FUGAZI『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』
2018-02-27

ポスト・ハードコアを実践してきた米国ワシントンDCのFUGAZIの名作ドキュメンタリー。
レコード・デビュー前年の87年から『End Hits』(98年)を出す前までの映像
(注:本作のDVDの裏ジャケットには“1987-1997”とクレジットされているが、
イアン・マッケイ[vo、g]も主宰するリリース元のDISCHORD Recordsのサイトでは“1987-98”)
で構成した作品である。
もともと99年にVHSのビデオ・テープでリリースされ(パッケージは紙製だった)、
2001年にDVD化。
それが今回フルHDリマスター版で劇場公開される。
オフィシャル・サイト
http://www.curiouscope.jp/FUGAZI/
やチラシなどで既に色々と書いているが、
作品についてもう少し付け加えておきたい。

オン・ステージとオフ・ステージの様子がほぼ未加工のまま真空パックされている。
ライヴ映像は初期FUGAZIを象徴すべく一般的なライヴとは違うシチュエーションも多く、
彼らならではの直接行動を含むDIYな活動の一端が見て取れる。
オフ・ステージはレコーディングやリハーサルのシーン、ツアーの移動中などのFUGAZIを映す。
93年の2度目の日本ツアー時の映像もうれしい。
“信者”も多いバンドだからこそ色々な意見を収めたライヴの観客の率直な話も興味深い。
『SALAD DAYS サラダデイズ』と同じく内向きなようで、
身内やバンド仲間が持ち上げまくる吐き気がするほど“仲良し倶楽部”なドキュメンタリーとは一線を画す。
寡黙、ゆえに雄弁な作品だ。
映像作品にする必要性ないほど言葉重視のドキュメンタリーも多いが、
押しつけがましい説明的な作りになってないところが素晴らしい。
FUGAZIの基本的なことを話しているテレビ番組出演時のインタヴューを自然な形で織り込みつつ、
基本的に本作用の形式ばった“取材”はしてないと思われ、
メンバーのトークもスナップ・ショットの写真のような感じの談話がほとんど。
本作のタイトルは
FUGAZIの代表作の一つの93年の『In On The Kill Taker』に収めた曲のタイトルでもあるが、
インストゥルメンタル・ナンバーのように言葉に頼らない作品ということを意味しているようにも思える。
わざとらしいポーズやコケ脅しの類いは一切ないストロング・スタイルの作り。
単なるドキュメンタリーを超え、
音はハードでも佇まいは静謐な生々しい映像そのもので表現されているのだ
FUGAZIらしくストイックでアーティスティックな映像作品に仕上がっており、
静かなる熱い空気感に覆われている。
とはいえ語りの部分はもちろんのこと、
ライヴ等でプレイ中の曲の歌詞にも日本語字幕が付くから、
抽象的なようで意外とストレートでパンクなFUGAZIの“言語感覚”も堪能していただきたい。
★映画『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』
監督:ジェム・コーエン『ミュージアム・アワーズ』『ベンジャミン・スモーク』
配給・宣伝:CURIOUSCOPE
アメリカ/2003/117分/英語/モノクロ・カラー/ドキュメンタリー
©1998, 2018 Dischord Records
3月17日(土) 東京・新宿K’s cinemaを皮切りに全国順次公開。
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コメント
たまにはこんな事も
フガジを調べてみても、自分にはどこが良いのかはワカリマセンでしたので今回は見送りたいと思いますが、今後も行川さん+キュリオスコープ+ケイズシネマのパンクセットは応援していきたいと思います。
Re: たまにはこんな事も
余分三兄弟+さん、コメントありがとうございます。
好みやその時々の精神状態、意識のポジションやタイミングなどで映画や音楽の印象は違ってきますからね。また何年か後に機会があったら観てみると、もしかしたらまた違った印象を抱くかもしれません。僕も昔ダメでもが今最高!と感じるものも多いですし、その逆も少なくありません。
いつもフォロー感謝しています。
好みやその時々の精神状態、意識のポジションやタイミングなどで映画や音楽の印象は違ってきますからね。また何年か後に機会があったら観てみると、もしかしたらまた違った印象を抱くかもしれません。僕も昔ダメでもが今最高!と感じるものも多いですし、その逆も少なくありません。
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