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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

V.A.『To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』

To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』


英国拠点のアーティストのポスト・パンク・ナンバー111曲を
タイトルの時期の音源でまとめた5枚組CD。
もちろんポスト・パンク系バンドがほとんどで、
5枚ともCD収録制限時間とされている80分近く曲を詰め込み、
昨年12月に発売されたものである。

持っている音源が多いオムニバスCD等はあまり買わないようにしているが、
安価で売られていて単なるサンプラーではなく哲学を感じる作品だから購入してしまった。


収録アーティストは以下のとおりである。
https://www.cherryred.co.uk/product/to-the-outside-of-everything-a-story-of-uk-post-punk-1977-1981-deluxe-5cd-box-set/


こういうブツは「なんで~~~が入ってねーんだよ!」ってな調子で、
重箱の隅をつつくように文句たれながら聴くのもお楽しみだ。
諸事情で入れられなかったアーティストも多いと思われる。

さすがに立ち位置が微妙だからかPOLICEは入ってないが、
有名どころでは、
Siouxsie and The BANSHEES、XTC、SIMPLE MINDS、CURE、CABARET VOLTAIRE、BAUHAUS
A CERTAIN RATIO、YOUNG MARBLE GIANTS、DELTA 5が外されている。
アナーコ・パンク/デス・ロック系ではMOBとUK DECAYは入れてもいいと思った。
もちろんThe POP GROUPは必殺ナンバー「We Are All Prostitutes」で聴けるが、
関連バンドでGLAXO BABIESとMAXIMUM JOYはあってもRIP RIG & PANICとPIG BAGはない。

けど、よくぞまとめた!と言いたい。


英国のポスト・パンクというと80年代前半のイメージが強いし、
僕もそんな感じでハードコア・パンクやOi!パンク等と並走していたように捉えてもいる。
でも実際は70年代後半にポスト・パンクの大半の原型ができあがっていたことが、
1981年までの音源に留めた構成でよくわかる作りだ。

当時のリーダーのジョン・フォックスがポスト・パンクと自覚していた
ULTRAVOX!から始めるところに選者の認識の確かさが表れているが、
あえて彼ら随一の“パンク・ロック・ソング”の名曲「Young Savage」をセレクトしたところに、
制作者のこだわりが感じられる。
2曲目はMAGAZINEだが、
これまたNO FUN AT ALLがカヴァーしたのも納得の
彼ら随一の“パンク・ロック・ソング”の名曲「Shot By Both Sides」をセレクト。
ハード・ロックやプログレなどをオールド・ウェイヴと呼ぶ一方で
当時はニューウェイヴと呼ばれていたが
(一部のバンドは90年前後の米国勢よりも早くオルタナティヴ・ロックとも呼ばれていた)、
ジャンル名どおりにポスト・パンクがパンク・ロックの流れにあることを表しているのだ。
‘O’LEVEL、PUNISHMENT OF LUXURY、ADICTS、NOTSENSIBLESといった、
パンク・ロックとみなされることも多いバンドのポスト・パンク・チューンが聴けるのも象徴的である。

一方でいわゆるアグレッシヴな曲ではなく、
ポスト・パンクならではのアイデア重視で創意工夫がポイントの曲も多数選ばれている。
KILLING JOKEをダブっぽい「Turn To Red」で収めたのもその一例だ。
FLYING LIZARDSの「Summertime Blues」のカヴァーなんざ、
エディ・コクランやBLUE CHEERのヴァージョンと続けて聴くと腰砕けぶりに痺れる。
数年後に大ブレイクしたTHOMPSON TWINSが80年のデビュー・シングルで入っているのも渋い。
ニコが入っているのは、
80年代初頭は英国の若い子のポスト・パンクの音にバックから攻められながら歌っていたからだ。
THIS HEATの「Radio Prague」で締めるところも心憎い。

