FC2ブログ

なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

『The Beguiledビガイルド欲望のめざめ』第二弾ポスター


フランシス・コッポラの娘であるソフィア・コッポラ監督の最新作。
1971年に映画化された作品(邦題は『白い肌の異常な夜』)のリメイクとも言えるが、
これぞ映画!と膝を打ちたくなる傑作だ。

昨年の『パーティで女の子に話しかけるには』でも競演したニコール・キッドマンとエル・ファニング、
『ヴァージン・スーサイズ』『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンストが中核女優で、
本作唯一のメイン男役はコリン・ファレルである。

sub1_2018012718234941a.jpg

舞台は1864年の米国東部バージニア州。
一種の内戦の南北戦争から隔離された女子寄宿学園に暮らす南部側の7人の女たちは、
脚に重傷を負った北軍兵士を手当し、
“敵軍”ながらキリスト教の教えに従い回復するまで面倒を見ることになる。
男子禁制の園に突如ワイルドかつハンサムな男性が加わったことで女たちは戸惑うも、
紳士的かつ社交的な男の対応で女たち全員が浮き足立っていく。

一人一人に思わせぶりな態度をとる男に対して7人の女たちもさりげなく自己アピールをするが、
次第に互いを牽制しあうとはいえ、
教師も幼い生徒も突如アクセサリーを身につけるなどのかわいいアプローチが中心。
女の戦いというより無邪気な戯れにも見えた。
とはいえ女たちをたしなめて北軍兵士にキツイことを言っていた園長は、
女たちの本音を代表するかのようにケガの治療で久々に触れた男の肌の感触でに胸の高鳴りを覚える。
年長の一人の少女は男に対してあからさまな視線を隠させない。
そういった女たちの気持ちに応えるように適度な距離感で一人一人と心のふれあいを楽しんでいくうちに、
男は脚のケガが回復してきてエネルギーをもてあましていた。

main_convert_20180127182511.jpg

以上の中盤までの心理戦に息を呑む。
じりじりした静かなる緊張感だからこそゆっくりと覚醒されていく。
ほとんどの行動がしめやかに、ひそやかに行なわれている。
たとえ“業務”だとしても女たちが他人の目を意識してこっそり男と接している様子がよくわかる。
一人一人のデリケイトな心の動きとその交わりを、
緻密な脚本、シンプルなセリフでていねいに描き綴っていく作りに舌を巻く。

中盤までは落ち着いた展開ながら一瞬たりとも目が離せない。
音楽と同じく映画も意識の流れが大切だとあらためて思わされる。
もちろんグレイトな映画すべてがそうであるように物語の筋を追わせるだけで終わらず、
研ぎ澄まされた映像色も特筆したいところだ。
音楽は映像に溶け込ませる必要最小限の使い方で、
観ている時に何か物音を立てることに気を使ってしまうほど静謐。
だからこそ緊張感が途切れず、
素のままの音声ならではの生々しい空間に飲み込まれていく。

『The_Beguiledビガイルド_欲望のめざめ』ティザーポスター_convert_20180127182422

必ずしも全員がいわゆるお嬢さんではないようだが、
熟女も少女も品のある淑女そのもののストイックな佇まいが圧巻だ。
もちろん今より女性が奔放ではない時代だし、
この頃は南北戦争の真っ最中だから自由は制限されていただろう。
服装にも近いものを感じる乃木坂46から俗っぽさを削ぎ落したような…
と書いても安っぽくなるほど別次元の雰囲気で、
世間から隔絶された空間ならではの禁断の香りに覆われている。
彼女たち一人一人の個人的な背景にあまり言及してないのも、
脇道にそれずに神秘性を高めると同時にテーマの焦点を絞ることに一役買っている。

いわゆるエロいシーンに頼らずとも全編エロティックな匂いに包まれていてとろける。
強烈にアピールするエロを否定はしないが、
醸し出されるものの深さをあたらめて思い知る。
性的な場面も要所要所で極めて限定的に挿入しているからこそそのインパクトは深く、
上品だから淫らなギャップも無限大だ。

sub2_convert_20180127182539.jpg

さりげない仕草の一つ一つにまで神経が行き届いた全員が好演だが、
僕としてはエル・ファニングにまた会えてうれしい。
『アバウト・レイ 16歳の決断』『20センチュリー・ウーマン』ほど表に出る役ではないが、
そうでなくても目立つ年長の早熟少女を演じてクールなオーラを放っている。
映画の中でも要所でシャープな存在感を放ち、
男が混入しても無意識のうちに目上を立てることでかろうじて保たれていたこの“女の園”の秩序を
小悪魔では済まない蠱惑的な魅力で破壊。
この映画の物語の流れを一気に急転させた恐るべき19歳である。


“欺かれし者”とも訳せる『The Beguiled』という原題も強烈だ。
女たちがそうなったとも解釈できるが、
後半の男はこういう感じになってしまっている。
無理もない状況下とはいえ男の自業自得ながら、
ハーレムから天国に行きかけたところで地獄へとまさに転がり落ちる流れが恐ろしい。
女たちも悪気はなかったのだろうが、
学校としての体面もあったのか乱された秩序を元に戻すべく、
ジェラシーを超えて寒々とした一致団結による最後の処置がさらに恐ろしい。

映画を観ている劇場内の温度を揺さぶるほどの凍てついた熱気に飲み込まれていく必見作。


★映画『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
原題 The Beguiled/2017年/アメリカ/93分
2018年2月23日(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開
©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
http://beguiled.jp/


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/1954-d9adc32c

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (10)
HEAVY ROCK (253)
JOB/WORK (316)
映画 (286)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (48)
METAL/HARDCORE (51)
PUNK/HARDCORE (443)
EXTREME METAL (136)
UNDERGROUND? (109)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (135)
FEMALE SINGER (44)
POPULAR MUSIC (32)
ROCK (90)
本 (10)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん