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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

マリア観音『「全滅しても愛だけが遺る」+「マリア観音のためのフリー・ロック・ドラミング」』

マリア観音 ジャケット


マリア観音発足30周年の年に放った2枚組。
どちらのCDも56分強で、
「刺生活」「冬の蝶」「義眼」「片翼の戦闘機」「菫日記」「静かな夜」という代表曲群を、
大胆な新アレンジや歌詞の一部リメイクで展開している作品だ。

バンド編成でも東京拠点にライヴ活動を行なっているが、
本作は“主宰者”木幡東介が作詞、作曲、編曲、ヴォーカル、演奏を一人で担当。
キャンバスの上に次々と声や音や言葉で“歌”を描いていくかのように、
サウンドを重ねて録っていって“一人バンド”のような作品に仕上げられている。


まず「全滅しても愛だけが遺る」と題されたディスク1は、
“歌謡プログレ”とも言うべきドラマチックな歌とサウンドが楽しめる。
トランペット、尺八、シンセサイザーなども薄っすらと使いつつ、
あくまでもギターとベースとドラムを核にしたロックである。
ジャズ・ロックとハード・ロックとファンク・ロックとサイケデリック・ロックを
原型が聞こえなくなるまでフリーキーにグツグツ煮込んだかの如きクールなサウンドだ。
ダイナミックでありながらもギターのリフでゴリ押しするわけではなく、
流れるような音で加速していく。
幅広い意味での洋楽と邦楽のまぐわいであり、
1960年代後半から1970年代前半と昭和40年代の香りが漂ってくる音の質感が気持ちいい。

基本的な楽器を録音した後に歌を入れるレコーディング順だったことも作用したのか、
ヴォーカルは音の上で泳ぎ進んでいくような自由形である。
あらゆる体液が匂ってくるほど情感たんまりなのは言うまでもなく、
次々と言葉を連射するトーキング・スタイルのパートはエネルギッシュに攻めて責め、
ヴォーカルが色っぽくも映るスロー・パートでは丹念に愛撫。
ギリギリの状況を描写する言葉が連なり歌声が生々しいから複雑怪奇なイメージも抱きやすいが、
歌謡曲の取っつきやすさもバッチリでノリが良く、
キャッチーなポピュラリティもいっぱい。
ナルシシズムを超えたリアルな“愛の歌”があふれる陶酔ロックである。


かたや「マリア観音のためのフリー・ロック・ドラミング」と題されたディスク2には、
同じ曲が曲順を変えて収録されている。
ただしヴォーカル抜き。
原田和典執筆のライナーによれば同じテイクとのことだが、
よくあるただのインスト・ヴァージョンでもない。
どうやらミックス等を変えているようで、
ドラムとベースが強調されていて他の楽器はあまり聞こえない仕上がりなのである。

ほとんどドラムとベースだけの“原始ロック”と言ってもいいほどだが、
これがまたえらく新鮮。
わかりやすく骨組みだけを聴かせてくれて、
楽曲が内包するファンキーでジャジーでポップな趣きがたっぷり楽しめる。
マリア観音の強烈なイメージの一つの情念と背中合わせの快楽そのものだ。
そもそもマリア観音のルーツの一つである昔の歌謡曲はフック十分だし、
そもそも流行歌はキャッチーなわけで、
軽快な疾走感や穏やかな佇まいも味わえる。
それでもむろん生々しくヘヴィでありスリリングなのだ。

ベースが曲をリードしつつタイトルになっているようにドラムが肝である。
80年代後半以降のメジャー・レコーディングのメタル・ドラム・サウンドとは対極の質感の音で、
硬いだけではなく、しなやかでもあり、
やっぱり強靭。
本作のリリース元のレーベル名どおりのerectなビートが脈打つのであった。


★マリア観音『「全滅しても愛だけが遺る」+「マリア観音のためのフリー・ロック・ドラミング」』(エレクト ER029~30)2CD
ジャケット(実際の地の色は↑の画像よりも黒い)の内側に歌詞掲載。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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