シングルの曲が大半を占める選曲もポイントで、
シングルしか出してないバンドも少なくない。
かなり“重箱の隅”にまで手が届いていて無名のバンドも多く、
主要バンドの大半をフォローしつつマニアックでもある仕上がりだが、
それが当時のポスト・パンクの真実でもある。

ブックレットは収録された曲を収めた作品のジャケットとアーティストごとの丁寧な解説、
長文ライナー、選抜されたアーティスト写真、ライヴのフライヤーの写真で構成され、
とても丁寧な作りだ。
そのページをめくりながらこうやってまとめて聴くと再発見も多々ある。

僕がロックにのめりこんだのはこのへんのバンドたちがきっかけだから言いたいことだらけで
ポスト・パンクの重要性も含めて最初はここで書いてみたが、
アレコレ思いが先走って途中まで書いてえらく長くなってしまったから、
今回のブログでは削除。
またの機会に。


★V.A.『To The Outside Of Everything - A Story Of UK Post Punk 1977 - 1981』(CHERRY RED CRCDBOX44)5CD
ハードカヴァーのブック仕様で48ページのブックレットが綴じ込まれている。

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コメント

凄く面白そうですね

ポストパンクは興味があるものの、どこから手を出して良いのかわからずにいたのですが、こちらのコンピはそういう状況を打破できそうな気がしました。試しにチェックしてみようと思います。
ためになりそうでなおかつ面白そうなものを紹介していただきありがとうございます。
今回削除なさったという文章はかなり気になりますので、どこかで何かの機会にアップしていただけると嬉しいです。

行川さんも手に入れられましたか。
店頭販売はあまり数がなかったようですが僕は偶々タワレコで発見して特典に各レーベルロゴをあしらった缶バッヂも付いたので即行でレジに突っ込みました。
近年最高のコンピ盤と胸を張って推したい5枚組です。たしかにあのバンドこのバンドが入ってないっていう収録漏れはありますが、権利関係とかアーティストの許可が下りなかったとか色々あるでしょうね
さすがに5枚全部一気に聴き通すとなると1日費やすことになりますが、そのぶん重量感はハンパないしぎゅうぎゅうに詰め込まれた宝箱みたいな感じでポストパンク好きにはたまらない筈です。
バンシーズやバウハウス、キュアー辺りは入れてほしかったのとXTCファンとしてはThis is Popくらいは入れてよ!と言いたかったり、GANG OF FOURはDamaged GoodsのLPヴァージョン入れるならデビューEPのLove Like Anthraxを収録してほしかったetc.と不満も無くはないですが、付属の日本語解説で伊藤英嗣氏が書かれているように "アヴァンギャルドゆえの重さを適度に避けている" 選曲の妙と曲順が素晴らしく、ULTRAVOX!とMAGAZINEの曲で始まるのもプレ期っていうか"ネクスト"の胎動って感じでいいと思います。
似た編纂盤としては2000年代に米RHINOがコンパイルした70年代パンク集 "NO THANKS! The '70s Punk Rebellion"、同RHINOの80年代オルタナ集 "LEFT OF THE DIAL :Dispatches from the '80s Underground" がありますが、前者は一応時系列に沿った並びの中に初期にはニック・ロウ、オージーパンクのTHE SAINTS、PERE UBU、TELEVISIONの自主制作シングル "Little Johnny Jewel" 、イギー&ザ・ストゥージズやNEW YORK DOLLSなどプレ期の重要バンドを漏れなく、後期にはロビン・ヒッチコックのTHE SOFT BOYS、CUREのデビューシングル "BOYS DON'T CRY"、ボーカルがヘンリーロリンズに代わる前のBLACK FLAGまで網羅しジョニー・サンダースの"ROUND A MEMORY"とJOY DIVISION "Love will tear Us Apart" で締める構成がニクい好盤でしたし、後者は時系列ほぼ無視の流れに各アーティストの出身地を記載したジャケットアートでスタジアムロックの対極にあったオルタナロック、カレッジロックの俯瞰図が見え、REMに始まりビリー・ブラッグに終わる構成も晴らしい仕事の労作でした。
最近多発されている安易なコンピ盤は無用のゴミがほとんどですが、制作者の確かな熱意が感じられるブツならオリジナルアルバムに匹敵する価値はあると思いますね。

