なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NEW YORK DOLLS『Personality Crisis: Live Recordings & Studio Demos 1972-1975』

NEW YORK DOLLS『Personality Crisis Live Recordings


レア音源集の決定版とも言うべきCD5枚組。

完全未発表ものではない。
僕がわかるだけでも、
権利関係はクリアして発売されたと思しき80年代初頭以降リリースの
カセットやレコードやCDで世に出た音源が多い。
必ずしもまるっきり同じ曲目ではないが、
『Lipstick Killers』『A Hard Night's Day』『Butterflyin'』『Red Patent Leather』の曲の
大半とダブっていると思われる。
とはいえそういうものを一つ一つフォローするのは今でも大変だから便利な編集盤だし、
リマスタリングされているからパーカッシヴに迫ってきて、
ジョニー・サンダース(g、vo)のワガママなエレキもまさにギンギンだ。
どれも音質良好である。


約72分18曲入りのディスク1と約71分18曲入りのディスク2は
1972年の6月と10月、1973年3月録音の3回分のデモを収録。
そのうち1973年の23曲のデモを聴くと、
ファーストの『New York Dolls』レコーディング直前でありながら
既に1974年のセカンド『Too Much Too Soon』の曲の大半ができあがっている、
ビリー・ムルシアがドラムの1972年の13曲はテンポが遅いのも興味深いが、
ジョニー・サンダースが数年後にHEARTBREAKERSを一緒に組むジェリー・ノーランが
ドラマーとして加入したことがいかに大きかったことが1973年のデモでわかる。
スピード感が五割り増しで、
リズム隊のコンビとしてアーサー・キラー・ケインのベースのヘヴィネスも五割り増しなのだ。

サニー・ボーイ・ウィリアムソンII、オーティス・レディング、チャック・ベリー、
マディ・ウォーターズ、SHANGRI-LASのカヴァーの他、
オリジナル・アルバム未収録のオリジナル曲も含まれている。

約80分23曲入りディスク3と
約78分17曲入りのディスク4と
約67分16曲入りのディスク5には、
1973~1975年の6回のライヴ音源の曲が入っている。
収録時間制限ギリギリかつ合理的に曲を詰め込んで一回分のライヴがCD2枚に分割もされているが、
一つのライヴ以外はフル・セットに近い収録と思われる。

全体としてまさにギンギンのうなりを上げるエレキのジョニーのギターが炸裂し、
オリジナル・アルバムのR&Bっぽさは薄れてHEARTBREAKERSの原型のパンク色が濃い。
ライヴは特にサウンドそのものが素行不良である。
こういうものを体感すると、
たとえ極悪イメージを打ち出していてもメタル的整合感の音のテクスチャーがえらく行儀良く聞こえる。
といっても1975年のライヴは疲れ気味で分裂寸前の空気感も伝わってくるのであった。


同じ曲が何度も出てきて通して聴くとゲップが出そうなほど
猥雑なロックンロールの肝が詰まった小箱である。


★NEW YORK DOLLS『Personality Crisis: Live Recordings & Studio Demos 1972-1975』(CHERRY RED CRCDBOX52)5CD
小箱ボックス仕様。
すべて別デザインの紙ジャケットにCDが収納され、
雑誌の表紙やポスター等の写真と長文ライナーなどで彩った28ページのブックレットも封入。


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コメント

バンドの性格はリズム隊、とくにドラマーで決まるとかねがね思っている自分としては別項で取り上げておられるどらむすとぅあの記事も興味深く読ませてもらいました。
ジェリー・ノーランについてはNEW YORK DOLLS~HEARTBREAKERSのドラマーという認識以上にジョニサンに負けず劣らずなジャンキー、ナンシー・スパンゲンをシドに引き会わせた張本人、ジョニーも泣かすほど腕っぷしの強い傍若無人な荒くれ野郎って悪辣なイメージが自分の中で先行してしまっていたので、色メガネで見てたのは否定しません。
勝手な先入観としてはヴィヴ・プリンスやキース・ムーン(あるいはラット・スケイビーズ)みたいな破天荒でハチャメチャな叩きっぷりをイメージしてましたが、意外や余計なオカズをほとんど入れない一音一音の打面の響きが焼きゴテのように耳に残る安定感抜群スタイルで、剛腕は剛腕でもどっしりタイプの質実剛健プレイ。
腕の振りの大きさを脳内で喚起させるというか、すげぇファットな音で強力な推進力になってるのがよくわかったドラミングでした。キックもドカドカスタイルではないけど音の太さが腹に堪えるのです。いやはや先入観の怖さを思い知った聴体験でした。
このタイコが入ればもう他のドラマーとは演れないだろうなってのがよくわかったし、アーサー・ケインにとってもこの上なく安心できるタイコだったはずです。
自分としては曲をブッ壊すくらいの破壊的な手数のドラマーのほうが好みですが、NEW YORK DOLLS、HEARTBREAKERSには絶対このドラムじゃなきゃダメだったろうなと思わせる説得力。得難いリズムセンスの持ち主だったんだなと思います。
DOLLS自体は自分はレア音源を漁るほどのめり込む対象とはいえないのは正直に言わなきゃいけないのでドラマーの観点のみに絞って書かせてもらいました。

Re: タイトルなし

Nuggetsさん、コメントありがとうございます。
どんなジャンルでもバンドはドラマーで決まります。ドラマーがイマイチだと全体がイマイチに聞こえてしまいますし、ドラマーがグレイトだと他がイマイチでも聴けます。
そう思うと3日にブログでアップした藤田亮さんの演奏がいかにグッとくるかわかります。
ジェリー・ノーランの面白さ、さすが色々と突いてきますね。ナンシー・スパンゲンのことも含めれば、パンクの歴史を動かした一人と言えるかもしれません。
目立った活動期間が短かったためか過小評価されすぎですね。HEARTBREAKERS以降ももっとやれたでしょうに・・・・ジャンキーすぎたのでしょうか。ギタリストと同じくテクニカルとか奇抜な演奏の人でないと評価されにくいのが残念です。
堅実にも聞こえるドラミングはある意味SEX PISTOLSのポール・クックにも通じます。どちらもマネできそうで決してマネできないという。
ジョニー・サンダースの初来日公演は事前の告知がJohnny Thunders & the HEARTBREAKERS名義でチケットにもちゃんとそう書いてあったから、てっきりジェリー・ノーランも来ると思っていたのに、当日ふたを開けてみたら別のドラマーでライヴのセットリスト等もHEARTBREAKERSとは言えないような感じで、当時怒った記憶も。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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