なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『LINE(ライン)』

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試写会の案内状をいただく映画は何かしら家族の問題を考えさせられるものが多いのだが、
『LINE』もそのひとつとも言える。
ただし一筋縄ではいかない。

77年生まれの小谷忠典監督は、
生まれた地の大阪を拠点にインディペンデントで劇映画を中心に制作してきたが、
これが初のドキュメンタリー。
しかも“セルフ・ポートレート映画”である。


小谷が子供の頃にノックアウト強盗でボコられた父親は、
一命は取り留めたものの記憶の半分が飛んでしまい、
スナックにも通って酒びたりの日々。
スモーキーマウンテンとまではいかなくてもゴミ屋敷寸前の狭い部屋で二人は暮らしている。

閉塞感が漂う“家庭”の時間が映し出される。
同時に憩いの“家庭”の時間も映し出される。

小谷には恋人がいる。
彼女には子供がいる。
婚姻届を出してこの子供の父親になろうとするが、
吐き気を催すほど得体の知れぬ情動に襲われて時間が止まってしまう。

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“糸口”に触れるべく小谷は自分が生活している街に目が向かった。
小谷が育った大阪市大正区は定期航路もあったことから困窮した沖縄からの移住者が多い。
区の住民の三割という沖縄系の人たちに子供の頃から囲まれて育ってきた小谷は、
“LINE”を感じて沖縄に飛ぶ。
沖縄本島のあちこちを回っていくうちにコザ(現沖縄市)の“赤線地帯”に感じるものがあって留まり、
“その筋の男”の脅しにもひるまず小谷は次々と街娼に声を掛け、
次々と彼女たちの“裸”を撮影していく。

顔を映さない女性もいる。
顔出しOKの女性もいる。
四十代の女性もいる。
興に乗ったのか脚を動かして局部が見える女性もいる(もちろんボカシ入り)。

会話を交えている場面もあるが、
必ずしも話で街娼たちの人生を説明させているわけではない。
裸体や顔だけが数分続くシーンもある。
妊娠線、手術痕、自傷痕、刺青。
顔も映した女性は口ほどに物を言う目はもちろんのこと、シワもくまなく、不揃いな歯もそのまま捉える。
アラーキーの写真も思い出す生々しさだが、
たとえメイクを施そうが、
彼女たちの人生が刻まれた肌がハードコアな形でさらされる。

いわゆる経済的な格差も炙り出されてが、
家庭的な格差みたいなものが強く滲み出ている。
街の風景なども陰の表情をたたえるものがほとんどで、
廃棄物が映し出されるのも象徴的。
情景描写が見事だ。

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大阪市大正区に戻った小谷は否応なしに自分の人生への対峙を迫られ、
再び自分の“家族”に向き合う。
父親と彼女の子供の戯れを撮っていくうちに、
自分が子供の頃に過ごした父親との時間が蘇り、
視界が開けてゆく。

やっぱりすべてが“LINE”でつながっている。

映画『LINE』はヨーロッパの各映画祭で静かなる熱狂を巻き起こしたという。
むろん話している内容がわかればもっと深いところまで映画に入り込めるが、
酔っ払ってろれつがまわらなくなっている父親のしゃべりはぼくでも捉え切れないところがあった。
だがそもそも言葉がわからなくても想像力をもってすれば映画はふくらむ。

街娼の撮影時に彼女たちが流したと思しきBGM以外の音楽は一切入ってない。
監督によれば音楽を入れようとも考えたらしいが入れようがなかったらしい。
それは正解だ。
そもそもこの映画に音楽の入る余地はない。

中途半端な感情を削ぎ落としたがゆえに匂い立つ映像ですべてを語っているから。

こんな映画初めて見た。


●『LINE(ライン)』
52分の2008年作品。
5月中旬~東京・ポレポレ東中野にてレイトショー。
全国順次公開予定。
http://line.2u2n.jp/


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コメント

いつも

楽しく拝見させていただいています。
行川さんのレビューを見て、非常に拝見したい 映画です。

今から公開を楽しみにしています。 

RYOCRUDOさん、いつもコメントありがとうございます。
家庭をもっている方だとまた違った見方ができると思いますし、ぼくとはまた違ったリアリティを感じるのではないかと。
話が脱線してまた長くなるのでカットしましたが、父親のこととかも考えさせられました。
日本映画ならではも重みもあります。

Line

はじめまして。
今日Lineを観てきました。
一番分かりやすい解説だと思い、シェアさせていただきました。
もし問題あるようでしたらシェア外しますので返信いただければと思います。
事後報告で申し訳ありませんがよろしくお願いします。

LINE

行川さんはアプリのLINEは入れていますか?
新しい異性の友達が何人も出来て、楽しいですよ
おすすめです

書き込みありがとうございます。
>草野洋美さん
シェアに関してよくわかっていませんが、大歓迎です。“一番分かりやすい解説”という言葉もたいへんうれしいです。ここで書く音楽に関してはマニアックなものが多いのでなかなか難しいのですが、映画もマニア以外にも伝わるような意識で書いていますので。
>BEEBさん
携帯すら持ってない原始人なので今のところLINEのアブリ以前の問題というのが現状です。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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