なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『セブン・シスターズ』

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人口過多で“一人っ子政策”を強行する国家と
それに引っかかって“粛清”の対象になった“一卵性の七つ子姉妹”の、
血みどろの死闘を描くアクション・ヒューマン・ストーリー。
無駄なくテンポよく風通しもよく息を呑み、
七姉妹が命懸けで束縛を解き放つ深く繊細なストロング・スタイルの力作である。

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都市部を舞台にした近未来の物語。
世界規模の人口爆発と地球温暖化等に伴う干ばつによる食糧不足に対処すべく、
欧州連邦は一家族につき子供1人のみを認める「児童分配法」を施行。
違法に生まれた二人目以降の子供は地球の資源が回復する時まで、
(表向きは)冷凍保存する政策を強行した。

至るところに検問所が設けられてIDカード等で人々の生活や行動を厳しく管理する体制の中、
母親が出産と同時に死亡した七つ子の姉妹が唯一の身寄りである祖父に引き取られる。
祖父は7人を、“月曜(Monday)”“火曜(Tuesday)”“水曜(Wednesday)”“木曜(Thurdsday)”
“金曜(Friday)”“土曜(Saturday)”“日曜(Sunday)”と名付け、
「児童分配局」に見つかって“拉致”されずに生き延びるための方法を幼少時から教え込む。
その方法とは、それぞれ週1日、自分の名前の曜日にだけ外出し、
カレン・セットマンという共通の“一人”の人格を演じることだったが、
外出時に限るとしても指一本の欠損でも見た目を7人常に同じにすることは想像以上に過酷だった。

30年過ぎても人口増加が止まらず路上は常に人間で溢れていてまともに歩けない状況の中、
七つ子姉妹は一人一人が性格も得意分野も違う大人の女性に成長。
7人の頭脳やスキルを併せ持ったカレン・セットマンは銀行員になってエリートへの道を歩んでいた。
そんなある月曜日に“月曜(Monday)”が出勤したきり行方不明になり、
まもなく何者かの裏切で当局が気づいて姉妹は外出先だけでなく共同生活の住まいも狙われてく。

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ハードボイルドなほどセンチメンタリズムを殺ぎ落しているにもかかわらず、
北欧出身の人が中心になった映画ならではのデリケイトな感情表現がとにかく素晴らしい。

ヘヴィ・メタルやパンク/ハードコアをはじめとしたロックの世界と同じく、
アクション絡みの映画では大味になりがちな米国産ではなかなかできない緻密かつ“生”の仕上がりなのだ。
79年ノルウェー生まれで『ヘンゼル&グレーテル』(2013年)で知られるトミー・ウィルコラが監督し、
79年スウェーデン生まれで『パッション』(2012年)でも存在感が抜群だったノオミ・ラパスが主演。
特にほぼ出ずっぱりのノオミ・ラパスの猛烈な熱演は驚愕ものである。
一人の人格がブレることなく一人一人のキャラをクールに分けながら、
成人になってからの7つ子全員を一人一人違う“断末魔”までダイナミックに演じ抜き、
今年の主演女優賞は彼女に決定!なほど観終わった後に惚れること必至だ。

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可能であれば劇場のスクリーンで観ていただきたいかなりハードなアクションも多い。
リアルに見せるがゆえに目を覆いたくなるおぞましいシーンも少なくないが、
“政府の暗殺部隊”と戦うシーンも文字通りホントに必死な様子を丁寧に映し出す。
現代よりさらに進化したコンピューターなどの装置が設定として張り巡らされた映画で、
超監視社会のシステムを“武器に転用”して七つ子が当局と戦う様子もわかりやすく見せる。

そういった強烈な映像力を裏打ちする精巧な脚本にも舌を巻く。
一筋縄ではいかない姉妹間をはじめとして人間関係の複雑な気持ちを丁寧に描き切り、
ちょっとしたラヴ・ストーリーも絡めてスパイスを効かせている。
お気軽な御都合主義はなく物語の展開はなかなか非情で、
だからこそリアルに迫ってくる。
同じ人間を演じる外出時のキャラ等がブレないようには帰宅後に一日の出来事などを“報告”するが、
全員が外では同じようにふるまわなければいけないのに、
一人が内緒で定期的にセックスをしてバレて大ごとになる話など現実的なネタも織り込む。

