なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DILLINGER ESCAPE PLAN『Option Paralysis』

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米国東部ニュージャージー出身の“エクストリーム・バンド”の2年4ヶ月ぶりの4枚目のフル・アルバム。
共同プロデューサーは97年のデビューEP以来ずっとバンドの片腕になっているスティーヴ・エヴェッツだ。


DILLINGER ESCAPE PLANは、
99年のファースト・フル・アルバム『Calculating Infinity』で新たな時代を切り開いたわけだが、
どんなバンドでも歴史的な作品の後は試行錯誤と格闘する。
それこそLED ZEPPELIN(『Presence』)もDISCHARGE(『Hear Nothing~』)もそうだった。
タイプは違えどもフォロワーを無数生んだ『Calculating Infinity』と同じく、
カオティック・ハードコアの絶対的なアルバム『Jane Doe』(2001年)を作ったCONVERGEもそうだ。
入れ込んだファンとしては心苦しく複雑な気分にもなる。
情には厚いつもりだが、
バンドのことを思えばそうも言っていられない

DILLINGER ESCAPE PLANもそうだった。
究極のスピードの音のネクスト・ステップという意味では、
SLAYERが『Reign In Blood』から『South In Heaven』へと進んだ時の過程、
NAPALM DEATHが『From Enslave To Obliteration』の次に進んでいった過程にもダブる。
前者は数年で、後者は紆余曲折を経ながら10年かかったと思っている。

DILLINGER ESCAPE PLANに関しては、
『Miss Machine』(2004年)も『Ire Works』(2007年)もぼくは物足りなかった。
マイク・パットン(FANTOMAS)が臨時ヴォーカルに立った4曲入り『Irony Is a Dead Scene』(2002年)で、
メロディアスな曲も絡めることができるとはわかっていたが、
ぼくにとって前述の2作はバンドとして新たな試みが板についてないと思った。
そういうことをもっと印象深くやるバンドは世界中に存在しているし、
中途半端にオルタナで水増ししたようにさえ感じた。
この程度でいいのか?と。
努力を認めつつ自分の姿も鏡に映しつつ“表現者”は常にハードル高くもってほしいから。
身近な日本のバンド/ミュージシャンの日進月歩を見ているとそう思うのだ。


一昨年の“エクストリーム・ザ・ドージョー Vol.20”におけるライヴでのハジケっぷりで、
DILLINGER ESCAPE PLANの新作には期待はしていた。
だが、その後、またしてもドラマーが変わった。
だが、何事もなかったかのように突き進んだ。
確実に一歩踏み込んだのであった。

16ページのブックレットに載っているクレジットでは、
セカンド・ギタリストとして迎えられたはずのジェフ・タットルは1曲の“追加ヴォーカル”で参加しただけ。
ギターのパートは前作同様にリーダーのベンジャミン・ワインハム一人が弾いており、
彼はピアノやプログラミング、“サウンド・デザイン”などで音の核になっている。

前作の時点で『Calculating Infinity』時のメンバーはそのベンジャミンのみ。
変わって当然ではある。
『Option Paralysis』を聴くと、
“典型的なDILLINGER ESCAPE PLAN節”みたいな複雑な展開の速い曲は、
ある意味で彼らにとっては慣れでペロッ!とやれてしまうのではないかとも感じだ。
違うタイプの曲へのチャレンジこそが、
停滞を潔しとしない自己との格闘なのである。

DILLINGER ESCAPE PLANのトレード・マークのカオティック・ハードコアな曲も健在だが、
そういう曲も含めてフックのある作曲がフィットしてきた。
変則リズムの高速チューンを含みつつ、
メロディアスなパートもスローなパートも静かなパートも、
以前よりも違和感なく溶け込ませているのだ。
ツボを心得たソングライティングで合唱すらできるサビを含む曲もあり、
ギター・フレーズにはオールド・ロック風の色合いもあり。
新ドラマーの非機械的なビートもあたたかみあるダイナミックなロック仕上がりに一役買った。
二代目シンガーのグレッグ・プチアートのヴォーカルも精進しており、
楽器の音に立ちはだかる声出しと熱い歌唱の表現力の濃度を高めたのが大きい。
起伏の大きい曲をよく歌いこなしている。

昔からフリー・ジャズのスピード感とテクスチャーからの影響が強く感じられたバンドだが、
セロニアス・モンクのようなしっとりしたピアノが目立つ曲も耳を捉える。
日本盤ボーナス・トラックも美しい鍵盤楽器がメインのインスト・ナンバー。
純然たるバンド演奏とは言いがたいが、
今後も予断を許さない現代音楽的な趣な佳曲である。

以前からRELAPSE Recordsとの契約は微妙になっていたが
(恩義も感じているから留まっているとも『Miss Machine』の前の段階で彼らは言っていた)、
『Option Paralysis』は日本以外だと自分たちのレーベルのPARTY SMASHER INCからのリリースで、
激烈メタル・レーベルのSEASON OF MISTの協力を仰いでいることも興味深い。


★ザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン『オプション・パラリシス』(デイメア・レコーディングス DYMC-117)CD
歌詞の和訳と日本盤のみのボーナス・トラック1曲付。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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