コメントありがとうございます。

>EGさん
いつも色々フォロー等、感謝しています。ポスト・パンクの入り口ということであれば、もっとバンドを厳選+もう少し後の時期…SISTERS OF MERCYやSEX GANG CHILDRENなどのゴス/ダーク・ウェイヴ/ポジティヴ・パンク周辺も欲しかったですが、そのへんが入るのを意図的に避けたかのように81年までにした印象も(そのへんの親玉のBANSHEES、CURE、BAUHAUSがそもそも未収録ですから)。
でも興味ある方なら値段も決して高くないですし、重みのあるパッケージのブックレットのジャケットやフライヤーの写真をながめながら聴くとまた格別です。
このへんのバンドは極一部以外今ほとんど聴くことなくて、当時多かった12”シングルもかなり買ったジャンルなので大半のレコードはダンボール箱の中で眠らせています。でもポスト・パンクにツバを吐けないです。このブログで少しずつ書いていくのもいいかなと考えています。

>Nuggetsさん
レーベルロゴ缶バッヂってブックレットに載っていた感じでのですかね・・・あれクールですね。
選曲はヘヴィな曲や肉体的な曲を避けているみたいで、KILLING JOKEも傍流の曲ですし、やっぱり大半のバンドはロックロック!した曲よりポスト・パンクならではのアイデア重視の曲がセレクトされた印象です。↑でも書きましたが、ことごとくゴス系が外されているのは偶然ではなく制作者の意図するところかなとも思っています。
もっとも本質的に重いアーティストはJOY DIVISIONなど極一部で、頭先行型で根本的に軽いところが今の僕には物足りなくなった感じです。WIREの名言じゃないですが、やっぱりロックンロール(のフォーマット)じゃなければなんでもいい!って感じのものをとにかく求めていて、とにかく古臭いブルースとか過去のロックンロールとかをひきずってないユニークで過激に聴こえるものが欲しかった・・・という自分の当時を思い返した次第です。でも本物かどうかは音楽スタイルじゃないと90年前後に気づいてから、ポスト・パンクを聴くことは減りました。
 でもポスト・パンクは功績もありまくりで、特に英国ものは英国の良さが活かされていて。そのへんは少しずつでも書いてみたいと思った次第です。
 RHINOのその編集盤は僕聴いたことないです。どちらもアメリカンなというかRHINO編集らしい、幅広く網羅したセレクションでアーティスト間のリンクの関係を表したような印象です。この5枚組も全体の流れを考慮してはいるものの、111曲すべてをリンクづけて並べるのは難儀で、おおまかに時系列でという曲順ですかね。でも無名のバンドもなるべく漏らさずという執念が感じられるバンド・セレクションですし、音楽的には多彩ながらシーン的に狭く絞っているから当時の空気が凝縮されていて、ポスト・パンクの冷めた本質が炙り出されていて圧巻です。

こちらこそいつも面白くてためになる記事や文章をありがとうございます。筆無精なのであまりコメントを残せませんが、いつも色々参考にさせていただいたり視野を広げてもらったりしています。

それではこちらの作品と今回挙げられたバンドを中心にチェックしてみることにします。重ね重ねありがとうございます。
こちらのブログでは主に現行の作品を取り扱っていらっしゃいますが、たまにそういった過去作を掘り出して書いてくださるのもありがたかったり興味深かったりです。

Re: タイトルなし

EGさん、コメントありがとうございます。
ちょっとしたリアクションでも力になります。触発にしていただけたらさいわいです。
昔の作品やアーティストのことを書くのはジャンルも偏りそうで、思い出を絡めたり豊富な情報を混ぜられるから、ある意味、楽なので今あえてここであまりやってないというのもありますが、そういうものも増やしていくかもしれません。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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