なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

EMPEROR『Live AT Wacken Open Air 2006 ‘A Night Of Emperial Wrath’』

EMP_DVD_J.jpg


EMPERORはブラック・メタル界を代表するノルウェーのバンドだ。
メロディアスなアプローチもしつつサックス入りのユニークなサード・アルバム『After』を出したばかりで、
目下ソロ活動も盛んなイーサーン(Ihsahn)がリーダー。
ギタリストのサモスが教会の放火や破壊活動を起こしたことでブラック・メタルのイメージを固めたが、
ジャンルを超えて君臨する絶対的なバンド名でも他を圧倒する念を誇っていた。

これはドイツの名物野外メタル・フェスティヴァルでの期間限定の再編ライヴDVDだ。
メンバーの気持ちが高まった時の再集結は惰性で続けているものよりテンションが高くなったりもするし、
短期集中で濃くなっている彼らの気持ちも大観衆を前にして燃え上がった。
暗くなりかけた時間帯という舞台もEMPERORにふさわしく、
落ちる陽の光と紺色が基調の照明とのブレンドで映えている。

ステージに立ったのはオリジナル・メンバーのイーサーン(vo、g)とサモス(g)、
EMPERORをネクスト・ステップに進めた凄腕のタリム(ds)というお馴染みの3人に、
サモスとタリムが最近までやっていたZYKLONのセクスディーモン(b、vo)と、
LEPROUSのアイナー・ソルバーグ(kbd、vo)。
サポート・メンバーの二人も別バンドではフロントマンだから存在感も十分だ。
適度な画面が切り替わる編集で全景も一人一人もバランスよく収め、
観客に媚びる如き無駄な動きはせぬ威風堂々の佇まいがくまなく鑑賞できる。

全12曲中、
94年発表のファースト『In the Nightside Eclipse』から4曲やっていて、
2001年の最後の4作目『Prometheus: The Discipline Of Fire And Demise』から1曲なのも興味深い。
初期のプリミティヴな演奏とは違うが、
劇的でありながらもプリミティヴだった初期の曲はEMPERORに外せないと自分らでもわかっている。
むろん彼らの現在進行形のプレイが曲をさらなる高みに引き上げている。
ブラック・メタル特有の高音域が目立つ音作りでドラマチックに展開し、
天に向かって放つステージもあいまって宇宙的なまでにスケール大きい壮絶なサウンドになっている。

各方面のミュージシャンがブラック・メタルにアプローチしていることは肯定的に見ているが、
サブカルが食いつくほどブラック・メタルがトレンドになっているのは考えさせられたりもする。
わざとらしくヘタレなレコーディングやプレイでお茶を濁しているものの乱発も、
ノイズ・グラインド(欧米で言うところの“ノイズコア”)の状況に近いものを感じたりもする。
筋金入りのブラック・メタル・ヘッズに苦々しく思っているのではないだろうか。

このライヴはひとつひとつの音に覚悟を決めている。
このDVDはブラック・メタルもメタルが核の表現であることを再定義する。
ブラック・メタルやヘヴィ・メタルとか抜きにしてロックとしてカッコイイ曲ばかりだと再認識させる。
ブラック・メタルもロックとしてクールであることが必須であり、
ロックとしてのパフォーマンスの素晴らしさがすべてである。

ブラック・メタルな武装はほとんどしてないが、
逆に言えば贅肉を削ぎ落としてビシッ!と黒で固めたヴィジュアルが壮観。
落ち着き払った佇まいはまさに“皇帝”の貫禄そのものである。
見ごたえありまくりだ。


●エンペラー『闇の復活祭-ライヴ・アット・ヴァッケン2006』(トゥルーパー・エンタテインメント XNTE-90001)DVD
本編が70分強、
再編時の“ライヴ・ブートレッグ・ヴィデオ”~ドキュメンタリー映像が70分弱。
むろん会話の比重が高い後者は日本語字幕付だ。
英語の歌詞と和訳も載った24ページのブックレットが封入されているのもありがたい。


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ZYKLON

ZYKLONはどうやら解散してしまったようです…。

情報ありがとうございます。手直ししておきました。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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