なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ISIS vs BARONESS at渋谷O-EAST 2010年3月6日

ハードコア以降の米国の当代“ヘヴィ・ロック”最前線バンド、
ISISとBARONESSの日本ツアー最終日である。

トータルですごいことになることは確信していたがホント期待をはるかに超える凄まじいものになった。
細かいジャンル分けではどこに入るかわからない自由闊達な精神性でも、
ガツン!とくる音の響きそのものでも、
ロックの原初的な姿を体現してロックの進化と深化をまざまざと見せつけた。
けっこう大きい会場でまずまずの入りの状態のお客さんの男性率が9割以上だったが、
それもまたロックってもんである。


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★BARONESS

開演予定時間の19時ちょっと前からステージでメンバーがスタンバっていてヤる気マンマンで、
ほとんどフライング気味にスタート。
エナジー先走って我慢できなかったことがありありのホットな息吹みなぎるライヴだった。

ステージ向かって左側の前方のぼくが観ていた場所では、
バスドラが大きすぎて音のバランスがイマイチで万全の鳴りではなかったのが残念ではあったが、
そんな状態を物ともせぬ燃えたぎるパフォーマンスを繰り広げてくれた。

サマー・ウェルチ(b)はカーリー・ヘアーを振りまくりながらクールなフィンガー・ピッキングでキメ、
アレン・ビックル(dsは)全身を大きく使って打ち出す超パワフルなビートでバンドのケツをケリまくる。
昨年のセカンド・フル・アルバム『Blue Album』から加わったピート・アダムズ(g、vo)の演奏と歌は、
フロントマンのジョン・ペイズリー(vo、g)と絡み合って、
確実にBARONESSをネクスト・レベルに引き上げたとナマで観て再認識した。
フォルクローレのメロディを焦がしたようなヴォーカルとギターの熱く切ないハーモニーをはじめとして、
ライヴを観てぼくはあらためてBARONESSにぼくはロックのロマンを見た。

プログレのような展開を見せるとはいえ曲は長くないし、
たとえばKING CRIMSONやいわゆるマス・ロックみたいに数式みたいな曲とは違う天然美を誇る。
ヘヴィ・メタルというよりは現在進行形のハード・ロックと呼ぶがふさわしい汗の匂いを放っていた。
ブルースを感じさせる濃い顔と厚き肉体もハード・ロックだったし、
実際彼らの“メイン・ディッシュ”はハード・ロックのようである。

だが関係者の話によればメンバーはパンク/ハードコアも大好きだという。

フロントの3人はスリーヴ・カットしたTシャツを着用しており、
ピートは愛用のENGLISH DOGSでキメていた。
サマーはこの晩はMUNICIPAL WASTEのTシャツだったが、
BLITZなどのパンク系が多くてOUTOも好きとのこと。
この日はスウェーデンのVICTIMのTシャツだったジョンも日本のハードコアに詳しく、
WARHEADとアメリカで対バンしたことがあるらしい。
GASTUNKやPAINTBOXが大好きで、
なるほど!その2バンドの哀愁のメロディと“ハード・ロック”の取り込み方に近いところがあるではないか。

現時点では詳細を伏せさせていただくが、
聞くところによるとポリティカルな意味も含めてプライベートで修羅場をくぐってきたメンバーもいるようで、
単純に戦争反対!云々とかのオメデタイ歌で終われない心根に貫かれている血の流れた強靭なサウンドに、
痺れっぱなしの45分間であった。

<セットリスト>
1. Bullhead’s Psalm
2. The Sweetest Curse
3. Jake Legs
4. Isak
5. The birthing
6. O’er Hell And Hide
7. Horse Called Golgotha
8. Swollen And Halo
9. The Gnashing


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★ISIS

BARONESSSの攻勢を迎え撃ったISISだが、
今までの来日公演からも察せられるように対バンが強力であればあるほど燃えるバンドだ。
果たせるかな魔力を感じさせるほど空恐ろしく神がかっていた。

ISISの東京公演は今まですべて観てきているが、
ISISはほんとうに観るたびに凄みを増している。
常に最新アルバムが最高傑作であり常に最新ライヴが最高のステージ。
進化するとパワー・ダウンするケースも少なくないが、
日々ハードルを高く設定して越えんとするたゆまぬ向上心のたまものだとあらためて思われた。

アーロン・ハリス(ds)以外の4人は黒でビシッ!とキメてステージに登場。
各々の持ち場に着いてまもなく、
最新作『Wavering Radiant』の1曲目「Hall Of The Dead」の頭の音を5人が一斉に解き放つ。
もう最初の一音で腰を抜かした。
曇り無き確信に満ちた音に全身が感電した。
一瞬のうちに視界がクリアーに開けて覚醒された。

