なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『心が叫びたがってるんだ。』

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一昨年に劇場公開された同名の劇場版オリジナル・アニメの実写映画版。
アニメとはまた違った感じで楽しめるだろうし、
アニメの方を観てなくてもまったく問題なく楽しめる。
みんなで力を合わせて!という高校生物語ではあるが、
青春映画を超えてインスパイアされる作品だ。

中島健人(注:今回このブログでは画像をアップできなかったので写真はHP参照)と芳根京子を核に
石井杏奈と寛一郎が絡んで高校生を演じ、
大塚寧々が芳根の母親役で荒川良々が教師役を務めている。

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成瀬順(芳根京子)、坂上拓実(中島健人)、仁藤菜月(石井杏奈)、田崎大樹(寛一郎)は
高校三年生で担任の教師から、
「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命されてクラスの出し物がミュージカルになる。

成瀬は幼い頃に自分の一言で両親が離婚してしまったトラウマで言葉を発せられなくなっていた。
無理やり声を出そうとすると腹が痛くなる状態だったが、
歌なら思いを告げやすいとインスパイアされ、
主役に立候補して物語も考えて作詞もすることになる。
そんな成瀬に触発されて坂上は、
元々教育も受けていた音楽の素養を活かしてベートーベンの曲などをアレンジ。
チアリーダー部の仁藤は優等生らしくみんなの潤滑油となり、
野球部の元エースの田崎は傲慢な性格を正しながら協力的になっていく。

水面下では切ない“三角関係”がひそやかに揺らめいていく。
特に成瀬は恋に突き動かされて歌える自信もついてくる。
そしてミュージカル当日を迎える。

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成瀬がなかなか声を発せられないだけにスマートフォンも大切なツールになっている映画ではあるが、
声に出して気持を伝えることの大切さをあらためて知る。

うわべだけの言葉はあっちいけ!って感じで置いておいて、
目の前の一人に思いを伝えるにはエネルギーが要る。
深い深い必死の思いであればあるほどむずかしい。
人によって違いはあるだろうが、
不平不満の文句の類や悪口をぶつける方がまだたやすい。
目の前の一人に心からにポジティヴなことを言うのはもっとエネルギーが要る。
特に覚悟を決めた「好き」を言うのはとてつもなく膨大なエネルギーが要る。

でも何か重い経験をした者は口が重くなってしまう。
自己愛の強い人や想像力に欠ける人は相手のことなんか知ったこっちゃないから置いておいて、
一人に発した一言で何人かの人生をネガティヴな方向に変えてしまう言葉の重みを知ると、
調子のいい言葉は出てこなくなるものだ。

順

成瀬は両親の離婚が自分のせいであると一心に思い込んで言葉が出なくなった。
ひとたび自分が口を開けば他人を傷つけてしまうと思い込んでしまったかのようだ。
自分が見たもの思ったことをすぐ口に出してしまう包み隠さないオシャベリな女の子だったがゆえに
その反動で真逆の性格になってしまった。

事実をそのまま言ったことで人間関係を破滅に導いた。
気を使ってその人のためと思ってかけた言葉が相手の逆鱗に触れて心無い言葉を返されて深手を負う。
そんなことを幼少の頃に経験した成瀬。
でもやっぱり正直に言葉に出すことの大切さ、
何より好きと言葉に出して言うことの大切さを、
逆流する感情の中で自分の言霊に焼きつけていく。
おのれを乗り超える過程の彼女のエネルギーに圧倒される。

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必死の思いで声を発する者のパワーをあらためて知る。
もちろんポップな歌も一生懸命なら素敵だが、
ジャンル関係なく音楽も、
やっぱりギリギリのところから発した声はメロディもリズムも超えて五線譜も突き抜けて心を打ち撃つ。

そういう声がこの映画の成瀬の声で、
見ようによっては脂汗にも見えるほど涙でグチャグチャになった顔も見せながら必死で声を出す。
感情がゆっくり加速する成瀬役の芳根京子の熱演には身震いもした。
終始まさに“心が叫びたがっている”顔である。
と同時に終盤で本音を吐きまくるシーンには笑った。
他の出演者も好演で彼女を盛り立てる。
成瀬と一緒に住み続けている母親役の大塚寧々も、
サディスティックなまでの娘への無理解な演技で映画を盛り上げる。

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映画のカギを握る卵などのちょっとした“アイテム”の使い方も上手い。
埼玉県の北西部の秩父市と横瀬町でのロケもいい感じだし、
終盤のミュージカルのシーンは“ミュージカル映画”としても楽しめる。
クラムボンのミトらが担当した音楽もぴったりだ。

ストーリー自体も後半は“こうきたか・・・”とひねりの効いた展開でうならされたが、
最近の日本映画には珍しく感動の尾を引かせずに終わる潔いラスト・シーンもお見事。
でもエンドロールの途中で席を立ってはいけない。
最後の最後に用意された“オチ”にもヤられた。


★映画『心が叫びたがってるんだ。』
119分/配給:アニプレックス
(C)2017映画「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会 (C)超平和バスターズ
7月22日(土)全国ロードショー
http://kokosake-movie.jp/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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