程度で
強烈な刃物が基本のプリミティヴな武器による残虐性もハードコアに描かれる。
豚なり牛なり鶏なりを殺すような生々しいテイストである。
“R15+”指定されているほど流血も包み隠さず映すからホラー映画テイストを感じる場面も多いとはいえ、
首吊りシーンも含めてリアルな描写を大切にし、
むろん死をオフザケ交えて描くことはしてない。

まさに虫けらの如く人を簡単に殺すシーンも目立つ映画だけに
凄惨なシーンの数々を通して死の重みに貫かれている。
やりたい放題で人を弄び人殺しが趣味としか思えない人間で
笑顔を絶やさないからこそ逆に冷酷度五割増しの将軍の息子の冷酷非情非道ぶりが強烈だ。
女も子どもも年寄りも差別区別は無しの“平等”な殺害ぶりは、
現代の世界中の独裁者(+力を持つ者)に珍しい性質ではない。

サブ3

人の数だけ正義があり、
自分勝手な正義も含めて正義のために命をかけた者たちの映画であることは間違いない。
「権力は正義だ。権力に従わなければ殺せばいい」という言葉も吐かれる映画だから、
“正義”とされることが抑圧的になり得ることもほのめかしているようにも思える。
そして僕は単純な勧善懲悪ものと一線を画すこの映画のテーマを“義”と断定する。
“義”は“正義”だけではない。
信義と義侠が交錯し、
かつての同志が考え方の違いで敵になって殺し合う終盤の一騎打ちシーンでの“義”も強烈だ。

見せ場だらけで、
あくまでも基本はエンタテインメント映画だが、
功徳ってものも考えてみる。

サブ2

今の世界各地の情勢ともリンクしている。
それこそ香港や中国ともだが、
いわゆる反政府映画ではないにしても
これだけ痛烈強烈な作品を“ギリギリのライン”で仕上げた制作陣の手腕に乾杯!である。

それぞれのキャラが際立つ俳優たちの深い感情表現も特筆したい。
特に主人公である“流れ者のさすらい人”が、
シリアスなこの映画にいいアクセントを付けている。
人助けに興味はないが結果的にそういうことばかりやっていて基本的に“護衛”が仕事で、
飄々とした悠々自適な“ズッコケとんちきトーク”もファニーで浮いていて楽しい。
香港映画特有のアクションの動きが例によってユーモラスに見えたりもする。

カメラ・ワークや脚本はもちろんだが、
やはり演技力あってこそ映画だとあらためて思う作品だ。

サブ5b

★映画『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』
2016年/中国・香港/120分/カラー/シネスコープ/R15+
©2016 Universe Entertainment Limited.All Rights Reserved.
配給:(株)ツイン
6月10日(土)より、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか、全国順次ロードショー。
主な出演者:
エディ・ポン(『激戦 ハート・オブ・ファイト』、『疾風スプリンター』)、
ラウ・チンワン(『奪命金』、『レクイエム -最後の銃弾-』)、
ルイス・クー(『レクイエム -最後の銃弾-』、『ドラッグ・ウォー 毒戦』)、
ウー・ジン(『新少林寺/SHAOLIN』、『ドラゴン×マッハ!』)、
ユアン・チュアン(『ラスト・シャンハイ』、『レクイエム -最後の銃弾-』)
ジャン・シューイン(TVドラマ「最高の元カレ」、『So Young ~過ぎ去りし青春に捧ぐ~』)、
リウ・カイチー(『SPL/狼よ静かに死ね』、『クリミナル・アフェア/魔警』)、
シー・ヤンネン(『カンフー・ハッスル』、『新少林寺/SHAOLIN』)、
サミー・ハン(『燃えよ、マッハ拳!』『ドラゴン・ブレイド』)。

主題歌「危城(Dangerous City)」は台湾のロック歌手の信(Shin)が作詞作曲して歌っている。

sammohungisback.com


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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