FC2ブログ

なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TAU CROSS『Pillar Of Fire』

TAU CROSS『Pillar Of Fire』


AMEBIXのロブ“ザ・バロン”ミラー(vo)、
VOIVODのミッシェル“アウェイ”ランジュヴァン(ds)、
MISERYのジョン・ミザリー(g)、
WAR//PLAGUEのアンディ・レフトン(g)
というメンバーで始まった多国籍バンドの新作。
『Tau Cross』から2年ぶりのセカンド・アルバムである。

ある意味スーパー・バンドのメンツだから
1作アルバムをレコーディングして一通りツアーをして終わりだろうなぁ…と思っていただけに、
ほんとうれしいリリースだ。
新曲を創作することなく昔の曲でライヴをこなすバンドとは違い、
“産み”の苦しみを体験しながら進んでいる。


前作も手掛けたジェイムズ・アダムズが今回もプロデュースし、
キーボード奏者として正式メンバーのような感じでクレジットもされている。
ロブ“ザ・バロン”ミラーは
少なくても本作のクレジットではヴォーカルに専念していてベースを弾いておらず、
ベーシストとしてトム・レイディオが加入したようで、
6人編成でのレコーディングだ。
アートワーク担当は、
AT THE GATES『At War With Reality』ARCH ENEMY『War Eternal』
SPIRITUAL BEGGARSの『Spiritual Beggars』の2013年版リイシュー盤
ジャケットも手掛けたCostin Chioreanuである。

いい意味で変わってない。
2秒でTAU CROSS!とわかる空気感に包まれている。
メンバーのケミストリーで生まれた“TAU CROSS節”をクールに深化させている。
ザ・バロンが共同プロデューサーであるためか再編後のAMEBIXの流れをくみつつ、
『Revelations』~『Brighter Than A Thousand Suns』あたりのKILLING JOKEが
パンク・ロックになったかのようでもある。
ツー・ビートでない時のMOTORHEADVENOM
BLACK SABBATHLED ZEPPELINも噛み合っているみたいな曲とサウンドだ。
キーボード(シンセサイザーだと思われる)の比重が多少高まったが、
それほど目立たずにうっすらと鳴っている。

ミディアム/アップ・テンポで疾走する曲が多くてサビを設けた曲はフック十分。
最近出た“同志”ANTISECTの復活作『The Rising Of The Lights』の後に聴くと、
誤解を恐れずに書けばポップでキャッチーにすら聞こえる。
だが、いやだからこそ売れてほしいと切に願うほど“抜けの良さ”にハマるのだ。
でも英国と米国とカナダのミュージシャンの集まりにもかかわらずプリティッシュ色が濃く、
やっぱり重厚。
もちろん心根がパンクだからメタリックすぎずに適度につぶりたリフで押す曲もあり、
アルペジオやアコースティックな音で渋い喉を震わせる“いぶし銀”のパートも挟み込んでいる。
2曲でハーディガーディ、1曲でバグパイプをゲストが加えているところも特筆したい。
一曲一曲はわりとシンプルに作られているが、
アルバム全体でドラマチックに展開される。

もちろん“レミー声”が中心ながら、
一人で歌っているとは思えないほどますます多彩なザ・バロンのヴォーカルも聴きどころだ。
パフォーマーとしてはシンガーに専念したかったから専任ベーシストを入れたと思えるほど、
威嚇も媚びもしないシンガーとしても自信にあふれている歌声だ。
歌詞にも痺れる。
一晩でも二晩でも呑み語り明かせるぐらい深い。
HIGH ON FIREのように神話性を帯びながら現実世界を絡ませてリアリスティックに綴り、
とてつもなく強靭なのである。

ヴォーカルは言わずもがな、
ギターからもベースからもドラムからもキーボードからも歌心が滲み出ている。
特にアウェイのドラムは、
VOIVODでの演奏からすると奥に引っ込んでいるようにも聞こえるが、
地味なドラミングだからこそ際立つハートフルな表情のビートは感動的ですらある。


気合のゴリ押しはいらないし、
ただノイジーな音をそれっぽくこしらえてるバンドは何も心に残らない。
どっちもうわべだけでウソ臭いだけだ。
パンクだメタルだハードコアだもヘッタクレもない。
ロックでいいじゃないか。

とてつもなく救われる歌と音がすべて。
こういう作品に出合うためにロックを聴き続けているようなものだし、
なんもかも馬鹿馬鹿しくなってももっと生きていようと思わせる力にあふれている。

このアルバムには本物の意思と意志がすべての声と音にみなぎっている。
ウルトラ・グレイト。


★TAU CROSS『Pillar Of Fire』(RELAPSE RR7377)CD
見開き2ページで一曲ずつの歌詞とアートワークが彩る24ページのブックレット封入の
約51分11曲入り。
掛け帯付。


スポンサーサイト



コメント

既にご存じかもしれませんが...

Tau Cross、私もかなり気に入っていて、もうすぐリリース予定だった新作も楽しみにしていたのですが、Relapseが発売中止にしたそうです。
バロンが、インスパイア源として、サンクスリストにホロコースト否認論者の名を挙げていたことが問題視されたようです。
他のメンバー、そしてバロンの各コメントを読んでも私の拙い英語力では細かいニュアンスはわかりませんが、何か、とても残念で、考えさせられます...
私はもちろん歴史修正主義者には与しませんが。

Re: 既にご存じかもしれませんが...

Fripperさん、コメントありがとうございます。
知りませんでした。
TAU CROSSなら他のレーベルから出せると思います、
表面的に捉えるのではなくバロンの真意を理解しようとするレーベルから。
ニュースは発言等を抜粋して伝えるので、その編集でニュアンスがかなり違ってきますね。日本語でも紹介された情報をそのまま受け取るのは危険ですから、ましてや外国語のニュースは誤解も多くなりそうです。
肯定しないにしてもホロコースト否認論者のインスパイアでできた曲があるからきちんとクレジットしたという感じなら、
それもバロンの誠実さかと思います。
ナチ関係に目くじらたてるのが一種の免罪符になっているような風潮がイヤです。レミーにしてもJOY DIVISIONにしても、そしてバロンにしても、表現の中から意識を聴き取り読み取ることが一番大切です。モリッシーに対する最近のバッシングにも同じようなものを感じます。右アレルギーっていうんですかね。
何にしても表面的な解釈がほんと怖いです。ネット普及後、SNSとかスマホで自分が肯定できる仲間で固めて内向きになってで何もかもイージーになって、時間かけて色々な外の世界に向き合わない傾向がほんと怖いです。
TAU CROSSの新作、楽しみに待ちたいですね。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1916-807ba178

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (11)
HEAVY ROCK (266)
JOB/WORK (343)
映画 (315)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (49)
METAL/HARDCORE (52)
PUNK/HARDCORE (457)
EXTREME METAL (142)
UNDERGROUND? (129)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (144)
FEMALE SINGER (48)
POPULAR MUSIC (35)
ROCK (91)
本 (12)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

Template by たけやん