まるで精神的な自己鍛錬の末に絞り生み出されたかのような贅肉を削ぎ落とした音に打ちのめされ、
磨ぎ抜いて濁り無き音の流れの渦の中に吸い込まれていく。
一音一音への気合がハンパじゃない。
字義通りにハードコアな音だ。

ニコリともせず激しく頭を振りながらの厳格な音出しは一瞬一瞬にケリをつけるみたいでもあり、
おのれが世に放つ一つ一つの音に対する責任すら感じさせた。
すると音も声も単なる音や声ではなくなる。
命が宿り、
やがて静かに燃え立つ。

炎も芯がいちばん熱いようにISISのライヴもメンバー5人の内なる芯が燃えて熱い。
新作での演奏と同様にヒップホップ的なリズムから解き放たれ、
ロック的な感情のビートで曲をグルーヴさせるようになったアーロン・ハリス(ds)の進化も大きい。
ジェフ・キャシード(b)はISISの筋肉たる強靭なうねりで曲をリード。
マイケル・ギャラガー(g)のギター・ソロは優美ですらあり、
ブライアン・クリフォード・メイヤー(kbd、g)の音はサイケデリックですらある。
長い曲をあやつる5人のアンサンブルは終始真剣勝負だ。
むろん“ただ曲をやっているだけ”に終わらず、
目に見えるほどのメンバー全員の有機的な音の融合で新たなる命の波動を生み出していた。
こういう音像を本当の意味でワイルドというのだ。

体内ビートの脈動のおもむくままに体を動かしていた5人だが、
特にアーロン・ターナー(vo、g)の集中力には息を呑む。
クールにも見られそうなアーティストだからあえてこういう言い方をしよう。
熱い男だ。

ヴォーカルを取らないパートではマイク・スタンドの前から離れてステージの内に向き、
限りなき自己対話に没頭するかのように激しく頭を振りながらギターのリフを弾き続ける。
歌心にもとろけた。
ほんとうに鳥肌が立った。
ハードコア・スタイルの生々しい咆哮にも磨きをかけていた。
昨今のメタルコア/スクリーモ/デスコア勢に多い“大声競争”みたいな怒号の没個性ぶりにも程があるが、
結局は自分自身の心を掘り下げていかなければ音楽でも何でもナマの表現は出てこない。
髪もヒゲも伸ばして一見別人のようになっていたが、
後光が差すほどの気迫によりカリスマ性をも帯びていた。

ISISのライヴはたいてい曲と曲の間が1分ほど空くが、
楽曲だけですべてを語るからMC無し。
アルバムにも入っている研ぎ澄まされた静謐なアンビエント・サウンドが曲間も緊張感を途切れさせない。
息が詰まりそうなほど張り詰めたテンションが続いたと同時に、
肉体が浮き上がりそうなほどの解放感に酔いしれる。
ISISのプレイ中は別世界を彷徨しているかのような気分となり、
時空を超えたこの世のものとは思えぬ澱み無き音の大気の中に飛ばされたままになったが、
本編の曲が終わってアーロン・ターナーが発した「アリガト」の一言で現実世界に戻った。

アンコールも含めて過去のフル・アルバムからも1曲ずつやってくれた。
よくよく考えれば2バンドだけの来日公演はこれが初めてだ。
今までの日本でのライヴよりも演奏時間が長く取れたというのもあるのかもしれないが、
各時期の曲を披露したことで進化はしていても変化はしてないということを示すかのようにも見えた。
ナマで体験して楽曲クオリティの高さも実感した。

アンコールの2曲はセカンドの『Oceanic』とファースト・フル・アルバムの『Celestial』の曲だが、
当時の血気が逆流してきたのかアーロン・ターナーは、
前者で右手を突き上げ、
後者でリフを弾いた右手をそのまま前に突き出したままにもしていた。
普段こういうアクションをしない人だけによほど感情が高ぶって熱くなっていたことが想像できる。
最後は前で観ていたお客さんにギターを預け、
つっぷしてエフェクターで“演奏”しながらステージ床に打ちつけんばかりに頭を激しく振り続ける。
関係者の話によればアーロン・ターナーが自分のギターを観客に委ねること自体異例らしく、
90分弱の終演後にアーロン・ハリスがドラム・ヘッドとドラム・スティックを観客に放り投げたことも異例。
興奮して理性がブッ飛んでいた。

パーフェクトとしか言いようがない。

<セットリスト>
1 Hall Of The Dead
2. Hand Of The Host
3. Holy Tears
4. 20 Minutes / 40 Years
5. Ghost Key
6. Wills Dissolve
7. Threshold Of Transformation
[以下アンコール]
8. Carry
9. Celestial(The Tower)

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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