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ちょっと前にこのブログで紹介した映画『恋と嘘』とは真逆の設定で、
同じく荒唐無稽な物語のようでリアルに迫る。
確かに日本だけを考えれば少子化が進んでいるわけだが、
世界規模だと人口増加が止まらず、
地球規模の視点で考えれば日本にも影響する環境問題も食糧問題も深刻さを増している。

人口が急増しすぎた中国では70年代末から2010年代半ばまで“一人っ子政策”が行なわれ、
今と変わらず強烈なメディア統制の国でも残酷な弊害がボロボロ噴き出していたわけだが、
それ以上の鬼畜な政策がこの映画では行なわれている。
極端な出生の七つ子の生涯が象徴的ながら、
終盤に明かされる“二人目以降の子供たち”に対する処置はほとんどナチスである。

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けどもちろん“政治家=悪”みたいにナイーヴな描き方もされてはいない。
この映画の一人っ子政策の責任者の“児童分配局長官”が女性であり、
“サッチャー meets トランプ”な顔立ちの彼女が極端な政策に向かった個人的な動機を思うと、
エンタテインメント映画の中で“誠意とは何か?”ってことも考えさせられる。。

もちろん女性の七つ子という設定にしたことで、
さりげなくある種のフェミニズムの要素も感じさせる。
直で戦わねば殺されるエクストリームな状況の女性のプリミティヴな自立が生々しく、
極端な状況下で抑えつけられてきて膨張した七つ子一人一人のアイデンティティの炸裂があまりに鮮烈だ。
戦いの場でも“個”を殺してみんなと一緒になることで満ち足りてしまう世の中で、
このギリギリの女たちはindividualismに裏打ちされた理想的な協力関係をも提示する。

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似た者同士なのにキャラが全員違うがゆえの近親憎悪の軋轢と確執で息が詰まっていた7人が、
生き延びるために憎しみを突き抜けていく流れにゾクゾクする。

狭いスペースの中で閉じこもって他の姉妹と朝から晩まで年がら年中一緒に生活してきた七つ子にとって、
週に一回だけの外出は囚人の外出許可のようなもの。
だからこそ生と愛への渇望が一人一人パンパない
「死にたくない」「I love (you....)」という“最期の言葉”がこれほど重い映画もそうそうない。
そして不条理な運命に抗う人間の美しさをあらためて知る。

オススメ。


★映画『セブン・シスターズ』
2016年/カラー/シネスコ/DCP/英語/123分/原題:What Happened to Monday?/配給:コピアポア・フィルム
10月21日(土)より東京・新宿シネマカリテほか、全国順次公開。
©SEVEN SIBLINGS LIMITED AND SND 2016
http://www.7-sisters.com/


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コメント

こんばんは。
アクションも近未来映画も、あまり得意分野ではないのですが、ノオミ・ラパスは気になりますね。昔CSチャンネルで見た『ドラゴンタトゥーの女』三部作での、リスベット役には圧倒されましたんで。確かパンクスでレズビアンでアスペルガーの役だった。
彼女ほどアクションと血糊が似合う女優はいないのでは?と思った程です。生き埋めにされてから、這い出してきた姿が、今でも目に浮かびますです(^_^;)
この映画も大画面で見る根性はないのですが、CSかBSでやってくれたら、きっと見ると思いますです。

Re: タイトルなし

yuccalinaさん、コメントありがとうございます。
代表作とされる『ドラゴンタトゥーの女』を観たことがないのチェックします。この女優さん、ほんとグレイトですね。「パンクスでレズビアンでアスペルガー」・・・で気になります。
この映画も代表作になること必至です。どこかで是非観ていただきたいです。やっぱり体当たりの演技に惹かれますね。なんでも、体当たりが素晴らしいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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